ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.49


 このコラムも次回で50回じゃな。 毎回、諸君の充実したロックライフの一助になることを念じながら、タリナイ脳みそを絞りに絞って書かせてもろうとる訳じゃ。 区切りのいい50回目に何をカマスか、まだ決めかねておるのじゃが、まずは「区切り」の前ぶれとしてだな、ちまたの情報誌やネット情報欄ではお目にかかれない(と思われる)ネタを披露しておこう。 題して「東南アジアのロック事情」じゃ。 
 “東南アジア”ときたんで拍子ぬけした諸君もいるじゃろうが、早合点するでないぞ。 諸君の大好きなロックの親玉であるブルースだって、源流は中央アフリカじゃ。 何の脈絡もないと思われることから物事の真実が見えてくることだってあるのじゃ。 年寄りのハナシは最後まで聞くようにな!
 東南アジアなんてロックとは縁もゆかりもないと思われており、ましてや筋金入りのロックファンの中で東南アジアに興味がある諸君は稀じゃろうな。 このわしもかつてはそうじゃった。 頭の中のベクトルは、アメリカとイギリスばっかりに向いておった。 それが長旅を続けるうちに東南アジアと関わりをもつようになり、その未知なる世界を体験することになったのじゃ。 ではわしがこの目で見た、肌で感じたロックと東南アジアとの関係の実体ってもんを紹介してしんぜよう。



東南アジアのロック事情
シンジラレナ〜イ!ロック後進状態に見える「ロック・ファンの原点」



 一般的に東南アジアと呼ばれるのは、タイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア、マレーシアの東シナ半島の6か国に、シンガポールとインドネシアを含めた計8ヶ国じゃ。 緯度は沖縄よりはるかに赤道寄りであり、とにかくクソ暑い! そのうち社会主義国が3ヶ国に敬虔なイスラム圏が2ヶ国。 この事実だけでも、資本主義とキリスト教に深く関与しているロックとは疎遠であることはお分かりいただけるじゃろう。

 「ロックらしき音楽」が聴けるのは、白人観光客の多い、タイとインドネシアの首都と点在する数多くのビーチリゾート、それにシンガポール。 中には白人の植民地のようなリゾートもあり、古くはベトナム戦争の帰還米兵たち、近年は数多くの白人観光客によってこれらの地にロックが運ばれてきたのじゃ。
 

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ライブハウス事情■


 白人観光客で賑わう場所には、ロックを聴かせるライブハウスが何軒もあって現地ミュージシャンが出演するんじゃが、これが語るのもカッタルイほどにレベルが低い。 日本の学園祭バンドの方が全然マシじゃ。
 そのオソマツな演奏を白人客は腹を立てることもなくニコニコしながら聞いとるんじゃな。 どうやら彼らはただの余興として聞き流しておるようじゃ。 まあホンモノのプレイは本国に帰ればいくらでも聞ける訳だし、ここら辺がロックの本場出身の余裕なんじゃろうな。
 ステージがハネた後、わしは一度だけ現地ミュージシャンに酒をおごって、「アンタら、なんでそこまでヘタクソなんじゃ?」と直球勝負に出たことがある。 しかしその返答に唖然とするばかり。 「アジアではロックのCDを出すチャンスもねえからしょーがねえだろう」。 そーいう問題ではないと思うが・・・。
 唯一の例外は、タイのパタヤ、インドネシアのバリ島にある「ハードロック・カフェ」に出演するバンド。 演奏曲目が指定された厳しいオーディションをクリアしたバンドだけが出演するのじゃ。


■ トップミュージシャンの意識 


 タイ国内で二大ロック・ギタリストと言われておる、キティとラムのご両人とわしは何度か酒を飲んだことがある。 ライブもよお行った。 特にキティはベトナム戦争の帰還米兵たちで賑わった70年代後半のバンコクでデビューした超ベテランじゃ。
 しかしキティもラムも、ロックの名曲の完全コピーしかやらないのじゃ。 ひたすら「憧れの誰それ」に成りきってプレイするだけなんじゃな。 TVインタビューでも「今度のライブでは誰それの何とかっつう名曲をやります」の一点張り。 酒の席では「オレは憧れの誰それに成りたいんだ。 ナナテツ、日本で俺をプロモートしてくれよ」ばっかし。 「コピープレイにゼニを払うほど日本人はバカじゃねーぞ、ドアホッ!」っと一括してやりたかったが、外国に行ってその国の長老に説教垂れるほどわしも非常識ではないんで、ぐっと我慢したんじゃ。
 ベテラン二人にしてこの程度の意識レベルであり、純情なのか単細胞なのか、ミュージシャンなのかモノマネ屋なのか? まったく理解に苦しむところじゃが、キティはその情熱の甲斐あって、憧れのギタリストが在籍していたバンドのヴォーカリストをヨーロッパから呼び寄せて、バンコクでジョイント・ライブを実現してしまったのじゃ! これにはわしも恐れ入った!

■ ロックファンの嗜好 ■

 東南アジアで売れるロックのアルバムは、メロディが綺麗なハードロックバンドのベスト盤、ただこれだけ。 例外はドイツのハードロック・バンド、スコーピオンズ。 このバンドだけは大手ミュージックショップに行けばオリジナル・アルバム、ライブDVDがそろっている。 「なんでまたスコーピオンズだけ?」と店員に聞くと判で押したような答えが返ってくる。 「メロディが綺麗な曲が多いから」と。
 シンガポールでは、エディ・コクランのCDが割りと売れるそうじゃ。 あの甘いマスクとノリが中華系民族の多いシンガポール人にウケがいいそうじゃ。 ただし恐い顔をしたジャケットではダメなんじゃそうじゃ。 という訳で、シンガポール人の友人がチョイスしたアルバムがこれ(←)じゃ。


■ エルヴィスだけは別格 (?!)

 ロック後進地域とはいえ、やはりエルヴィスだけは別格じゃった。 しかしそのスゴイ知名度の実体はというと・・・アメリカで一番有名とか、すごい豪邸に住んで車をたくさん持っていたとか、リーゼントヘアーがカッコイイとか・・・そんなのあり〜?ってヘナヘナと力が抜けてしまいそうじゃ。 
 こりゃあエルヴィスの真実を伝えにゃならんわい!となったわしは機会がある毎に「オメーら、エルヴィスが愛用していたタイプがこれじゃ!」つって、身につけていたTHE-KINGのナッソーとピストルパンツをちら〜と見せつけたところ、手アカが付くほど触れたもんじゃ。 この七鉄、旅先でも酒ばっかりかっくらっている訳ではないぞ。 異郷の地でもエルヴィスとTHE-KINGの普及のためにこうして骨を折っとるんじゃよ。
 ところで、タイのエルヴィスの知名度には「キング」という称号がキーになっとるんじゃ。 タイは絶対的な王制国家であり、王様は全国民の尊敬を集めており、日常的に「キング」という言葉そのものにタイ国民は異常に反応するんじゃ。 そこまで偉大なる存在である王様、キングと同じ称号ということでエルヴィスは超有名なんじゃ。
 音楽好きであり、サックスの名手でも知られている現タイ国王は、60年にアメリカを訪問した際にわざわざエルヴィスを訪ねておる。 その時のショットは「THE KING MEETS THE KING」と銘打たれて、国王の重要な公式記念写真としてタイでは有名な一枚となっておる。

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 以上、東南アジアのロック事情に諸君も少なからず驚いたじゃろうな。 でもほんの30年前ぐらいの日本だって、似たような状況だったのじゃ。 「カッコいいから」「有名だから」「メロディが綺麗だから」「ノリがいいから」で洋楽ロッカーを選択していたもんじゃ。 それがロック・ファンの原点ってことには変わりはない。
 ただし現代の東南アジアと30年前の日本とのロック環境の違いは、ロックをきちんと紹介するメディアが東南アジアには皆無ってことじゃ。 インターネットの利用頻度もまだ低く、これではファンの気質は進化しないもんじゃが、東南アジアの数少ないロックファンはそんなことには無頓着で、知り得る情報量だけで十分に楽しんでおる。 

 情報の洪水と化した現代の日本のロック・マーケット状況に右往左往しておるわしのような人間からすれば、東南アジアのロックファンのシンプルさ、純情さは懐かしいような、眩しいような、それでいて可哀そうなような複雑な心境にさせてくれるのじゃ。
 果たして東南アジアにロック・ミュージックの真の夜明けはくるのじゃろうか。 老婆心ながら、彼らのロックライフの行く末を見守っていきたい次第じゃ。


余録:トッテオキ(?)情報
●マトモなロックのハナシをしたいトキは・・・

 東南アジアの観光地には、オープンエアーのバーがぎょうさんある。 このスタイルは白人が大好きなので、当然ロックがBGMになっとる場合が多い。 ここに行くとだな、酒のお相手をしてくれるオネエ様方がたくさんおる。 ホステスとかキャバ嬢なんつうシャレたもんじゃない。 私服姿で「ハァ〜イ!」って感じでにじり寄ってきよる。 ナッソーを羽織っとれば、たちまち両手に大輪の花ってとこじゃ!
 そして中には現地案内という名目で一定期間お付き合い下さるツワモノのオネエ様もおり、ロックをよく知っているモンにも時々出くわすんじゃな。 白人相手の会話に困らんようにオベンキョーしとるんじゃ。 エライ! まあそのうちの何人かは白人ではのうて、このわしがロックを叩き込んだのじゃ。 東南アジアに迷い込んでしまい、ロック談義に飢えたらオープン・バーへ行け!




七鉄の酔眼雑記   

 いやはや、オドロキモモノキ、と言うべきか。 前回の原稿で、「七鉄を鍛え上げた幻のロック名著」と題して、今や絶版となってプレミアが付き始めたロックの名著をご紹介したのじゃが、アップされてから2〜3日後にそのうちの2冊、「ローリングストーン・レコードガイド」がamazonに、「ミステリートレイン」がヤフオクに登場してしまったのじゃ!
 単なる偶然にしちゃあ、あまりにもドンピシャのタイミング。 THE-KINGのHPの閲覧者の中に親切な方がおって、「七鉄殿、どうぞっ!」ってことではあるまいな!(笑)
 「ローリングストーン・レコードガイド」の方はビミョーにタカビーな値段設定であり、これは冊子の値付けプロの仕業じゃ。 THE-KINGのファン、もしくはHP閲覧者だったら、もっと気前のいい値段を付けてわしを喜ばせてくれるはずじゃ!ってことで購入をまだ控えておる。
 ちなみに「ミステリートレイン」の方は運良く適正価格で落札できたので、久しぶりにあの重厚な内容と現在格闘中じゃ。 まだ読んだことのない諸君、待っておれ。 そのうちにわしが解り易〜く紹介してしんぜよう!

 ロック関連以外でも再入手を望んでおるブツがぎょうさんあるわしは、ネット上の「ほしい物リスト」にもらさず登録しておるんじゃが、上記の2点以外にも、ほぼ同時期にいくつかが網にかかった! しかしこれまたすべてビミョーな値段設定に悩むことひとしきり・・・・。 後先を考えずに、少々高価であっても欲しいブツは迷わずに買っていた若かりし頃の無謀さが懐かしいもんじゃ。

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