ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.70


 ワールドベースボール・クラシックの「サムライ・ジャパン」の出だしはなかなかよろしいな。 この“ドリームチーム”にはメイッパイ暴れまくっていただき、どうか国民を元気にしてほしいもんじゃ! しかしまあ、超一流どころが一堂に会すというのは、やっぱり迫力があるのお〜。 サッカーのW杯でもそうじゃが、4年に一度だけしか実現しないだけに、観ている方の有難味ってのも格別じゃのお。 麦焼酎「二階堂」くんがすすんですすんで、たまらんわい!
 うむ、ドリーム・チームとは最強集団ってことじゃが、ロックの場合の最強バンドは「スーパー・バンド」とか「スーパー・セッション」とか呼ばれており、4年に一度どころか、滅多にお目にかかれないまさにお宝軍団じゃ。 最近はお年を召したかつてのビッグ・ロッカーたちが集められたチャリティ・フェスティバルの開催が頻繁じゃ。 じゃがこれらは真の「スーパー」とは言えんじゃろう。 一部を除いては、どうも年金稼ぎの同窓会的企画の域を出ない集いであり、新しいエネルギーはなかなか伝わってこないもんじゃ。 ファンが夢見る「スーパーバンド」による「スーパーセッション」は、ロック史上では極めて珍しいのじゃ。
 それはスーパースター其々の、スケジュール、レコード会社との契約内容、音楽性などの違い、更にお互いのライバル意識(?)やギャラ配分の問題などが複雑に絡み合ってくるからじゃ。 だからこそ、歴史の中から掘り出し甲斐があるってもんじゃ。 ドリームチームの健闘を祈るためにも、ここは一発「スーパーバンド」「スーパーセッション」の成功例を引っ張り出して、わしらもドリームな、スーパーな気分になってみよう!


不景気な気分もコイツでコッパミジン! ロック史に咲いた奇跡の「スーパーバンド」「スーパーセッション」!!

♪Project-1 「ミリオンダラー・カルテット」
 ま、まずはこれじゃあ〜! ご存知、エルヴィス、カールのお父さん、ジェリー・リー、ジョニー・キャッシュによる超ウルトラ・スーパーセッション! まさに空前絶後、ロック史上最大の奇跡のセッションじゃ。 正直言って「ミリオンダラー・カルテット」のサウンドをアメリカのドリーム・チームの応援曲にされたら、わしはサムライ・ジャパンから寝返ってしまうかもしれんぞ!(笑)
 もうセッションの内容云々はカンケーナイ! 実現した事実に不滅の価値があるのじゃ。 ジョニー・キャッシュ御大はふらりと立ち寄っただけとかの説もあるが、それでもええ!まだ未発表テープが残っておるらしいので、早いとこ全貌を明らかにしてほしい! わしはこういうビッグな連中が“真剣にリラックスした”セッションってのがたまらなく好きなんじゃ。 あ〜わしもバーボン片手にご挨拶に行きたかったが、さらにエディやジーンがいたら、慣れなれしく振舞い過ぎて、サム・フィリップスにつまみ出されたであろう! 


Project-2 「トラヴェリング・ウィルベリーズ」
 記憶にあるもっとも新しいスーパー・バンド、スーパーセッションは、1988年に覆面バンドとして結成されたこいつらじゃろう。 ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、ロイ・オービソン、トム・ぺティ、ジェフ・リン(エレクトリック・ライト・オーケストラのリーダー)の5人のビッグ・メンバーから成り、アルバムも2枚発表。 いずれもメンバーそれぞれのファンが納得する楽曲とプレイを披露して、チャートアクションも上々じゃった。 しかしロイ・オービソンが死亡し、その後釜の予定じゃったデル・シャノンも謎の自殺によってこの世を去り、活動が本格化することなく消滅してしもうた。
 07年にアルバムが再発売されると、リバイバル・アルバムとしては異例の大ヒットとなり、ファンのウィルベリーズに対する深い哀惜の念を物語っておった。


 「ミリオンダラー・カルテット」がアタマで、お次が「トラヴェリング・ウィルベリーズ」とくりゃー、もう後が続かないからこれにて終了! ごきげんようサヨウナラ。 ともいかないので、ちょいとイギリスの方で探してみよう。


Project-3 「ロード・サッチ&ヘヴィ・フレンズ」
 ミリオン・ダラー($1,000,000)とまではいかんが、その半分の$500,000ぐらいならあったぞ。 ロード・サッチというシンガーが60年代末期に"ヘヴィなお友達"を召集したことで実現した2枚の豪華セッション・アルバムじゃ。
 ロード・サッチ自身はマイナーじゃが、お友達ってのがすごかった。 ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、リッチー・ブラックモア、ノエル・レディング、ジョン・ボーナム、キース・ムーンら、ブリティッシュ・ロック界の歴史を作った超大物が勢ぞろい! 
 アルバムに収録された演奏は、これぞ!ブリティッシュ・ブルース・ロックの真髄ってな素晴らしいもんじゃった! ロード・サッチ殿に拍手〜♪といきたいところじゃが、誠に残念ながらご本人のヴォーカルがヒド過ぎて聞いてらんない! 豪華メンバーを集結させて上機嫌なのは分かるが、演奏に合わせてウイスキー片手にはしゃぎまわり、ヤミクモにわめき散らしているって感じなのじゃ。 これでは洋楽カラオケのわしと一緒じゃ・・・。 まさに歴史的迷セッションであ〜る。 
ヤロウ、金で集めやがったな!

 
Project-4 「ダーティー・マック」
 ロード・サッチくんのセッションの約2年前には、もうひとつスゴイことが起きておったな。 ジョン・レノン(Vo,G)、エリック・クラプトン(G)、キース・リチャーズ(B)、ミッチ・ミッチェル(Ds)による伝説的なセッションじゃ。 ローリング・ストーンズが企画したTVショウ用セッション「ロックンロール・サーカス」での一幕であり、この即興バンドの名がダーティ・マックじゃ。 マックとはマクドナルドのことではないぞ。 ポール・マッカートニーのこと(らしい)。 “きたね〜マック”とは、まあジョン・レノンのブラック・ジョークじゃな。
 ビートルズとストーンズとクリームとエクスペリエンスとの合体ってことで、これは$750,000ぐらいの価値はあるじゃろう。 しかし残念ながら演奏は2曲のみ。 メンバーそれぞれの音楽性を考えれば2曲が限界だったのかもしれんな(?!)


ブリティッシュ・ロックの匂いが強いスーパーセッションのお次は、フィフティーズ・サウンドの古き良き香りが漂う2つのセッションをご紹介しよう。 まったり〜としながら読んでくれい。

Project-5 「ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズ」
 今回のセレクトでは、「チャリティ企画」はキリがないので外すつもりじゃったが、1枚だけわしのお気に入りを紹介するぞ。 このプロジェクトは多発性脳脊髄硬化症という難病の研究機関「ARMS」の支援が目的であり、同じ主旨の大規模なコンサートとは別に、ストーンズのビル・ワイマンがR&Bの演奏に長けた大物たちを募ったセッション・バンドじゃ。
 チャーリー・ワッツ、ジミー・ペイジ、ポール・ロジャース、ゲイリー・ブルッカーらが、実にリラックスしたムードで和気あいあいと、それでいてキメルところはバッチリとキメルゴキゲンなプレイを披露! ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズとは、40年代のアメリカの南部に実在した伝説的なストリート・バンドじゃ。 その名に相応しい演奏じゃ! ナッソーとバーボンは欠かせんな!


Project-6 「ハニードリッパーズ」
 ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、ロバート・プラントがスタジオで遊んでいる時に、偶然にもいいテイクが録れてしまった!ので急遽レコード発売しちゃおうぜ〜!ってことになった偶発的なセッションじゃ。 サウンドの仕上げを任されたのは、当時(80年)一世を風靡していたダンス・バンドのシックのプロデューサー兼ドラマーだったナイル・ロジャースじゃ。
 R&Bというより、スタンダード・ポップスのノリであり、「シ―・オブ・ラブ(愛の海)」なんかオリジナルよりこっちの方が大ヒットしてしまった! フィフティーズ・ロックやポップス特有の、“あの”えもいわれん独特の味わいを70年代のスーパーロッカーたちが見事に再現してみせた隠れた名セッションじゃ。 ノスタルジックなジャケットもgood ! 


 リラックス・ムードのセッションが続いたので、お次は泣く子も黙る!「スーパー・バンド」じゃ。

Project-7 「バッド・カンパニー」
Project-8 「エイジア」
 
バッド・カンパニーは70年前半にブルース・ロック系、エイジアは80年代前半にプログレッシブ・ロック系、それぞれのスター・プレイヤーたちが集まって結成されたスーパー・バンドじゃ。
 ともにデビュー以来ライブは大盛況、アルバムはビッグ・ヒットを記録してロック史にその名を刻す存在となったもんじゃ。 メンバーそれぞれが、キャリアの中で会得した最大公約数(もっともファン受けする要素)的サウンドを持ち寄って完成させた豪華絢爛たるビッグ・ビジネスなサウンドじゃった。
 ことビジネスに関しては、一般的にはアメリカ人が貪欲とされておるが、ロック界に限ってはイギリス勢の方が果敢な試みを成功させておったような気がするのお。

参考のためにこの2つのバンドのメンバーをご紹介しておこう。

バッド・カンパニー〜ポール・ロジャース(Vo 元フリー)、ミック・ラルフス(G 元モット・ザ・フープル)、ボズ・バレル(B 元キング・クリムゾン)、サイモン・カーク(Ds 元フリー)
エイジア〜ジョン・ウェットン(Vo,B 元キングリンゾン他)、スティーブ・ハウ(G 元イエス)、カール・パーマー(Ds 元EL&P)、ジェフリー・ダウンズ(Kb 元バグルス)


 いかんな。 どうもアメリカ勢の旗色が悪くなってしもうたな。 アメリカン・ロッカー同士は仲が悪いんじゃろうか。 集まってもエルヴィス・コピー大会とかで「ハッピー! ハッピー!!」で終わってしまうのか? はっきりとした理由は分からんが、アメリカはデカイので、あっちこっちに散らばっているロッカーたちが集まる機会が狭いイギリスよりはるかに少ない・・・ということにしておいて、では用意周到に練られて実現したアメリカのスーパー・バンド、スーパー・セッションをかますぞ。


Project-9 「クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング」
 1回限りのセッションやライブではなく、バンドとして一定期間活動した「スーパー・バンド」はこのCSN&Yがロック史上初めてじゃろう。 バーズ、バッファロー・スプリング・フィールド、ホリーズというアメリカの人気フォーク・ロック・バンドの主要メンバーが60年代末期集結したのじゃが、これは時代が産んだスーパー・バンドじゃ。
 デヴィッド・クロスビー、スティファン・スティルス、グラハム・ナッシュ、ニール・ヤングの4人は、プレイヤーとしての力量もさることながら、新しい生き方、価値観が声高に提唱されておった60年代後半の若者の心をガッチリと掴んだ歌詞を紡ぎだすロッカーたちであり、「ロックで世界を変えることが出来る!」と信じられていた時代のファンの夢が結実したスーパー・バンドだったのじゃ。 4人の個性が溶け合ったスタジオ盤「デ・ジャ・ヴ」、ライブ盤「4ウェイ・ストリート」は、いずれもロック・シーン全体が史上もっとも熱かった60年代後半の空気が真空パックになった名盤じゃ。


Project-10 「スーパーセッション」
 60年代末期〜70年代中期に名プロデューサー&キーボード・プレイヤーとしてロック界にその名を馳せたアル・クーパーが、上記のCSN&Yのスティファン・スティルスと、マニアックなブルース・ギタリスト、マイク・ブルームフィールドを募って企画したライブ・セッションじゃ。
 発表当時「スーパーとはちょっと大袈裟じゃな」と思ったもんじゃが、顔ぶれの知名度以上に、それなりに名のあるロッカーが大観衆の前で長時間のセッションを繰り広げるって企画自体が画期的で「スーパー」だったんだそうじゃ。 確かに、そんな企画はそれ以前も以後もロックシーンでは見られんな。

 どうじゃ、ビッグなお方が集まったビッグなサウンドで元気になったかのお。 イノキ・センセーの「元気があれば何でも出来る!」ではないが、諸君を元気付けるために、この七鉄も微力ながら、少ない脳みそを絞りに絞って当コーナーのテーマを考えとるので、どうかこれを機にロック史を彩ったスーパー企画を堪能してパワーアップしてほしいぞ! おnewのThe-King Tieでのど元、胸元をビシッとキメて、オフィシャルにプライベートに諸君のロック・スピリットをカマしてくれ! 最後に、もし、仮にだ、エルヴィスとコクランのセッションや、共に写った写真があるものなら、わしにそぉっと添付送信するようにな。 流行りの「偽装」はいかんぞ!






七鉄の酔眼雑記


 実は昨年からハマっとる「テーマ」があるのじゃ。 それは「タイム・トラベル/タイムスリップ」であり、そのテの映画や小説を片っ端から体験しとるんじゃ。 「ほほぉ〜、さてはあと先短いから若い時分に戻りたいんだろう」って笑われそうじゃが、そうではない! そりゃあ1950年代に戻れるものなら戻りたいが、わしが「タイムスリップ」にハマっとるのは、そんな郷愁よりも、モン無し状態のままで現代ではない時代に突然放り込まれたら、どうやって生きていくのか、という一種のサバイバル術に興味があるのじゃ。
 例えばたった一人で大好きな1950年代のアメリカの地に突然タイムスリップしたらどうする? 「うぉおおお〜!!! エルヴィス、コクラン、ヴィンセントが生で観れる!」って、そういう問題ではないじゃろう。 お金も友人も家族もない、もちろん戸籍だってないから身分を証明できるものはなにもない。 しかも現代ではない環境において、どうやって生きていけばええんじゃ? 「未来から来ました」なんて力説したら、村八分か精神病院送りがオチじゃしな。 

 ところがこの部分に関してこだわった作品にはまだ巡り合っておらん。 先日、タイムトラベル小説では幻の名作といわれる「マイナス・ゼロ」(広瀬正著)ってのをヤフオクで落札したんじゃが、タイムスリップした時に持っていたお金がそのまま使えるという設定じゃったので、少々期待外れに終わってしもうた。 時間移動による過去(もしくは未来)と現代との事実の繋がりに関するタイムパラドックスが物語の軸になるのは分かるが、その前にじゃ、頼りになるもんが何もない状態で「どうやってメシを食っていくか、酒を飲みに行くか」の方がわしには興味がある。 これは現代の「100年に一度の金融危機」なんかより、ずっとオソロシ〜状況じゃから、そこら辺に取り組んだ作品に出会うことをゾクゾクしながら待ち望んでおるんじゃがのお。
 二ヤリと出来たのは、名もないインターネット・エッセイの中にあった、30年前にタイムスリップした時のオハナシ。 とりあえず身に付けていたラジオ付ウォークマンを質屋に持っていって5000円を調達したってクダリ。 「うんうん、そこからなんじゃよ」と腕を組みながら納得したが、ショートエッセイなので深いツッコミはなかったのじゃ。 諸君の中でここら辺がバッチリの作品を知っとったら、ぜひ連絡してくれ〜い!


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