ROCK FIREBALL COLUMN by NANATETSU Vol.85

ロッカーだって生身の人間。 たまにはお客様に本音を吐きたい時もある! 
ファンに怒りの挑戦状を叩きつけた、ロッカーの過激な名(迷)言集!


 ここんとこ、ロックの歴史の流れを振り返るレクチャーを3回続けさせてもろうたので、今回はお勉強的スタイルを忘れてスッキリしたテーマで迫ってみたい。 レクチャーもあんまり続け過ぎると「ジジイのしつこいウンチクは御免だぜ!」と諸君から三下り半をつきつけられてしまうからのお。 こう見えても(?)、THE-KINGブランドを支えてくれとる若いロック・ファンに気を使っておるんじゃよ、わしは。

 ってことで今回は、「有名ロッカーの言いたい放題!」とまではいかんが、地位も名誉もあるロッカーの「思わず出た本音」ってのを紹介してしんぜよう。 最近の日本では、ロックコンサートでもスポーツ・イベントでも、最初から最後まで大騒ぎするだけの観客が多くて、その鑑賞マナーはひどいもんじゃ。 何もこれは日本が発端ではなく、かつてはアメリカでもイギリスでも、ヒデ〜ことは度々あったもんじゃ。 しかしかつてのロッカーの中には勇ましいもんが結構おってな。 脳ミソ足りない観客に向かって、「バカモノ!」とばかりに怒りの剛速球をブチ込んだ者もおった。 
 昨今のロックシーンは、観客主導型のコンサート、作品づくりばかり行われており、ロッカー側の「listen!」(聞け!)って姿勢が薄くなってきとることに一抹の寂しさを感じておるわしじゃが、観客のマナーの悪さが激化する風潮にモノ申す!ということもあって、かつてのロッカーたちの怒りの攻撃、いや口撃を列挙するぞ、とバリバリの戦闘モードに浸るのはよくないので、新作サイドゴア・シューズの味わい深いワインのようなかぐわしい出来栄えを十分に堪能してから読んでくれ〜。 では、いざ参る!



安い席の人は拍手を。 高い席の人は宝石をジャラジャラ鳴らして下さい。 by ジョン・レノン 

 いきなり超過激発言も何じゃから、まずはコレからじゃ。 1964年にビートルズが英国王室主催の「ロイヤル・バラエティ・ショー」に出演の際に、ジョン・レノンがアンコールの際に発した一言じゃ。 これは最高のジョークとして「ロック名言集」に度々取り上げられておるな。
 普段はエラソーに宇宙から人民を見下ろしておるような英国王室連中が、その人民(一般客)と一緒にビートルズのコンサートを楽しんでおることへの皮肉じゃ。 さらに一般客に対しても、彼らのお楽しみの時間のクライマックスにあえて「貧富の差」を再認識させるような意地悪な発言でもあるな。
 ビートルズのコンサートってのは、その時間中観客は絶叫し続けて音楽なんざ聴いておらんかったから、さすがのジョンもうんざり。 しかし頭のキレるジョンのこと、エリカ様のようにあからさまに不機嫌になったりはせず、最高のブラックユーモアで切り返したってわけじゃ。 当時のロックはまだまだ市民権がなく、お金を払ってくれておるお客様に対して反抗はおろか、皮肉さえも許されない時代だったのに、大した勇気じゃ。 ジョン・レノン君あっぱれっ!



うるさい、テメーら! いつまでもクソの中に顔を突っ込んでんじゃねえー!!
                            by ジム・モリソン(ドアーズ)

 
これ、パンクロッカーの発言ではないぞ! ステージでの素行、発言の過激さではロック史上ナンバーワンのジム・モリスンの超モーレツな口撃じゃ。 ドアーズの芸術的な音楽展開なんざ目もくれず、ひたすらヒット曲とジムの過激なアクションばかりをリクエストして勝手に盛り上がる観客を罵倒したのじゃ。
 観客に向かって「うるさい!」なんて発言したのは、おそらくジムが初めてじゃろう。 しかしジムの真意とは正反対に、この発言を新しいアクションと勘違いした観客はますます盛り上がって次々とステージに上がり出し、ついにコンサートは大騒動となって中止。 1969年夏、うだるようなクソ暑いマイアミの夜に起こった事件じゃった。


もう“サンキュー”は言わないぞ!
 君たちに媚びているみたいだからな!! by ジミ・ヘンドリックス

 ジミのアメリカ初登場のステージとなった「モンタレー・ポップ・フェスティバル」出演時の口撃。  ジミは期待にたがわぬすさまじいプレイを披露しておるのに、何故か観客は盛り上がらない。 ギターを叩き壊したり、火を付けたりする前代未聞のオーバーアクションを期待して集まっておったからじゃ。
 ジミは途中から明らかに不機嫌で伏し目がちになり、早口ながらも大意としては次のようにまくしたてておる。 「曲が終わるたびに、サンキュー、サンキューって言うのはもう止めるよ。 無反応な君たちに媚びているみたいだからね。 でもオレはプレイしにきたんだ・・・」
 そしてこの発言をした後の二曲目「ワイルドシング」のラストシーンで、「こうすりゃいいんだろう?」とばかりにギターに火を付け、そのままステージに何度も叩きつけて、今度は無言のままバックステージへ消えた。 観客にとって待ちに待ったエンディングじゃったが、その異様なテンションによる驚愕のパフォーマンスに、誰もが言葉を失って観客席は静まり返ったのじゃ。 じみだけに派手過ぎた!って失礼しましたあ〜♪



おい、そこのテメー何やってんだ! おとなしくしないと演奏しねーからな!! by キース・リチャーズ
 ロック・コンサートで初めて死者が出た、悪名高き1969年オルタモント公演での一幕。 会場警備を担当したヘルス・エンジェルスが威圧感と暴力で観客を無理矢理に統制しており、ついに「悪魔を憐れむ歌」の演奏中にヘルスエンジェルスと観客との間で取っ組み合い、小競り合いが勃発してコンサートどころではなくなったのじゃ。
 ミック・ジャガーが必死に鎮静を求める呼びかけをするが、事態は悪化するばかり。 そこでキース・リチャーズがステージの先端まで出て、ヘルス・エンジェルスと観客をどやしつけたのじゃ。
 他のメンバーたちが恐怖のあまり及び腰になっている中、キースはたった一人で騒動の中へ飛び込もうとしたのである。 死者が出たことは痛ましいことじゃが、あん時のキースは本当にカッコよかったのお〜。 映画「ギミー・シェルター」でそのシーンをしっかりと拝めるぞ。
 そう言えばキースは、1981年北米ツアー中も、興奮したファンが演奏中のキースに抱きつこうとした時に、すかさずギターを外して殴り倒そうとして、その後何事もなかったようにプレイを再開したこともあった。 酒やドラッグに溺れる無頼派ロッカーのイメージが強いキースだが、演奏には恐ろしいまでに真面目なのじゃ。 この模様は映画「レッツ・スペンド・ナイト・トゥギャザー」の中で観ることが出来る。


真夏だって雪が降れば冬になる。 真夏に真冬を創り出す。 
  それがオレのやり方だ。 by ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)

 これはバンドのマネージメント側から発表されたジミーペイジの公式なコメントじゃ。 最初の部分はとってつけたようで余計なひと言って感じじゃが、「真夏に真冬を創り出す」ってのは、独創性を追求する姿勢の表明と理解したわしは、「かっこええー表現じゃのお〜」と最初はシビレタもんじゃ。 じゃがどうも発言の真相は違ったようじゃ。
 要するに「ファンが期待していることばっかりやってられるかよ!」ってことらしい。 独創性がそのまま商品として通用していたアーティストとして幸せな時代ならではの発言じゃな。 しかしだな、ツェッペリン解散後のジミー君の飯のタネは、もっぱらかつてのリマスター・ベスト盤づくりばっかり。 定期的に数種類も発表しておって、それって真夏に真冬を創り出すってことかいのお? 遺産の乱用と違うかジミー君。 人生何が起こるか分からんから、あんまりデカイ口は叩かん方が無難じゃな。


さて、ラストの二言(ふたこと)は、わしがこの耳でしっかりと(?)聞いた、日本公演での問題発言じゃ。 おいおいジジイ、あんたホントに聞こえたのかよ〜ってハナで笑ったな? 当時はわしも若くて耳もしっかりしておったわい、バカモノ! 

なんで今さらあの曲をやらせるんだ・・・勘弁してくれよ。 by エリック・クラプトン

 これは1974年のエリック・クラプトン初の日本公演での一言。 当時のクラプトンはすっかりレイドバックしておって、好きなブルースナンバーやスローバラードをリラックスしながら演奏するライブをやっておった。 ところが日本の観客が初めて観るクラプトンに期待しておったのは“ギターの神様”としての颯爽としたお姿とプレイ。
 いつまで経っても聞いたことのない地味な曲ばっかりダラダラとやられてはタマラン!とばかりに、やがてかつての名曲「レイラ」「ホワイトルーム」をリクエストする声が大きくなった。 そんな時にクラプトンの口からポロリと出た一言がコレ。
 まあ冗談交じりでボソッと発せられた一言じゃたが、わしは聞き逃さんかった。 何だかクラプトンと日本の観客との距離の大きさを知らされたようで、ちょっと悲しくなったな。 ファンを大切にすることで名高いその後のクラプトンからは想像も出来ない発言じゃが、当時は奇跡的にドラッグ中毒から脱出して活動を再開していただけに、どうしても自分の信念に沿ったプレイをしたかったんじゃろうな。 


ここはディスコパーティじゃないぜ。 ロックンロール・コンサートだ。 by デヴィッド・ボウイ
 こちらはデヴィッド・ボウイ1984年の日本公演での発言。 この時のボウイはディスコティックなシングル「レッツ・ダンス」「モダン・ラブ」が日本でバカ売れしており、会場には六本木のディスコから流れてきたようなセクシーなおねえ〜さん方がいっぱい! 
それはそれで喜ばしいことじゃが。 コンサートは二部構成になっており、第一部はグラムロック時代のナンバーのオンパレード。 休憩を挟んでからの第二部はヨーロッパ・プログレ風の重厚なナンバー。 そして最後の最後で最新のダンスナンバーが披露されるというボウィの歴史が一望できるスバラシイ構成じゃった。
 しかしおね〜さんたちからは大ブーイング。 わしの隣におったノーテンキ・パー子みたいなギャルは、「何なの、このコンサート・・・」なんて何度もほざいており、その度にひっぱたきたくなったもんじゃ。 そんな状況の中でボウイが発したのがこれじゃ。
 確かコンサート・ツアーのスローガンは「シリアス・ムーンライト」。 真面目に自己の過去と現在を披瀝するという、ボウイにとってキャリアの集大成ツアーだったんじゃが、それを掲げておったのにこの有様。 フリークを唸らせることはできても、にわかファンには不評という典型的なコンサートになってしもうた。 やはりロッカーがアーティストとして生きていくのは容易ではないのじゃ。 

 その他、同類の発言としては
45歳にもなって“サティスファクション”を歌ってるぐらいなら
 死んでた方がましだ
。 by ミック・ジャガー


僕がステージで毎回“パープル・レイン”を歌わないからって、何か問題あるかい?
 あれは僕の曲だが、他の曲だって僕の曲だ。 by プリンス

 なんかが割と有名じゃな。 要するに言いたいことは、「頼むから同じことばっかりやらせないでくれよ。 オレだって日々成長、変化しているんだから、君たちも付いてきてくれよ!」ってことなんじゃな。 スバラシイ時間や美しい夢を与えてくれたロッカーに対して感謝の念をもって、ここんとこを分かって差し上げようではないか。

 いつの時代も、「お客様は神様」じゃ。 ビッグロッカーといえどもお客様への過激な発言は褒められた行為ではない。 じゃが「お客様は神様」ってのは作品を提供する側の姿勢であって、お客側が「神様はこっちだぜ」ってな姿勢になったら、人間関係がメチャクチャになってしまうよのお〜。 相互が尊重、理解し合ってこそ、そこから感動や夢が生まれてくるのじゃ。
 上記のロッカーの発言は、時間が経ってから検証してみると、お客側の無理解が引き起こした悪しき結果のニュアンスが強いようにわしは思えるな。 すべてのロック・ファンが、THE-KINGブランドのお客様のように、マナーと作品への理解力と正しいロック・スピリッツに溢れておったら、こんな発言も出なかったことじゃろう。 ロッカーとロック・ファンの清く正しい関係、そいつをこれからも諸君が築き上げていってほしい。 頼むぞ! そのためにも、サイドゴア・シューズで足元をキメて、ロックファンの正しい“成り”ってのからアピールしていってくれ〜。



七鉄の酔眼雑記
 〜星座をみつけよう

 本編では少々エキサイトしてしもうたので、ここではほのぼのとしたオハナシをひとつ。 今回の更新日10月23日は、オリオン座流星群のもっとも活発な動きが見られるそうで、国立天文台は「23日前後には、是非星空を見てみよう!」なんてPRをかましておる。 今年は皆既日食もあって天文の話題が多いが、このオリオン座流星群もまた天文マニアから一般人までを惹きつける天文現象のようじゃ。 中には今年をきっかけに天文の世界に入り込む人もいるじゃろう。そこでわしからとっておきのオススメの本を紹介しよう。

■星座を見つけよう/H.A.レイ著、絵 (福音館書店刊)
 これは1969年に日本語版が発行された、子供から大人まで楽しめる星座鑑賞の入門書じゃ。 著者であり、挿絵も書いておるH.A.レイ氏は、優れた児童書/絵本を数多く残しているドイツ人の作家じゃ。 有名なのは「ひとまねこざる」じゃろうか。 名前は知らなくても絵を見たら「ああ、あの人か!」って分かる方もいるかもしれんな。
 この本は、季節ごとに移り替わる星空の様子をやさしい天体図解で紹介しており、星座の名前の由来、星座同士の関係、星座の色の解説などを、子供でも興味を持てるように楽しく懇切丁寧に解説しとる。 かなり詳しい内容も盛り込まれており、大人にも読み応え十分の素晴らしい本じゃ。
 物語とその文体、テーマ、挿絵全てに星座に関する夢とロマンが詰まっており、それまで漠然と見上げていた夜空、星空に対する意識が劇的に変化する可能性を秘めておる本じゃよ。 わしは中学生の頃に友達の家でこの本を発見した瞬間から虜(とりこ)になってしまい、あっという間に仲間内では星座博士になってしまったもんじゃ! 博士の名に恥じぬよう、天体望遠鏡を手に入れるために、大人の天文雑誌の懸賞に応募したもんじゃが、こっちは全然当たらんかった・・・なんてことはどーでもいいが、あれから40年近く経った現在読み返してみても楽しくてしょうがない! 
 一等星(肉眼でとても明るく感じる星)の数が多いこの季節は、一年でもっとも星空が輝く季節じゃ。 この本で星座の予備知識をしっかり携えて輝く夜空に臨むのもなかなかオツな夜の遊びじゃぞ。 もし諸君の中で小さなお子さんのお父さんがおったら、買ってあげてみてはいかがかな。 愛するご子息が正真正銘の天文博士への輝かしい第一歩を踏み出すかもしれんぞ!


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