8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.187

アメリカン・アコースティック・ギターの価値



みなさん、こんにちはげなすび!こらあっ!誰がやかん頭だって?頑固8鉄くんのこと?まだやかんじゃないぞ、
せいぜい擦り切れダワシってとこだぜ、へへっ。
なにがへへっ、だよな。それどころじゃない。いよいよ日本も危機的状況でございます。
そんなときは、酒におぼれてくたばっちゃうか、お勉強!
やっぱりお勉強のほうが体にいい!おうちでお勉強タイム!ですよ。
今回は、わたしが大好きなギターの話。THE KINGの読者はバンドマン多し!器楽奏者多し!ギタリスト多し!
絶対にそうだ、根拠はないが、そうに違いない!と勝手に決めつけて話を強引に進めます。へへっ!

まずはこちらをご覧ください。

epiphone deluxe 1964

アコースティックギターは3種類。ひとつは、いわゆるクラシックギター。ナイロン弦(昔はガット弦)で
ヨーロッパ中心に展開していたもの。
あと2つはアメリカで誕生した鉄弦のフラットトップギターとアーチトップギター。
のちにエレクトリックギターが現れますが、これはいろいろ種類はあるもののひとくくりでいいと思います。



(フラットトップギターの代表、マーティンD-28)




(アーチトップギターの代表、ギブソンL-5)

この3種類プラスエレキで、大きな発明と会社を時系列でまとめてみました。
ウエスタン・スイングでも聴きながら眺めてみてください。

アメリカン・ギター 主なイノベーション年表

1822年 オーストリアのヨハン・シュタウファーがウイーンスタイルギターを製作。 
1833年 シュタウファーの弟子クリスチャン・フレデリック・マーティンがアメリカで
マーチン社を設立。   
1852年 スペインのアントニオ・デ・トーレスがモダンギター(現在のクラシックギター)の原型を開発。
1873年 アナスタシオス・スタトポウロがバイオリン製作会社エピフォン社を設立。
1892年 ウイルヘルム・シュルツがハーモニー社を設立。
1894年 オーヴィル・ギブソンがマンドリン工房を立ち上げる。
1902年 オーヴィル・ギブソンがギブソン社設立。
1916年 マーチン社とオリバー・ディットソン社が共同でドレッドノートを開発。
      ディットソンにちなんで、スタイルDと命名。
1921年 ギブソン社エンジニアのテデオス・マクヒューがトラス・ロッドを発明。
1922年 マーチン社がスティール・ストリング・ギターを開発。
1922年 ギブソン社のロイド・ロアーがFホールアーチトップギターL-5を開発。
1927年 ジョン・ドペラとジョージ・ボウチャンプがナショナル社を設立。
1927年 ナショナル社が世界初のレゾネータ・ギター「トライコーン」を開発。
1928年 ハーモニー社(シアーズ・ローバック社)が安価な楽器の通信販売を開始。
1929年 ドク・カウフマンが世界初のビブラートユニット「ヴィブローラ」を発明。
      (最初の搭載例はエピフォンのアーチトップ。1935年。)
1931年 ジョージ・ビーチャムがリッケンバッカー社を設立。
1932年 リッケンバッカー社が世界初のエレクトリック・ギター「フライパン」を開発。
1936年 ギブソン社が世界初のアーチトップ・エレクトリック・ギター、ES-150を開発。
1940年 レス・ポールがソリッドボディ・スパニッシュ・エレクトリック・ギター「ログ」を開発。
1946年 ポール・ビグスビーがビグスビー・エレクトリック・ギター・カンパニーを設立。
1946年 レオ・フェンダーがスティールギターとアンプ製作会社フェンダー社を設立。
1948年 ポール・ビグスビーがマール・トラヴィスのために、
ソリッドボディ・エレクトリック・ギターを製作。
1948年 フェンダー社が、ブロードキャスター(テレキャスター)を開発。
1952年 ギブソン社がレス・ポール・モデルを開発。

その後は機能ごとのバリエーション(例:エレアコ、ピックアップの種類など)か、
一般化しないもの(オベイション)なので省略。1952年でほぼ完結。

近代のギターもさかのぼるとすで200年もの歴史があるのですね。
エポックな年は、1833年(マーティン社設立)、1852年(クラシックギターの発明)、
1922年(鉄弦ギターの登場)、ギブソンL-5の登場、1932年(初のエレキ)、
1948年(初のソリッドエレキ)といったあたりでしょうか。実は、楽器の進化という点では、
1952年でほぼ完成形が出来上がっていて、あとはバリエーションに
すぎないってのがわかります。

もうひとつの面白い観点は、価格。その楽器のグレードは値段を見ればわかりますよね。
いい材料で手間暇かけて作るほど高額になります。
ここでは、アメリカン・アコースティック・ギターの全盛期、1937年のカタログから、
主要機種の当時の価格と現在の推定価格(物価上昇率をかけたもの)を並べてあります。
例えば、マーティンのD-28ってギブソンと比べると案外安価
なんだな」とかギブソンのスーパー400って昔からほとんど新車価格なんだな、
とか、いろいろわかります。



(エピフォンエンペラー)

1937年の価格別主要各社モデル(マーティン、ギブソン、エピフォン) 

$400($7226.21)
ギブソンスーパー400
エピフォンエンペラー

$275($4968.02) 
ギブソンL-5
エピフォンデラックス

$250($4516.38)
マーティンアーチドモデルスタイルF-9

$187($3378.25)
ギブソンL-12

$175($3161.47)
マーティンアーチドモデルスタイルF-7
マーティンOOOー45
エピフォンブロードウエイ

$165($2980.81)
ギブソンL-10

$125($2258.19)
ギブソンL-7
マーティンアーチドモデルスタイルC-2
エピフォントライアンフ

$115($2077.54)
マーティンOO-42

$110($1987.21)
マーティンO-42
エピフォンスパルタン

$100($1806.55)
ギブソンL-4
マーティンD-28

$90($1625.90)
ギブソン・ニック・ルーカス
マーティンOOO-28

$80($1445.24)
ギブソン・アドバンスド・ジャンボ
マーティンアーチドモデルスタイルC-1
マーティンOO-28

$77($1391.05)
ギブソンES-150

$75($1354.91)
マーティンO-28
エピフォンブラックストーン
エピフォンFT75

$65($1174.26)
マーティンD-18

$60($1083.93)
ギブソン・センチュリー(L-C)
マーティンOO-21

$55($993.60)
ギブソンL-50
マーティンアーチドモデルスタイルR
マーティンOOO-18
マーティンO-21

$50($993.60)
エピフォンゼニス

$45($812.95)
マーティンOO-18

$40($722.62)
ギブソンL-37
マーティンO-18

$37($668.42)
ギブソン・ジャンボ35(のちのJ-45)

$35($632.29)
マーティンOO-17
エピフォンオリンピック

$32($578.10)
ギブソンL-30

$30($541.97)
ギブソンL-00
マーティンO-17

$27($487.77)
エピフォンFT27

$25($451.64)
ギブソンL-0

注1(  )内は2019年現在に置き換えた価格(インフレーション・カルキュレイターによる)
注2 参考として、1937年のアメリカの新車平均価格は700ドル。新築家屋が4100ドル。
注3 現在日本で同一のものを買うと想定すれば、現在の為替レート(1ドル=107円)換算で、
400ドル(最高値    )は77万3千円。25ドル(最低値)は4万8千円。
注4 当時の日本販売価格を想像するため、1932年の為替レート1ドル=3円として計算したうえで、
当時の1円=   現在の1800円として現在価格に置き換えると、400ドルはなんと2100万円に
相当する。
注5 ハーモニー社1937年のカタログの一部を見ると、ほぼすべてのモデルが約5ドル~13ドルの間の
価格帯で、主要3社の1割程度の価格設定だったことがわかる。

レスポール、テレキャスターなどのエレキは入ってませんが、最初のエレクトリックスパニッシュ
ギターだったギブソンES150は価格が77ドルでマーティンの0-28くらいですから、かなり安価なもの
だったことがわかります。
最高価格はギブソンsuper400とエピフォンエンペラーで400ドルですからね。

ずいぶんマニアな記事になりましたが、独自に調べてまとめたものなので、
ご参考になれば、と思います。

では最後に冒頭で紹介した素晴らしいギタリスト、歌手のromainさん(フランス)の動画で
聴き惚れてくださいませー。

"body and soul" on vintage epiphone Emperor 1946


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