ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.56


 今年の夏はごっつう暑いわな。 なのに、よりによってもっと暑くなるような輩と友達になってしもうた。 そいつはジャマイカ人で、風貌もノリも近くにいるだけでさらに暑い!(失礼) ヤツは毎晩へヴィなラム酒持参でわしの部屋へ乱入してくるんじゃが、今年の夏は「自分を少々労る」って決めておるので少々参っておったんじゃ。
 そんなある晩、ヤツは1枚のDVDをプレゼントしてくれたんじゃ。 「ビエナ・ヴェスタ・ソシアル・クラブ」とかいうキューバの楽団のライブ映画だという。 「気のきかんヤツじゃ。 ジーン・ヴィンセントでも持ってこんかドアホッ!」ってドン引き気味に鑑賞しておったところ、サウンドは潮風に耳をくすぐられるような予想外の心地よさ。 「ほぉ〜悪くないのお〜」と映像に見入っていた時、楽団の中に知った顔を見つけた。 な、なんとライ・クーダーではないか! あらゆるルーツ音楽を操ってみせる奇才ギタリストがキューバ音楽界にも進出しておった!! このライ・クーダーってのは、わしの愛すべき「日陰の月見草」的ロッカーなのじゃ。

 諸君にも身に覚えがあるじゃろうが、レコードコレクションの中でいつの間にか数が増えていたロッカーってのがおるじゃろう。 知らぬ間に結果としてファンになっていたというパターンじゃ。 わしにとってライ・クーダーはそんな存在じゃ。 実はこういう「月見草」ロッカーにわしらは随分と癒していただいてきたのじゃ。 人生にはどうしてもスランプから抜け出せない時が何度もある。 そんな時の気分を和らげてくれるのは、この月見草ロッカーに他ならないのじゃよ、諸君。
 ジャマイカ人のニューフレンズのお陰で、久し振りにライ・クーダーを聴きたくなったので、是非諸君にも紹介してしんぜよう。 諸君がスランプにハマってしまった時の手助けになることを祈りながら書いてみたい。 控え目なロック的サウンドでリラックスして、THE−KINGの新作をしっかりチェック。 今年のキビシイ〜残暑を乗り切る良策じゃ!


◆残暑お見舞い申し上げます
〜癒しのロックアイテム第2回目
世界の音楽シーンを“そよ風”のごとく渉り続けるギタリスト
 〜我が愛しの“月見草”的ロッカー、ライ・クーダー


 
 
ライ・クーダー(魚のバラクーダではないぞ!)のことを多少なりともご存じの方は、「ライ・クーダーがロッカーだとお〜?!」って異を唱えるかもしれんが、まあ待て。 ライ・クーダーは約40年のキャリアの中で、 数多くの国の音楽の歴史的なギタースタイルを現代にリバイバルさせた驚くべき多彩なギタリストじゃ。 
 ポップ・ミュージックなるものが世に出現した1920年代のポップスから始まって、ジャズ、ブルース(R&B)、カントリー、ロックン・ロール、さらにラテン、カリブ、アフリカ、沖縄、ヨーロッパまで、そのフィールドは無限じゃ。 しかもそれぞれのスタイルがモノマネで終わることなく、発祥の地まで出向いて本場のミュージシャンと渡り合いながら現場のピュア・エッセンスとモダン・フィーリングの接点を見事に作品化してしまう奇才ぶりを発揮してきており、 この縦横無尽な才能と活動のお陰で、人生で初めて光が当たったローカル・ミュージシャンは数知れないのじゃ。 自分の感性と腕だけで世界を股にかけるこの仕事っぷりこそ、ロッカーの名にふさわしい! いや男、オトコじゃあ〜!
 誠に長いわしのロック・リスナー人生じゃが、気分は山あり谷あり(谷底が多かったが・・・)であり、時々のわしのフィーリングと、発表されたライ・クーダーの新作のサウンドカラーとが合えば入手していたようで、 数えてみたら20枚近くもアルバムを持っておった!
 段々わしもコーフンしてきておだやか〜とはいかんようになりそうじゃから、ここからはQ&A形式にして落ち着いて話を進めていこう。 諸君もリラックス、リラックスじゃ。


●Q&A その1 

Q=「そんな化けモンみたいなスケールの才能が本当にあるのか?」
A=
これは事実なんだからしょうがないじゃろ。 グダグダ説明しても始まらんので、おススメ作品とその概要を列記しておくので、是非ともチェックしてみてくれ。

「紫の渓谷」 「流れ者の物語」
 いずれも70年代初頭のソロアルバム。 これらにファースト・ソロを加えた3作で、ライ・クーダーはアメリカン・ルーツ音楽の伝統的ギター奏法のほとんどを完璧に再現しているといわれておる。 当時のロック界は奇抜なアイディアとすさまじいテクニックの大ブームじゃったが、そんな風潮に背を向けて、じっくりと伝統音楽に向かう姿は少々異様じゃったな。 諸君も大好きなギャロッピング・ギターやジョニー・キャッシュばりの超絶カントリーギターなんかがバッチ聴けるぞ!

「ジャズ」 「バップ・ティル・ユー・ドロップ」
 タイトル通りアメリカのノスタルジックな音楽を掘り下げて、その魅力をモダンにアレンジして現代へ伝えようとする作品じゃ。 学術的なシリアスなノリはなく、あくまでもリラックスした内容っつうのがミソ。 すごいヤツってのは、すごいことをさりげな〜くやってしまうからなおスゴイ!

「ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブ」
 
わしのジャマイカ人の友人のおススメであり、ライ・クーダーの名前を思い出させてくれた1枚。 キューバの優れたご老人ミュージシャンを集めてライ・クーダーが完成させたモダン・カリブ・サウンド。 90年代末期にはアメリカでブームを呼んだらしいが、わしは当時東南アジアをほっつき歩いておったので全然知らんかった!

●Q&A その2

Q=「そんなにスゴイギタリストなのに、なんで有名じゃないのか?」
A=
確かにライ・クーダーはメジャーじゃない、っつうかアルバムはあまり売れていない。 しかしそれでもほとんどのアルバムは廃盤にならないし、長年に亘って活動を続けられている。
 要するにその才能をもっとも評価しているのはレコード会社であり、作品は単なる商材ではなくて重要な文化遺産的な位置づけ(THE-KINGの作品に近いものがあるのお)がされていて、そのために活動費が前借り出来たんじゃなかろうかとわしは思うとる。 

●Q&A その3
Q= 「活動費は支給されても、ちゃんとメシは食えてんのか?」
A=
う〜んグッドクエスチョンじゃ。 実際に一時期は自宅の電話代も払えないほどビンボーしていたらしい。 しかし80年代中盤あたりから映画音楽を担当するようになり、しかも彼が音楽を担当した映画は不思議とヒットするので、そっちの方の印税でメシ代を賄うようになったそうじゃ。
 映画音楽でメシが食える、というのは実はライ・クーダーの音楽性の本質を物語っておる。 映画音楽は映画の引き立て役じゃし、アクターの存在感を食ってはならないビミョーなさじ加減が求められるものじゃ。 そのさじ加減の上手さもまたライ・クーダーの重要な持ち味であるのじゃ。
 だから彼の書く曲もプレイも派手さがなくてコマーシャル性は薄い。 じゃが、じわりじわりと聞く者の胸に染みわたっていって消えることがないのじゃ。


●Q&A その4
Q=「一番有名なギタースタイルは?」
A=
テクニックとしては、ズバリ!スライドギターじゃ。 「彼のスライド・サウンドのバックには様々な音楽の歴史が聞こえる」といったのは60年代後半からローリング・ストーンズのプロデュースで一躍名を上げたジミー・ミラーじゃったかな。 またストーンズのキース・リチャーズは、やはり60年代の末期にライ・クーダーに出会ったことが自分のキャリアの中でも重要な事件だった!と語っておる。
 ライ・クーダーのスライド・バー(ボトルネック)は金属製ではなく、シェリー酒(わしも大好き!)のガラスの瓶のネック部分を切り取ったものらしく、その手製のスライドバーと、右手の異様に正確無比なフィンガリングが誰にもマネの出来んサウンド・トーンを生みだしておるらしい。

●Q&A その5
Q=「ライ・クーダーってカッコいいの?」
A=
ス、スルドイ。 実は「カッコわ・・・」いやいや、いかにも人の良さそうな風貌で、いつもニコニコしていて、まるで愛想のいい楽器屋のおじさんみたいじゃ。 果たしてこの人にあんなスゴイ才能があるのか?って感じて、まあ「人は見かけによらない」の典型じゃな。 ファッションなんて全然興味がないみたいじゃな。
 わしは昔から思っておったが、この人がもうちょっと諸君のようにオシャレだったら人生が変わったかもしれない、と。 ロックン・ロール・ギターも抜群なんで、ナッソーでもばっちりキメれば注目度俄然アップ!なんじゃがのお〜。

 以上5つのQ&Aだけでは、ライ・クーダーの魅力を伝えるにはあまりにも不十分じゃ。 ここで、貴重な映像の力を借りるとしよう。 上記Q&Aの3,4,5に関しては、これから紹介する映像が少しばかり証明してくれるであろう。
 これらはライ・クーダーが日本のCMに出演した時の映像で、最初は1988年バーボン・ウイスキー「アーリータイム」のCM。 次に1980年カーステレオ「ロンサム・カーボーイ」のCM。 いずれも地味な演奏の曲と抑制の効いた映像じゃが、リラックス度満点!の味わい深いフィルムじゃ。

 2回続いた“癒し系”の内容もこれで終わりじゃ。 癒しを通り越して“眠り”に入られては本末転倒なんで、次回から本来のパワーで迫る予定じゃ。 しっかりTHE-KINGのニューアイテムをゲットしながら心して待つようにな!




七鉄の酔眼雑記 〜レンタル品にも敬意を!
 
  

 わしは子供の頃からどうしても趣味のブツを「借りる」という行為が苦手でな。 古くは「貸し本屋」「貸しレコード屋」、最近では様々な「レンタル・・・」ってやつじゃ。 理由はただ一つ、アーティストが心血を注いで作り上げた作品に対して、「購入する」ではなくて「借りる」という中途半端なスタンスがどうしても馴染めなかったのじゃ。 大体だな、失礼ではないか、アーティストに対して!

 しかし最近は旧譜の再発量が異常になり、欲しいブツが山のようにあるんで、さすがに財布の中身がついていかん・・・。 そこでこと映画に関してはレンタル・システムを利用せざるをえなくなった。 ネット・レンタルの「月極徳トクパック」とかいうリーズナブルなシステムによって既に500枚以上を借りておるという訳じゃ。
 いざこのシステムを利用してみて感じることは、とにかく盤に傷や指紋がついとる盤が多いことじゃ。 みなさんはどうして「感動への入口」である盤を大事に扱わないのじゃろう。 レンタルというシステムがいかにお手軽とはいえ、ブツの扱い方までいい加減でいいはずがない。 アーティストへの敬意があるならば、扱い方だって丁寧になるはずなんじゃがのお。

 そこでわしは、レンタルした作品への敬意を表す行動としてひとつの決意をしたぞ! 生メディアに録画してから、盤面のラベルを自分でデザインして作るのじゃ。 最近はフリーソフトやフリー画像がネットで簡単にダウンロード出来るから多少の手間暇をかければ、オリジナルの盤面が自宅で制作できる時代じゃ。 予算もラベルシール代1枚25〜27円程度じゃ。 手書きでタイトルを書いた味気ないメディアもこうすりゃ愛着もぐう〜んと湧くってもんじゃ。 そしてなによりも「買わずにレンタルしてしまった」というアーティストへの申し訳なさも多少は軽減されるのじゃ。
 諸君も音楽や映像をレンタルするのは構わないが、何かひとつオリジナリティな作業を付け加えることで、マテリアルを制作したアーティストに敬意を表してほしい! もちろんレンタルしたメディアそのものを大事に取り扱うことも忘れないようにな。

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