8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.100
                                                                                       
              
                  
 
                 BIG JAY MACNEEEELLLLYYYYY !!!!! live in japan 2012

こんばんばっばっばっばっばるーんばっばばばばば!!(サックスの音色で)
頑固サックス鉄です。もうこの際、語呂合わせも考えない。なにしろ、頭ん中がショックで真っ白なんだから。今回が第100回なもんだから、「わたくし51年の人生でいちばん好きな某アーティスト」について書くつもりでしたが、予定変更!!(それは次回!)

さて、以下は、クラブクアトロの宣伝文句。
Big Jay McNeely with Bloodest Saxophone + 伊東ミキオ Japan Tour
Big Jay McNeely with Bloodest Saxophone + 伊東ミキオ<ビッグ・ジェイ・マクニーリー with ブラッデストサキソフォン+伊東ミキオ>
OPENING ACT: バンバンバザール / Bloodest Saxophone + 伊東ミキオ
DJ: DJ COBRA / BIGBOB AMEMIYA
史上最大、最狂のホンカーBig Jay McNeely、奇跡の来日公演決定!!
"King of the Honking Saxophone"ことBig Jay McNeelyの1996年以来、約16年ぶりとなる待望の日本ツアーが決定!
バックバンドはBig Jay本人のたっての希望により、日本屈指のジャンプバンド"Bloodest Saxophone"が担当!
御年85歳となる不死身のサックスプレイヤー最後の来日公演となるか?! お見逃し無く!!

昔はよく、R&Bアーティストの来日公演によく行ったものですが、少なくともわたしが昔見た人たちはほぼ鬼籍に入ってしまっていて、すっかりこの手のイベントのことは念頭にありませんでした。それがたまたま、運よく、前の週になってたまたま知り、思わずジャンプ!部屋の天井に頭ぶつけるくらいジャンプしてしまいました。青天の霹靂です。
まだ、ビッグ・ジェイが健在なのは知ってましたが、最近のクリップを見ると、ほとんど歩けないらしく、座ったままだし、まさかまさか来日するとは思ってもみなかった。
おおあわてでチケットをとり、11月21日、東京渋谷のクラブクアトロにて、ビッグ ジェイ マクニーリーをみてきました。
で、結論から言っちゃうとですね、少なくとも、この世のものではありませんでした。「歩く核弾頭」くらいの破壊力!!
どこが85だよ。。。うそなんじゃないか?20歳くらい上にサバよんでないか?あ、そんなことするやついるわけないか・・
19:30開演で、バンバンバザールのオープニングアクトも快調。30分ほどやって、入れ替え。結構長くて、30分以上経過。まさか、じいさん、楽屋でばったり・・なんてことはないだろうな・・・とヘンな心配したりしているうちに、バックバンドも務める、ブラッデスト・サクソフォーンの演奏が始まりました。1級のバンドってのは、何もしなくても、ただそこにいるだけで、雰囲気でわかるものですが、見込どおり、まったく驚嘆してしまうすばらしいバンドで、40年代の本物にぜんぜん負けてないこと間違いなし!
これだけで、来てよかった、と思いましたが、3曲ほどやってから、ビッグ・ジェイ呼び出しのMCが!とうとう、来るか、伝説の男!しかしまあ、トシがトシだけに、舞台袖から介護されつつ、抱えられてくるんだとばかり思ってみていたのです。
しかし、演奏が始まって、いつまでたっても出てこない。ありゃ??こりゃ、ほんとにやばいんじゃ・・・・と思ったら、突然、つんざくような爆裂サックスの音が!!
しかし、音はきこえど、ステージにさっぱり現れない。
妙だ、どうも背後がざわついている。振り返って腰を抜かすところでした。いきなり、すぐわたくしのうしろに、得体の知れない、水木しげる漫画から抜け出てきたような、何かが、バカデカイ音でサックスを吹きながら立っていて、ゆっくりと、僕のすぐ脇5センチくらいのところを通りすぎてステージに向かって歩いていきました。付近の客はみんな気が狂ったように、バシャバシャとシャッター切ってましたが、わたくし、呆然としていて、そんなことまったく出来ず。ボケーとつったっていました。
ちなみに、客は400人くらいいたかもしれない。クアトロが満員電車の中みたいでしたから。しかも、若い人多し。


とにかく、中学生のガキのころから、洋書(アメリカのジャズ史やロックの歴史書)を見たり、LPを聴いたりしながら、生で観たいなあ、と思っていた伝説が目の前に突然現れてびっくり仰天、トコロ天、目が点、なわけですよ。でもね、ぜんぜん知らない人でも、ビッグ・ジェイを目撃したら、腰抜かすことは間違いないです。
なんて言ったらいいのか。
巨大なヨーダ?オオダコ怪獣?海坊主?布袋様?
もう、サックス吹いてることなんて、どうでもいいんです。
歩く20世紀アメリカ黒人音楽の歴史、だっていう事実すら、屁でもない。
あなた、チャーリー・パーカーが、墓から甦っていきなり目前に現れたらどうします?
パーカーと一緒にやってた人なんですよ、ビッグ・ジェイって。
Teddy Edwards, Wardell Gray, Miles Davis, Eddie Heywood, Ben Webster, Lucky Thompson,Charlie Perker,Dizzy Gallespie, Milt Jackson, Ben Webster, Erroll Garner,Earl Bostic..etc...ジャズ界だけでも、軽くこれくらいの人たちと競演してきています。さらに、B・B・キングはじめとしたブルース界、リトル・リチャードなどのR&B、さらには、ソウル、ロック、ドゥーワップ、ファンクにまで及ぶので、とてもフォローしきれるものではないです。マクニーリーの目を見張るような歴史的功績については、以前、ここでも書いたので、くどくど書きませんが、たぶん、存命中の、世界一重要な歴史的サックス奏者であることは間違いありません。生きながらにしてスミソニアン博物館入りしている人もめずらしい。(彼のサックスが展示されています)
曲は、「3D」をはじめ、「オール・ザット・ワイン・イズ・ゴーン」、「ゼアズ・サムシング・オン・マイ・マインド」そして、最初のロック・レコードのひとつとして高名な49年の「ディーコンズ・ホップ」など、おなじみのナンバーを、ド迫力で、ときには、渋く、ときにはお茶目に、たっぷり楽しませてくれました。なにしろ、エンターテイナー!
もともと明らかにジャズ畑の人なのですが、わたしたちが、通常ジャズという言葉から連想する、御芸術系とはまったく異なる、痛快で愉快な、ほとんど演芸系ともいえるコミカルなステージでした。

それにしても、85歳らしく、確かに歩くのはやっとという感じでしたが、歌声もサックスプレイも1948年のままです。不死身、と言われていますが、やはり、見た目通り、妖怪じゃないだろうか?あの存在感だけで、ただそこにいるというだけで、数キロ四方を「ビッグ・ジェイ・ワールド」に引き込んでしまうほどの得体の知れないパワーがあるのです。
「やはり人間力が大切」、とか、「努力が大事」とか、「才能がどうたら」、とかいうつまんない理屈いうやつが世間にはよくいますが、本当にすごいものを知らない人か、啓発本かなんかでぼろ儲けしようと企んでいる詐欺師だ、ってことか、ビッグ・ジェイを一目でわかります。
ルイ・アームストロング、チャーリー・パーカーの時代から、70年近く、ジャズからファンクまで、ショービジネスを生き抜いてきた人は、普通じゃないのは当たり前ですが、これほどとは思わなかった。「人」、っていうレベルじゃないんですよ。
あの人は、濃いなあ、とか、個性的だねあの子、とかいう会話がよくあるけど、ほとんどナンセンス。ぜんぜんそんなことない。みんな似たり寄ったり。
ビッグ・ジェイを観て、いちばん感じたのはそれです。
うまいとか下手とか、出来不出来、ということにこだわる人もいるが、ナンセンス。それも思いっきりわかります。
正直、うまいとも、神だとも、仏だとも思わない。
ただただ、彼は世界にたったひとりしかいない「ビッグ・ジェイ・マクニーリー」という男だということだけが痛烈な印象として残りました。人間世界遺産、というところでしょうか。
世界レベルで、ほんとうに個性的だ、本当にすごい、っていうのは、そういうことなんだ・・・というのが改めて体感出来ました。



40年代黄金期の第一線ジャズマンだったことがよくわかる近年のクリップ。
big jay interview !

さて、このインタビュー、全部訳すのは面倒なのですが、これや文章になっているものを元に、わたくしなりにまとめてみました。題して、「ビッグ・ジェイ8か条」です。
1 「たっぷりの野菜とチキンで長生き健康に。」
「おれは、大不況下に生まれて育ったけど、うちは自家製の野菜がたくさんあって、食い物には困らなかったのさ。いつもお袋と兄貴が料理してくれてね。鶏も飼っていたしな。」
2 「楽器がうまくなりたけりゃ、歌え。」
「16歳で教わった最初のサックスの先生が、いつも歌で覚えろと言っていた。歌を歌うときに「イー!」と歌うんだ。それをサックス吹くときに同じようにやれば、芯のあるビッグサウンドが得られるんだよ。」
3 「弱点を武器にしろ。」
「ジャズが大好きで、パーカーみたいになりたかったけど、おれはそんなに耳がよくない。あいつらは、一度曲を聞いただけで、すぐにコードとスケールを感覚でつかんで、即座に演奏できる耳を持ってる。それは、ちいさな子供時分から鍛えないと出来ないんだ。おれは、そんな器用なことはできないが、代わりに、先生に教わったとおりのビッグ・トーンを突き詰めていって、音色を聴いただけで、誰でも、おれだってわかるようにまでなったのさ。」
4「常にパフォーマーであれ。」
「あるとき、たまたま、ひざ立ちの姿勢で吹きまくったら、大うけしたんだよ。それで、もっと激しく動き回ったり、ひっくり返って吹いたりしたんだ。そうしたら、観客がみな熱狂しだしてね。あるときは、吹きながら店から出ていったら、客がみな大騒ぎしてついてきた。警察に捕まったけどね。」
5「常にプログレッシブであれ。」
「ときには、バックバンドの演奏しているコードトーンからわざわざはずれた音を出すこともする。あえてやる。それが客を煽る効果倍増だったら、そうすべきだ。」
6「常に、ソウルフルであれ。」
「音なんて羅列する必要ない。たった1つでいい。それが心から出たものなら。」
7「芸術を追求するより、普通の人に愛されることをしろ。」
「当時のジャズミュージシャンってのは、とにかく食えないんだ。大変な勉強をしなくちゃいけないのに、金にならない。文化人しか聴き手がいないからだ。おれは10代のガキどもにウケた。そのほうが金になったんだよ。多くの労働者や普通の人たちは、複雑でわかりにくいジャズより、単純でエキサイティングなロックやR&Bのほうを好む。おれがそういったことをはじめたとき、そういう時代がやってきたんだよ。」
8「自分自身がジャンルになれ。」
「おれが、ロックのオリジネイター?そうだね。そうだよ思うよ。」
まあ、「今回が最後の海外公演」とのことらしいので、見逃した人は、たぶん「歴史」を見逃したってことになるでしょう。残ねーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!
いやいや、そんなこたあない。みたところ、あと20年くらいは活躍してくれそうでしたから、きっと、また、ひょっこりやってきて、あの豪快なブローと、ギョロ目と、愉快なMCとパフォーマンスで、僕らを熱狂させてくれることでしょう!
ビッグ・ジェイ・マクニーリー、抱えきれないほど元気をもらいました。ありがとうございました!
いつまでもお元気で!!また来てね!!!

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