NANATETSU ROCK FIREBALL COLUME Vol.310



2014年の当コラム第188回からスタートさせた「云10年前のロック」シリーズ。 わしがロックの色んな新作アルバムを買いまくり、聞きまくっておった1990年までの年毎のアルバム・ベスト10(年によってイギリス勢、アメリカ勢に分別)を紹介してきた。 50、45、40、30年前(年によっては25年前もあり)を5年続けたんで、気が付いたらもう紹介する年がほとんど無くなっておった。 残るは80〜83、90年の5年だけ。これを今年中に全部やってしまうことにした!

 まずは1980年。 ロックのニュースで思い出されるのは12月8日のジョン・レノン射殺事件。 年も押し迫った頃に起きたこの事件によって、それ以外は何もなかったような印象になってしまった1980年のロックじゃが、実は後に1980年代のシーンに長く君臨する優れた新人ロッカー、新人バンドがたくさんデビューしておるんじゃ。 明らかにロックに新しい時代が訪れようとしていた。 そんな流れに刺激されたように、ジョン・レノンは前月に約4年ぶりの新作『ダブル・ファンタジー』を発表して、さあ再出発だ!と意気込んでいた矢先の悲劇じゃった。
 
 ちなみにわしが聴いてみて印象に残った新人さんは、エコー&ザ・バニーメン、U2、プリテンダース、ランディ―・ローズ(オジー・オズボーン・バンド)、アイアン・メイデン、サイケデリック・ファーズ、X(日本のバンドではないぞ)、バウハウスなんかじゃ。

 ロックシーンにおける1980年は、まずはジョン・レノン没年として永遠にクローズアップされるじゃろうが、パンク・ブーム真っ只中にエルヴィスが亡くなった様に、ジョン・レノンの人生のラストイヤーに素晴らしい新人が数多くデビューし、素晴らしいロックアルバムが量産されたことは、ロックという音楽特有の「美しい因縁」だったのじゃろうか。
 まあ「しょうもない作品しか発表されなかった年にジョンが・・・」では案外ジョンも浮かばれないじゃろう! では新人さんの優れたアルバムも多少交えながら、1980年のロックアルバムを振り返ってみたい。
(右写真は、1980年にメジャーデビューしてシーンを騒然とさせたギタリスト、ランディ・ローズ)



2019年ロック回想録A 39年前/1980年のロック
ジョン・レノン落命。それでも世界は、ロックは周り続ける!



1 超一流どころが
真剣に遊んでおる!
2 レッド・ツェッペリンに捧ぐ!?
シャドウズ・アンド・ライト/ジョニ・ミッチェル   ■ゼア・アンド・バック/ジェフ・ベック■
 久方ぶりスリリングなライブ盤が出た!とコーフンしたもんじゃ。 カナダの不思議なアバンギャルド・シンガーであるジョニが、当時傾倒していた大幅なジャズ・フュージョン的アプローチをジャズ界の巨人ジャコ・パストリアス(ベース)と超人気ギタリストのパット・メセニーの全面サポートを受けて実演したライブツアーを収録したものじゃ。 前年に亡くなった巨匠チャールス・ミンガスへの追悼の意の強いアルバムでもある。
 ジョニのベストソング的な選曲がなされており、ロックファンにも有名な楽曲、特にCSN&Yに提供した「ウッドストック」まで収録されておる。 異色の曲はミンガス作の「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」。 ジェフ・ベックもインストアルバムで取り上げた曲であり、ジョニは自作の歌詞をつけて磨き直しておる。

 ジョニの名曲の数々がジャズ・フュージョン的に、更に超一流のバックメンバーによって演奏されておるんじゃから文句のつけようがない。  元々はフォークシンガーのジョニじゃが、音階の高部から底部まで自在に歌い巡る独特のセンスと歌唱力にもはや音楽の垣根などはない。 ジャコ・パストリアスのベースもスゴイがジョニのボーカルはもっとスゴイ! またさしもの人気ギタリストのパット・メセニーもジョニとジャコとの非数学的な掛け合いにフレーズを入れるタイミングを明らかに逸しておるパートも逆に迫力満点で(良い意味で)身の毛がよだつわい!
 この超一流プロジェクトのライブも、ジョニにとってみればひとつの遊び心に過ぎないのではないか!と思わせるほど彼女は余裕しゃくしゃ!


      ギターインスト2作の成功によって、「フュージョン・ロック」なる似つかわしくないジャンルの名手に奉られていたジェフ・ベック。 前作より4年ぶりに登場した本作は、今もあまり話題に上ることがないが、わしにとっては名盤! 依然としてギターインスト・アルバムじゃけど、俄然ロック色が強くなって本来のジェフのギター・ダイナミズムが蘇っておる。 フュージョン的アプローチも悪くはねえけど、やっぱりジェフはロックギターじゃ。
 弾きたい願望を抑えて、欠落部分をシンセに任せたコラボなんつうのは、この人本来のスタイルじゃねー! それにフュージョンっつうたら、ちょっとオシャレ感覚で聞く音楽であり、ジェフがそんなのやるなんて一時の気の迷いであってほしかったから、本作でのロック回帰は喜ばしい!

 なんでジェフはロックに回帰したのか。 恐らく朋友ジミー・ペイジ率いるレッド・ツェッペリンの解散へのトリビュートだったんじゃなかろうか? だって、ツェッペリン・サウンドのフォーマットを作ったのは、ジェフがかつて結成したジェフ・ベック・グループじゃもんな。 だったらそん時のボーカル、ロッド・スチュワートに1曲歌わせても、なんて思っておったが、そんなわしの妄想は5年後の次作で実現したもんじゃ!
 ベースはモ・フォスター、ドラムはサイモン・フィリップ、いずれも一流のセッションミュージシャンじゃが、ジェフの相棒ヤン・ハンマー(シンセ)の影が薄くなるようなハードなプレイを展開。 フォスターもフィリップスも本コラム「5」/「神」でのメンバーでもあり、超一流ギタリストのサポーターとしてはホント絶品!のプレイをしておる。



3 史上最高のギターエンジェルが残した僅かな遺産
  4 1980年ボウイの旅
■ブリザード・オブ・オズ/オジー・オズボーン■    ■スケアリー・モンスターズ
     /デヴィッド・ボウイ■
 掲載が恥ずかしい様なお笑いジャケじゃが、80年代の新しいハードロック時代を象徴する名盤じゃ!
 ブラック・サバス時代からオジーには感心はなかったものの、わしは本作のランディ・ローズのギターにノックアウトされてしもうた。
 クラシックの音階と旋律をものの見事にハードロックに変換して弾きまくるランディのプレイを、まるで10代のギター少年の様に胸を躍らせて聞きまくったもんじゃ。 ランディとエディ・ヴァン・ヘイレンの2人はそれまでのロックギターの教則本を完全に書き換えてしまったような衝撃的な存在じゃったよ。

 ランディ以外の3人のメンバーはいずれも元ビッグバンド出身者であり、このプロジェクトはスーパーバンドじゃ。 しかしそんな事は殆ど話題にならないほど世界中のハードロックファンは本作でランディ一人に魅了されたはずじゃ。
 聞くモンがギターを弾けようが弾けまいが関係ない! 音階を華麗に昇降しながら腰が抜けるような美旋律をかまし続けるランディのギター、ギタープレイ自体にこんなに興奮させられたのはジミ・ヘンドリックス以来じゃった。
 しかもランディの素晴らしさはリードギターだけじゃない。 リフも美しくて転調も完璧じゃ。 ハードロックを聞いていてここまで崇高な感動を与えくれるお人はいなかったな!
 本作発表から僅か1年半後にランディは飛行機事故で他界。ロックギターに新境地を示唆するためだけに生まれてきたようなギタリストじゃったわい。


     優れたロッカーは自分の歩む先が分かる。 更に優れたロッカーは、歩む先を見据えながら過去のイメージや方法論を一度ぶっ壊してみせる。 そして本当に優れたロッカーは、歩む先で新しい成功を手にしてみせる!
 さしずめ当時のボウイは「更にすぐれたロッカー」の段階にあり、大ヒット曲「スペース・オディティ」に登場する自分自身を投影したキャラ(トム大佐)、グラムロックの大スター、ベルリンでの環境音楽的アーティストといった過去を一新するために当アルバムとそれに付随するシングルの製作活動をアグレッシブに行っておった。
 
 シングルでは「スペース・オディティ」他1曲の再録音、日本をイメージした「クリスタル・ジャパン」の製作、異種キャラと思えたブルース・スプリングスティーンやドアーズの素晴らしいカバー等様々あり、当アルバムでは、パンクとニューウェイブ的アプローチで自ら形成していたベルリン環境音楽を破壊したり、「スペース・オディティ」のキャラを嘲笑ったり、日本人女性の不気味な日本語ナレーションをサウンドの衝撃に使ったり、やりたい放題で痛快極まりない。 メロディ、リズム、アレンジといった次元を超越して暴れまくっておる印象が強い。
 あきらかに自分自身をぶっ壊して、新しい境地へ歩み出そうとするポジティブ・バイブレーションの嵐! しかし、ボウイがその先に見据えていた地点がアメリカン・ダンス・ワールドの『レッツ・ダンス』(次作)だったとはなあ・・・。

5 メロディアスな
 ヘヴィ・ロックの経典
6 70年代は終わった
神(帰ってきたフライング・アロウ)
    /マイケル・シェンカー・バンド■
 
  エモーショナル・レスキュー
    /ローリング・ストーンズ■
 当時の代表的ギターヒーロー、マイケル・シェンカーのソロプロジェクトのデビュー作。
 以前在籍していたUFOでは、バンド内での力量がマイケル一人飛びぬけていたが、本作では一流のバックバンドがマイケルをサポート。 リズムセクションやキーボードはセッション・メンバーじゃが彼らの奮闘ぶりは素晴らしく、特にドラマーのサイモン・フィリップスが凄まじい!
 バックの大活躍により、ファンを魅了するマイケル特有の美旋律がよりスケール・アップされており、大地に腰を据えてじっくりと聞かせるようなフレーズが怒涛のように押し寄せて来るのじゃ。

 個人的な思い出として、当時のFEN(在日米軍向けラジオ放送)の深夜プログラムから、池袋の深夜喫茶や渋谷の場末のストリップ劇場まで、様々な夜の場面で偶然に耳にする機会が多かった。 「ついにマイケル・シェンカー時代が到来したんじゃな!」って早合点したもんじゃ。
 本作の高い評価によってマイケルは本格的にパーマネント・メンバーを探し続けることになるが、他人を見る目がないというか、リーダーシップが無いというか、人選ミスが続いて長らく音楽的に右往左往してしまっただけに、本作の完成度は彼のキャリアの中でも際立っておる。(唯一、ボーカリストが下手くそじゃけど)
 他人の用意した枠の中に納まりきれないのが天才じゃが、マイケルの場合は本作のみその巨大な才能の相当なヴォルテージが奇跡的にパッケージされておる!

     前作『女たち』と次作『刺青の男』(いずれも名盤)とに挟まれておる関係か影の薄い作品じゃけど、タイトル曲に代表される80年代的にアタックの効いたクリアなリズムの楽曲が多く、ストーンズ(というかミック・ジャガー)の時代を読むセンスが先行した出来栄えじゃ。 
 当時のわしの音楽的嗜好は60年代末期から70年代初期のスタイルから抜け出せなかったが、本作を聞いて「あぁ、時代が変わったんじゃな」ってストーンズの変身と時代の移り変わりを素直に認めることが出来た! 

 レゲエやダブ(レゲエをスタジオワークで別もんに作り変えた音楽)の影響を受けた曲が多く、しかも実験レベルで終わっておるんで、ストーンズのロックンロールとイマイチ合体していないのは確か。 タイトル曲は大ヒットしたが、ミックがファルセットで歌う異例のシングル曲であり、上手い具合にお茶を濁したな!ってところで、“何をやろうと結局はストーンズ”という凄みがないこともまた確か(笑) でも時代の変化に立ち向かったことで、ストーンズは80年代に向けてエンジンがかかり、新しいロックンロール・デーモンとして君臨するきっかけになった作品であることもまた確かじゃ!
 気のせいか、やたらとキースの“不真面目な”ギターが聴覚に引っかかる。 当時ヤク中だったキースの生存確認以上の価値は無い演奏じゃが、このギタートーンが後のライブで全面的に押し出されていってファンを驚喜させることになる!


7 “玉を持った”姉御ロッカー
    8 ドアーズと全然違うじゃねーか!
■ プリテンダース・ファースト ■  ■クロコダイル
  /エコー・アンド・ザ・バニーメン ■
 ロック史に残る姉御ロッカー、クリッシー・ハイド率いるプリテンダースのデビュー作。 シングル3曲が立て続けにヒットしただけに(1曲はキンクスのカバー)迷うことなくアルバムを買ったもんじゃが、改めて聞き直すと、殊更個性的でも新しいポップロックでもない。 彼女たちは60年代のマージ―ビートの流れを汲む正統的なブリティッシュ・ポップ・バンドだったのじゃ。 そこに女キース・リチャードと称されたクリッシーの個性が見事に相まって人気が爆発したようじゃった。
 クリッシーは全然美人でもなくセクシーでもないが、男どもを引き連れてロックバンドをやる逞しい女性の象徴であり、男女両方のファンから指示されたのじゃ。 やっぱりロックって、やる側のパーソナリティが大きく人気に影響するもんじゃ。 しかしクリッシーが好きって、イギリスの男はマザコンが多いんじゃろうなあ〜なんて思った(笑)

 ヒットした3曲はクリッシーの多面的な声質がそれぞれに発揮されておる。 「トーク・オブ・タウン」は女性DJ的、「ブラス・イン・ポケット」は年上の恋人的、「ストップ・ユア・ソビン」はお母さん風(笑) 「あっはん、うっふん」だけは無いだけに、それもまた好感度アップなんじゃろうな!
 じゃあバックの男3人は何をやっとるのかというと、もうクリッシーの作詞作曲、歌、リズムギターの才能にあっさり降参して(笑)、ひたすら彼女を涼やかにサポート。 なんかバックバンドというよりも、舞台の照明係みたいな役割を果たしておる。
 なおコピーの“玉を持った”ってのは、マドンナの有名なクリッシー賛美。 「クリッシーは女だってロック界で生きていけるって証明してくれたわ。彼女は玉を持っているのよ!」

     エコバニ(彼らの略称)のデビュー作。 わしは聞く前にレコードの帯のコピーにヤラレテ買ったわい。 「ジム・モリソンの聖域に立ち入ることを許された男たち」とか何とか。
 あのコピー書いたヤツ出てきやがれ! コイツらの何処かジムやドアーズの同類なんじゃ!! いや、これはエコバニを非難しとるんじゃない。 ボーカルのイアンはジム・モリソンよりももっと正統的で真面目な文学青年じゃ。 ロックバンドやってたって、日が暮れればママの作る夕食を食べにお家に帰っていたはずじゃ(笑) 夕食後は紅茶を飲みながらオベンキョーか読書するタイプじゃよ。
 ジムなんてのは、狂人的な大酒飲みで自分勝手なブルースマン的家出青年であり、読書じゃなくて本を“丸呑み”しちゃって得体の知れないエネルギーを創出するバケモンじゃよ、あれは。

 ウィル・サージェントが弾くダークで多少ヒステリックなギターサウンドはネオサイケっぽいが、深層はクリアで抑制の効いたポップ感覚も兼ね備えておる。 そこにイアンのトーンの若干低いボーカルと内省的な歌詞が絡みついてくるんで、エコバニはシンプルなネオ・プログレといった風情が特徴じゃ。 サウンドの感触としては、ドアーズではなくて、ベルベット・アンダーグランドに近い。
 恐らくプロデューサーは彼らの個性に大衆性を加味させるのに苦労したことじゃろうが、本作ではその苦労をあえてクリアせずに彼らの手作りサウンドをまずは全面に押し出しておるので、とても純度の高い個性的なロックに聞こえてくる!
 同時期にデビューしたU2とよくライバル同士と言われておったが、エコバニのテーマはピュアな精神性、U2のテーマは人類平等の政治性。これじゃあ勝負にもならんけど、わしは断然エコバニ応援派じゃった。
 

9 ロンドン裏街エレジー     10 危険じゃないけど、
居てほしいR&R彼女!
■ソロ・イン・ソーホー/フィル・ライノット■  ■危険な恋人/パット・ベネター■
 アイリッシュ・ロッカーのヒーロ―といえば、60年代はヴァン・モリソンであり、80年代以降はボノ(U2)じゃが、70年代はこのお方じゃ。 シン・リジーのボーカリスト&ベーシストであり、アイリッシュ・トラッド風味の独特のメロディを書ける優れたソングライターでもあった。
 シン・リジーは70年代後半に入ると徐々にハードロック色を強めていったが、その人気が世界的に広がった70年代末期に製作された初のソロアルバムでは、ハードロック色を完全に拒絶して、自らのルーツ音楽に80年代を踏襲するであろう様々な音楽要素を巧み組み込んだなかなか手の込んだ作品じゃった。

 「(ロンドンの裏街)ソーホーに独り佇む」といったタイトル通り、そこにうごめく人々の心情や信念、また彼らを魅了する様々な流行を通して1980年代を予測するといったテーマが作品のモチーフになっておるようじゃ。 決して既にヒーローとなった者の“上から目線”ではない。 フィル自身がイギリス国外者であることも念頭に置きながら、ソーホーに迷い込んだストレンジャー的視点をも織り交ぜながらほのぼのと展開していく優しいストリート・ロックじゃ。 同時期のハードロック化したシン・リジーからは想像も出来ない仕上がりじゃが、これがフィル本来の持ち味なのじゃ。
 ダイアーストレイツのマーク・ノップラー、ヒューイ・ルイス等の意外なメンバーがゲスト出演しており、フィルの描くソーホー・ストーリーを抑制の効いたエモーショナル・プレイで色付けしている。 

     活きのいい女性ロッカーも一発入れておこう! パット・ベネターは80年代を代表する女性ロック・シンガーじゃ。 本作はセカンドに当たり、この頃から日本でも人気に火が付いたと記憶しとる。 まだマドンナとかシンディー・ローパなどの超個性的女性シンガーが登場する前であり、力強さとしなやかさを併せ持ったロックな歌唱力で勝負する正統派シンガーじゃ。
 ルックスは何の変哲もないその辺のアメリカのおネエチャンじゃが(笑)、イギリス勢を中心とした奇抜な才女&不思議ちゃんブームがピークを迎えていた当時としては逆にパット嬢のキャラは新鮮じゃったんじゃろうな。(まあわしはパット嬢のルックスはどうでも良かったが)

 わしは本作からシングルカットされたラスカルズのカバー「ユー・ベター・ラン」に驚いてしまった。 これはパワー・シンガーでなければ絶対に歌いこなせない曲であり、更にメロディーがめまぐるしく昇降するケイト・ブッシュの「嵐が丘」のカバーまでやっておったんで、レコード会社さんは純粋にパット嬢の歌唱力に賭けておったんじゃろうな。
 バックは名うてのスタジオミュージシャンじゃったらしいが、流行のテクノやレゲエなんかの余計な装飾は一切なく、ライトなハードロック一歩槍の演奏でありパット嬢との相性も抜群! 本作によってその魅力が全米に轟き始めたパット嬢に付けられたキャッチフレーズは「アメリカの大学生が恋人にしたい女性No.1!」 う〜ん、分かる気がしたわい!
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 その他、選モレしたアルバムは、
『ザ・リバー/ブルース・スプリングスティーン』
『フレッシュ・アンド・ブラッド/ロキシー・ミュージック』
『フール・フォー・ユア・ラビング/ホワイト・スネイク』
『ボーイ/U2』(右写真)
『サイケデリック・ファーズ・ファースト』

『ロサンゼルス/X』
『魔物語/ケイト・ブッシュ』
『ザ・ゲーム/クイーン』
『ピーター・ゲイブリエルIII』
『パノラマ/カーズ』

『鋼鉄の処女/アイアン・メイデン』
『24キャロット/アル・スチュワート』
『イーグルス・ライブ』
『フリートウッド・マック・ライブ』
『ダブル・ファンタジー/ジョン・レノン&ヨーコ・オノ』 等。

『ダブル・ファンタジー』がベスト10に入らなかったのは、ジョン&ヨーコのダブル名義であり、収録曲の半分はヨーコさんの作品とボーカルだからじゃ。
 ヨーコさんの音楽家としてのセンスは未だにわしはよくわかんないので、いつもジョンの曲だけを聞いておる変則的な扱いになっとる作品じゃ。 ということでベスト10からは漏れてしもうた。
 ご参考までに、1曲ジョンの名曲「クリーンアップ・タイム」を紹介しておこう。 「もう敗戦処理の請求書はうんざりだ。世の中のバケモノどもに掃除の仕方を教えてやろう!」という往年のレノン節が炸裂! このフレーズは、当時好みの女の子に自分を印象付けるためによく使った!(爆)結果?ケッコーうまくいったもんじゃった!

 なお同じく選モレしたブルース・スプリングスティーンじゃが、ジョンが亡くなった日の夜に偶然ライブをやっており、ライブ中にジョンの悲報が届くとブルースはそれを観客に伝達。 そして「ジョン・レノンがいなかったらロックンロールは死滅していたかもしれないし、君たちだってこの場にいなかったかもしれない。 みんなでジョン・レノンに感謝しよう!」と叫んで、深夜までライブを続けたらしい。 サイコーの追悼パフォーマンスじゃ。 知ったかこいて善人ぶって「イマジン」の合唱を観客に促すよりもロックンローラーとして遥かに美しい姿勢じゃよな!

●余談●(ジョン・レノン落命日当日の若き七鉄)
 正直なところ、わし自身はジョンが突然亡くなってしもうたことに対してどう対応してよいのか分からなくて茫然としてしもうた。 エルヴィス、ジム・モリソンと並んでわしの人生を変えてくれたお人なので、ショックがデカ過ぎでアタマと身体が膠着してしまったんじゃ。
 誰かとジョン・レノン談義をする気も起きない。 外に飲みに出かけたって、ジョンのジョの字も知らない酔っぱらいと同じ空間にいるのが嫌になることは分かり切っておる。 外出先から自宅に戻り、不思議とロックに理解のあったお袋に「今日ジョン・レノンが殺されたんだ」とだけ告げて部屋に閉じこもったもんじゃ。 音楽を聴く気もしない、酒を飲む気にもならない、誰とも話したくない、そんなどうしていいのか分からない自分自身に疲れてきてから、ようやくアタマが正常になった。
 「ジョンが亡くなっても世界もロックも周り続ける。 だから俺も周り続けないといけない」って思って、遺作となった『ダブル・ファンタジー』を聞いてみたら1曲目の「スターティング・オバ―」で涙が出たもんじゃ。 でも、何だかちょっとだけ大人になった気がしたな。
 そしてひとつ決意した。 これから起こるであろう「ジョン・レノン・ブーム」には一切背を向けようと!文化人ヅラした野郎どもがエラソーにジョン・レノン論を語り出し、アホな世間どもがそれに同調してにわかレノン・ファンが急増する、そんなブームとだけは絶対に無縁でいようと決めたんじゃ。 それからは、この年に体験した優秀なルーキー・ロッカー、優秀なロックアルバムと再び向かい合うことが出来たような気がするわい。




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