8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.279 |
いいやつ、悪いやつ、汚いやつ ーエンニオ・モリコーネに捧げるオモシロバンド スパゲティ・ウエスタン・オーケストラ こんばんは、頑固8鉄です。 みなさんは、昭和のころ、よくテレビの洋画劇場でオンエアされていた、 西部劇観てましたか? わたくし、大好きで、若いころのクリント・イーストウッドが出ていた「ローハイド」だの、 デュークエイセズが日本製のテーマ曲を歌った「ララミー牧場」だの、 「ボナンザ」だのを観るのが大好きでした。 小学生だったから、1960年代後半から70年代前半にかけてですね。 ちょうど、そのころ、アメリカの西部劇をまねて粗製乱造した イタリア製のバッタモン西部劇が大流行。 日本では、マカロニ・ウエスタンと称していましたが、 欧米圏では「スパゲティ・ウエスタン」。 まあ、スパゲティが日本ではそれほどメジャーな食べ物ではなかったので、 マカロニにしたらしい。考えたのは、 「さいなら、さいなら、さいなら」で有名だった 淀川長治だったとかいう話もあったような。 わたくし、おバカな小学生ですから、 アメリカ製だろうがイタリア製だろうが関係なく、「ピストル。バーン!」の アクション映画だったらなんでもいいわけ。 テレビで上映する3流どころばかり、どんどん観まくっていました。 しかし、そんな中にも、「これはただ事じゃないぞ」と、 ガキでも思うような、よくできた映画が混じっていることに気が付いた。 どうやら、セルジオ・レオーネという人が監督だ、 主演は、主に、クリント・イーストウッドだ、とわかってくるのです。 そして、音楽がぶっ飛んでいた。かっこよすぎる。 アメリカ西部劇の、なんだか、能天気なノリとはまったく違う、 どこか暗い、しかも、ヘンテコな音楽。 アイアイアアアアと雄たけびをあげる 「続・夕陽のガンマン」のテーマ、日本の時代劇を 思わせる哀愁の口笛にヘンテコな効果音が混じる 「荒野の用心棒」など、超覚えやすいのに、ほかに似た曲がありません。 これは、エンニオ・モリコーネという人が作っているらしい。 そこまでわかるともう止まりません。オタク魂が爆発。 スクリーンだのロードショーだのを立ち読みするわ、 本屋のおやじににらまれるわ、高くて買えもしないレコード屋にいって、 西部劇音楽のLPを漁るわ、親は泣くわ、友達はいなくなるわのてんやわんや。 とうとう、両親にねだって、誕生日のプレゼントに 「西部劇音楽大全集」というLPを買ってもらった。 2枚組の豪華版ですからね、これを毎日、大切に聴きまくった。 で、気が付いたのですが、1枚目がアメリカ製の西部劇、 2枚目がマカロニ・ウエスタンなんですね。 で、やっぱりマカロニがかっこいい!ということになり、 マカロニウエスタンといわれるものならなんでも観まくった。 そして、やっぱり、セルジオ・レオーネ監督、エンニオ・モリコーネ音楽の 映画が一番すごい名作だ、と気が付くわけです。 今では、映画好きの間では、大傑作としてすっかり常識になった、 レオーネ、モリコーネ映画「荒野の用心棒」、「夕陽のガンマン」、 「続・夕陽のガンマン」の三部作に「ウエスタン」を足した4作は、 マカロニ・ウエスタンの枠も超えて、映画の歴史に残る名作であります。 有名な話ですが、レオーネの「荒野の用心棒」は、 わが国の黒澤明作品「用心棒」の西部劇版リメイク。だから、 音楽もどこか日本風なのかというとこれが逆。 モリコーネの影響で、のちの日本の時代劇、とくにテレビ時代劇が、 モリコーネメロディ風になっていったのだと思います。 さて、そんなこともすっかり忘れていた2004年、 あまりなじみのない、南半球の国、コアラばっかり有名なオーストラ リアから、面白ヘンテコな連中が現れました。 その名も、スパゲティ・ウエスタン・オーケストラ。 日本名に直したら、マカロニ・ウエスタン楽団、ってことです。 スパゲティ・ウエスタン・オーケストラは、オーストラリアの3人の スタジオ・ミュージシャンの集団で、スパゲティ・ウエスタン、 特に、エンニオ・モリコーネの曲を演奏、2004年から2014年まで、 大人気、というか、カルトな人気者でした。 当初は、オーストラリアのシドニーで、エンニオ・モリコーネ・エクスペリエンスとして活動、 独創的なユーモアのセンスで好評を得て、 モントリオール・ジャズ・フェスティバルやエディンバラ・フェスティバルで成功。 モリコーネの有名な映画、例えば、「続・夕陽のガンマン」であるとか、 「荒野の用心棒」、「ウエスタン」などのテーマ音楽、劇伴などを テルミン、フォーリー・サウンド、ダック・コールなど。ヘンテコな楽器を使って再現。 日本だったら、例えば、「時代劇音楽集団、侍」とかいう感じ。 演奏するのは、暴れん坊将軍だの、水戸黄門のテーマだのばっかりで、 ちょんまげ侍の恰好をした連中が、クサい芝居しながら、ヘンテコな楽器で演奏するっていう、 そんなノリですよね。そんなのあったら、絶対に観に行きたいですね。 2009年にイギリスのクイーン・エリザベス・ホール、 2011年には、ロイヤル・アルバート・ホールで公演を行い、大成功を収めました。 しかし、2014年、突然、解散。 「お先真っ暗だから」というユーモラスなコメントつきでした。 2004年から2014年まで、ぴったり10年まれなほど個性的なスタイルで大活躍し、 さっといなくなってそれきり。 そのあたりも、なんだか、面白い。 ぜひ、もう一度観てみたい、でも、そうならないところが面白いという、 ユニークなスパゲティ・ウエスタン・オーケストラのお話でした。 |