ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.58



 「天高く馬肥える秋」!がそろそろ到来じゃ。 “馬肥える”前に、実はわしの方が先に肥えてしまったぞ! 今年の夏は自分自身をやさーしくいたわるために少々酒を控えて、その分食に貪欲になっていたので、腹回りがすっかり太くなってしもうた。 まあええではないか。 以前よりは多少健康的に過ごしておるという訳じゃ。

 ところで、当コラムにおいて酒とロックのオハナシは毎回カマしておるが、「食」について語った覚えがないのお。 大体ロックと「食」ってイメージが一致せんもんな。 「これを食えばロックがよく聞こえる」なんてハナシは聞いたこともない。 名曲の歌詞でも食べ物がポイントになってるなんてのも少ないじゃろうしな。

 そこで久々に太った記念って訳でもないが、「ロックと食」という不可侵(語られることのない)のテーマに挑戦してみたいものじゃが、何分そんなコラムは前例がなく 大調査を始めようにもかなりの時間を要するじゃろう。 そこで手始めとして、「ロックとフルーツ」ってテーマから入ってみたい。 (なんじゃそりゃ〜。 七鉄もついにトチ狂ったか、と思わんように) タイトル、歌詞、ジャケットなど、フルーツが登用された数少ない例を引っ張り出してみよう。 何よりもこのコラムに今までとは趣きの違った華やかさが加わることじゃろう! そおよのお〜、南国のビーチリゾートで、美しい海をバックにした彩り鮮やかなフルーツとカクテルを目の前にして、ナッソーを羽織ってくつろぐ自分の姿を想像しながらで読んでくれたまえ!


“食欲の秋”に捧ぐ! 
果たして「ロック」と「食」とは共存するのか? 
 ロックとフルーツとのあま〜い関係、これいかに?


●レモン 
 いきなりスイート・フルーツじゃあロック・ファンは気合が入らないかもしれんので、ドタマがシビレル酸っぱいレモンからいくぞ。 しかしレモンとロックって接点に覚えがないのお。 おかしい・・・なんつってもレモンは二日酔いに効くと言われとるフルーツじゃし、大酒飲みの多いロッカーなら、歌詞のどっかに引用していてもよさそうなもんじゃが・・・と首をひねっておったら、ひとつだけ思い出したぞ。 「レモン・ソング/レッド・ツェッペリン」じゃ。 
 しかし歌詞のテーマは「二日酔い」ではなくて、「オレのレモンを絞ってくれ・・・」という、そ・う・い・う曲じゃ。 ブルースによくあるセクシュアルなダブルミーニング・ソングじゃよ。 おい、そこのキミ、ニヤニヤしとるでない! 次いくぞ、次!!



●オレンジ
 オレンジはアメリカの国民的果物と言えるほど大量に生産されておるが、ロック界での扱いはジョニー・キャッシュ御大がクールに歌いまくるブルーグラスのスタンダードナンバー「オレンジ・ブロッサム・スペシャル」ぐらいが有名かのお。
 “オレンジ・ブロッサム”(オレンジの花)とは古いアメリカの隠語で「南部を横断する汽車」という意味がある。 汽車ってのは、様々な心情を抱えた人たちが乗り込んでいるから、古い楽曲のテーマによく使われるが、その汽車の中でも特別詩的に扱われてきたのが“オレンジ・ブロッサム”ってことじゃ。
 ジャケット類では、70年代最高のギタリストと評されたジェフ・ベックの71年の作品「ジェフ・ベック・グループ」のデザインにオレンジが登場しておる。 69年発表の「ベック・オラ」でのリンゴに続いてのフルーツ・デザインで、 どちらも意味不明じゃ。 “オレンジ・アルバム”の方は、フィフティーズロックのテイストを追及するためにメンフィスでレコーディングされており、仕事合間にロックの本場で食べた本場のオレンジの味に、下積み時代の悲哀を思い出しておったのかのお・・・とか考えると、ジャケットを見ること自体が楽しくなってくるな!


●バナナ 

 バナナとロックといやあ、これしかあるまい! そう、世界中で有名なバナナ・レコード・ジャケットである「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ」じゃ。 バンドもサウンドも知らなくたって、ポップ・アートの巨匠アンディ・ウォーホールが手がけたこのデザインは知っとるじゃろう。 最近では子供用のTシャツでも見かけるようになったもんな。
 ちなみにオリジナルLPジャケットはバナナの黄色い皮の部分がシールになっていて、それを剥がすと下から赤いバナナの身がお目見えするという仕掛けになっとった。 芸術的というか下世話というか、わしにはこのセンス、よお分らんがアイディアがオモシロイから買ってもうたわい。


●ブルーベリー
 ブルーベリーは視力回復に効くとされるドリンクの原料であり、わしもそのドリンクを・・・じゃのうて、お人柄のよろしいドミノ大先生の出世曲「ブルーベリー・ヒル」があるな。 エルヴィスも歌っておるスタンダードナンバーじゃ。 しかしブルーベリー自体とはあんまり関係がないような歌詞じゃ。
 ブルーベリーってのは、アメリカの田舎では日本の野イチゴみたいな可憐で身近な草花のような存在であり、それが咲き誇る場所ってのは若者を夢見心地にさせるような言い伝えが多いらしい。 そんな風習を引用したのがこの曲、という説が強い。
 それから今年のはじめに全米で公開された映画「マイ・ブルーベリー・ナイト」も加えておこう。 今や全米の国民的歌姫に成長したノラ・ジョーンズが主演、そして挿入歌を歌った作品で、音楽担当は前々回のコラムでフューチャーしたライ・クーダーじゃ。 この映画もまた前述したアメリカの古きブルーベリーの風習が作品全体のカラーを演出しておる。



●ストロベリー
 乙女の愛するかわいらしいイチゴちゃんとロックなんてミスマッチのようじゃが、60年代後期にストロベリー・アラーム・クロックなるバンドがおった。 メンバーの風貌はヒッピーのようじゃったし、サウンドは当時流行のサイケデリック・オルガン・サウンドじゃったし、イチゴちゃんのイメージとはかけ離れたおったが、デビュー曲「インセンス・アンド・ペパーミンツ」は全米No.1に輝いたもんじゃった。 しかし「イチゴの目覚まし時計」ってどういう意味じゃ? 当時流行していたドラッグの覚醒作用による勝手なイメージなんじゃろうな。
 ストロベリーといやあもう一発。 わしの大好きなブルースハーププレイヤーであるポール・バターフィールドが60年代後期に発表した、無国籍サウンドセッション「ストロベリー・ジャム」があるぞ。 ブルース、ジャズ、インド音楽、中近東音楽などなどゴッチャ混ぜにしたサウンドで、「これは“いちごジャム”どころじゃなくて、“ミックスフルーツ・ジャム”じゃな」なんて思ったもんじゃった。 ポール曰く「ジャムってのはアメリカではごく普通の食べ物で、ストロベリージャムはその代表格。 つまり、このセッションはちょっとアバンギャルドだけど、俺たちはいつでも普通にやってんだってことでこのタイトルだ!」とのこと。


●リンゴ

 
これはもう「リンゴ追分」でキマリ!じゃのうて、ロックの歴史においてフルーツの名前、デザイン、イメージがもっとも効果的に使われたのは、ビートルズが立ち上げた自らのレーベル、アップルレーベルじゃろうな。 何故ビートルズはりんごを選んだのかというとだな、リンゴってのは「エンターテイメントのメッカ」「夢を求める人が集まる場所」という隠語があるのじゃ。 ニューヨークが「ビッグ・アップル」と呼ばれるのはこのためじゃ。 1930年代に経済の大不況を迎えたアメリカにおいて、この時期に何故かニューヨーク郊外においてリンゴの大豊作が続いたのじゃ。 腹を空かした人々はリンゴ目当てにニューヨークに集まり、みんなが安くて美味しいリンゴを食べながら空腹を癒したことから、リンゴにはそんな“称号”が付けられるようになったのじゃ。
 リンゴにまつわるこの深〜い真意までしっかり把握して「アップル・レーベル」と命名したビートルズ。 この切れ味の鋭いインテリジェントなセンスはまことにお見事じゃった!
 



 
50年を超えるロックの歴史を把握しとるわしでも、その他にすぐさま思い出すことのできる「ロックとフルーツの関係」は、
ブドウの絵でジャケットを飾った、60年代末期のサイケ・フォーク・バンドのモビー・グレイプ、ジョン・レノンがバンド名を付けて、ビートルズの肝入りでデビューしたその名もズバリのグレープ・フルーツ、「イート・ア・ピーチ」(を食べろ!)と題されたサザン・ロックバンドのオールマン・ブラザース・バンドのアルバム名ぐらいじゃな。 いずれもジャケットがロックらしからぬ漫画チック(ポップ・アート的?)なので、ご参考までに写真を添付しておくぞ。
 しかし、ジャズとかフュージョンの世界では、フルーツはその視覚イメージや嗅覚効果が結構使われておるのに、ロックはなぜ少ないんじゃろうか。 メインディッシュ(お料理)に至っては、今後の調査成果がほとんど出ないと予想できるほど極小のはずじゃ。 ロッカーだってメシを食わなきゃ生きていけないのじゃが、やっぱり「ロッカーは食わねど高楊枝」みたいな見栄やハッタリ、また「満腹でロックが出来るか!」ってな気合みたいなもんがロックの世界には強いのかもしれんな。 やせ我慢出来るのもロッカーの重要な資質ってことなんじゃろうか?!
 
 
 時と場合によってはやせ我慢も結構じゃが、諸君、グレイトなロックファッションに対してはやせ我慢は無用じゃぞ。 諸君のロック・フィーリングにビビッときたTHE-KINGのアイテムはたらふくガッツリいただいてしまおう! ロックというスパイスなるものが効いたTHE-KINGのロックン・ロール・アイテムは、ただ眺めて吟味しているだけでも酔いが走るというもんじゃ。 ご新規様に告ぐ。 まずはぜひテイスティングするべし! ちょっとご無沙汰している方々、久しぶりにご賞味されてみてはいかがのお〜。 お口直しなどさせるものはここにはないぞ!




七鉄の酔眼雑記 
 
  
 「ロックとフルーツとの関係」のオハナシ、いかがだったかの〜。 余談として、もうひとつ付け加えておこう。 70年代ぐらいまでのアメリカのロック界では、ライブ直後の食事として、スイカと紅茶のセットが好まれたそうじゃ。 理由は手っ取り早い水分と糖分の補給、さらにダイエット効果もあると信じられていたというハナシを何かの本で読んだ記憶があるな。 わしもやってみようかの〜♪
 ちなみにわしとフルーツの関係じゃが、居酒屋で焼酎を割るグレープフルーツぐらいかのお。 それとて、基本的に酒には甘味は無用!のわしは付き合い程度にしか飲まんな。 だからわしとフルーツとの関係は希薄であるという言わざるをえない、ってとこじゃ。 幼少の頃は肌がオレンジ色になるんじゃないの?って呆れられるほどミカンを食べたもんじゃったが。
 さて、すっかり肥えてしまったわしじゃが、それとは逆に何故だが顔の頬だけがこけてきてしまった。 実際会う人ごとに「七鉄さん、ちょっと痩せたんじゃないの?」と言われるほどじゃ。 若かりし頃、大量の原稿を短期間でさばいた後は頬が異常にこけたもんじゃったが、こけた分が腹に出てきたなんてことはなかった。 こういうおかしな体型の変化って、歳をとった証拠なのかのお。 同世代の友人はみな立派な社会人、家庭人ばかりじゃが、試しに彼らにこの症状を相談してみると「やっぱりオマエは、身体の歳の取り方まで人と違うんだな」と冷やかされてオワリ。 ったく人を珍獣扱いしやがって!

 その一方、薄くなってきていた後頭部の髪の毛が復活の兆しあり!で大いに喜んでおる。 これにはちゃんとした理由があるのじゃ。 偉いセンセーからの正しい助言により、合成界面活性剤とかいう薬品の入った一般のシャンプーの使用を止め、低温熟成による手作り石鹸シャンプーとかに切り替えたら、約三か月後に効果が出てきおった! 今度同窓会があったら、わしを珍獣扱いしおった旧友どもに自慢してやろう!


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