NANATETSU ROCK FIREBALL COLUM Vol.304


  うむ、平成最後の年末年始が近づいてきたな。 こういう時期に相応しいテーマを考えてみたんじゃが、平成が終わるというよりも昭和が益々遥か彼方になっていくという気分であり、遠くを見つめる瞳がますます虚ろになっていくようじゃ(笑) 「後ろどころか、前の方もますます見えなくなってきてんじゃねーのか!」って笑ったな、そこのキミ! なあ~に、例え両目が潰れても心の中の目でThe-Kingの輝かしい行く末を思い描き続け、点字でも原稿を書き続けるから余計な心配はせんようにな(笑)
 って被害妄想も酷くなってきたから(笑)、ここはひとつクソジジイぶりを発揮して思い切り昭和に戻ってみよう、じゃなくて、どんなに時代が変わっても音楽ファンとして失いたくない思い出ってのを考えてみた。 それは、昭和から音楽ファンをやっとる連中ならば誰しもが、「ラジオによる感動」がそのひとつじゃろうな。

 わしら昭和世代は、音楽情報のすべてはラジオからだったよのお~。 
「この歌を唄っているのは一体どんなヤツなんじゃろう」
「どこら辺で作られた曲なんじゃろう」
「英語はわかんねーが、どんな事を歌っておるんじゃろう」
「このギター、ひょっとして〇〇なんじゃないか?」
ラジオから聞こえてくる音楽ってのに、限りない想像を膨らませていたのが昭和の音楽ファンじゃ。

 日本人だって欧米人だって同じであり、我らが愛するロッカー、ミュージシャンもみんな、音楽が心身の奥深くまで沁み込んでいったのはラジオという存在があったからこそじゃ! だからラジオを讃える、ラジオに物申したロックは実に多い。 例え「ふざけたこと放送してんじゃねーよ」「ツマンネー曲ばっか流してんじゃねーぞ」ってラジオをののしったとしても、その心理の根底にはラジオへの限りない愛と熱い期待があるのじゃ。
 わしらが夢中になったロッカーたちは、果たしてラジオへ向けてどんな気持ちを曲に込めて歌っておったんじゃろうか。 その辺をあらためて見つめ直しながら、タイトルにラジオが付くナンバー「ロック・ラジオ名曲セレクト」をやってみたい。 ラジオを聞く感覚で、気楽に読み流してくれたまえ!

 なお曲の紹介順に関しては、ほとんど思い出した順なんで深い意味はありませんぞ。 you tube画像のリンクを張り付けておくので、一曲一曲で気分が完結するように別個に楽しんでくれ!



平成の終わりに寄せて~昭和まで振り返ってしまうぞ! Vol. 1(?) 
神が創りしラジオ!ラジオを讃え、ラジオへ物申したロックナンバー15選!

♪~レディオアクティブ/ファーム(1985年)
 ジミー・ペイジとポール・ロジャーズが結成したスーパーバンドのシングル曲。 MTV時代に“ラジオなんたら”なんて、流行に逆行した70年代のロッカーらしいなあと(笑) でも“Radioactive”って“放射能”って意味の様で、“じわじわと浸透していく”ってニュアンスとラジオの影響力をひっかけたタイトルの様ですわい。 70年代ロックの重鎮お二人が声高にラジオ全盛時代を美化するんではなくて、かる~く懐かしんでおる様な曲でもあり、作曲者ポールの隠れた佳作曲じゃ

♪~オン・ザ・ラジオ/ドナ・サマー(1980年)
 イメージとしては、70年代後半は洋楽系ラジオ番組を一時間つけっぱなしにすると、必ずドナ・サマーが流れてくるってぐらい、もう嫌になるほどあのセクシーボイスを聞かされた。 この曲に関してはそれほどセクシー路線ではなかったから聞きやすく、ドナ・サマーの歌の上手さを聞くことが出来るナンバーとして記憶が強いな。 ラジオのDJが読んだ「書き手、あて先匿名のラブレター」を挟んで女の元カレへの思いが歌われるナンバーで、なかなかシナリオ上手! ドナ・サマーをディスコクイーンとしか認識していなかっただけに、そのセンスと歌唱力に脱帽したわい。

♪~キャピタル・ラジオ・ワン/クラッシュ(1977年)
 ブリティッシュ・パンクが苦手だったわしが数少ない好きなパンク曲かもしれない。 クラッシュ特有の意図的なチープなアンサンブル・・・まあそれはいいとして、真実を語らない公共放送機関への攻撃曲じゃ。 「オマエラがクソみたいなニュースしか放送しないから、俺たちは追い詰められていくんだ!」って実にブリティッシュ・パンクらしい叫びじゃな。 この曲、実は半放送禁止みたいにされてシングル盤もプレス中止になったかと。 1979年にパワーアップしたニュー・ヴァージョンがベストシングル曲集に収録されとったはずじゃ!

♪~ラジオ・ラジオ/エルヴィス・コステロ(1978年)
 もう1曲、ブリティッシュ・パンクの“ラジオな名曲”! この曲は基本的にはラジオの存在を大いに讃えてみんなラジオ大好き!って感じなんじゃけど、ラジオ局のビジネス化、今でいうスポンサーとの癒着状態によってツマンネー放送しかしなくなったラジオ局への反抗曲ってとこか。 まあ50年代には超人気DJのアラン・フリードの「ぺイオラ事件」(レコード会社からの“おまんじゅう”によって選曲が決まっていたかも!?事件)があったが、アラン・フリードはスゴイセンスをしていたからロックファンからは好意的に讃えられておるが、70年中期のラジオ局の実態はハナシニナンネーほど酷かったってことなんじゃろうな。

♪~思い出のロックンロール・ラジオ/ラモーンズ(1980年)
 50~60年代の有名なラジオDJ、テレビ司会者の名前が次々と飛び出してくる、まさに当時のラジオ全盛時代に万歳!を繰り返す1曲じゃ。 ちょっとアレンジが騒々しいけど、プロデューサーの名前を見て納得。 あのウォール・サウンドのフィル・スペクターじゃった。 この人のお仕事にもピッタリの曲じゃ。 ロックンロール全盛時代万歳!だけではのうて、ラストには「70年代でロックは終わってしまったんだ」ってなフレーズがあり、それを言ってしまっちゃあオシマイなんじゃけど・・・。

♪~神の創りしラジオ/ビーチ・ボーイズ(2012年)
「That's why god made the radio)」とは晴らしいタイトルじゃ! だから今回のコラムのタイトルに引用したんじゃけどな。 永遠にアメリカン・フィフティーズ、シックスティーズ、ウエストコースト、ビーチエリア・カルチャーを歌い続けることを宿命づけられておるビーチボーイズが、その偉大な歴史に新たなる1ページを加えた名曲じゃな。 衰えることの無い往年のコーラスワークで、ラジオが人々に与えた幸せの時の数々を高らかに表現しておる。 天邪鬼でツッパリのわしも、こーいう美し過ぎる懐古主義には涙せざるをえない(笑)

♪~ラジオ・フレンドリー・ユニット・シフター/ニルヴァーナ(1993年)
 “フレンドリー”ってなタイトルとは裏腹に、ラジオではオンエアされにくいアイロニカルなグランジロックの代表的ノイジー・ロック! 歌詞の中には一度も“ラジオ”というフレーズは出てこないんで、まあカート・コベインの作風から判断すると、クソみたいな曲ばかり流すラジオ局を一般社会になぞらえておるんじゃろうな。
 「たった一回使ったらもうぶち壊す 略奪行為の来襲 ある国の後産 何にでも合う鍵が無きゃ生きてけない」「憎め、敵を憎め 救え、友を救え 探せ、居場所を探せ 語れ、真実を語れ」
って、ラジオでは決して聞けない曲(歌詞)じゃのお~なんてシビレテいた四半世紀前の自分の若さが懐かしいわい!

♪~恋するラジオ/ジョニ・ミッチェル(1973年)
 邦題はちょっとダセーんで原題がYou turn me on I'm a radioであることをご紹介しておこう。 Turn onってのは「ラジオのチューニングを合わせる」「女をその気にさせる」のダブルミーニングじゃろう。 才媛ジョニ・ミッチェルにしちゃあアリキタリの比喩じゃけど、チューニングすればいつでも私の好きな曲が聞けるラジオ、私の愛する人そのものだわっていうポピュラーなテーマによって、彼女の初の全米トップ40入りヒット曲になった。 才媛でさえも、ラジオを讃える、ラジオを愛する、昔はそんな時代だったのじゃ!

♪~ラジオ・ウェイブス/ロジャー・ウォーターズ(1987年)
 最初聞いた時は、新進の若手アメリカン・バンドだと勘違い(笑) ピンク・フロイドのロジャーって冗談だろう!って、まあこれがプログレバンドでありながらアメリカでもウケタピンク・フロイド、ロジャー・ウォータースの隠し技公開!ってトコか。 相変わらず歌詞は皮肉いっぱいのようじゃが、ウエスコーストのラジオ局でも好意的に取り扱われるような配慮がサウンドの随所に埋め込まれておる。 まあこのいかにもアメリカン80s的ノリがロジャーの本音と思ったら大間違いじゃけど、ええんじゃないか、偉大なるブリティッシュロッカーの遊び心として!


♪~ラジオスターの悲劇/バグルス(1978年)
 “ラジオな名曲”セレクションが行われれば、必ずランキング上位に位置づけされる名曲。ご存知の通り、ビデオの出現によってラジオのDJたち(ラジオスター)たちがどんどん窮地においやられる時代の流れを嘆いた曲であり、そりゃもうラジオ局自体、DJ自体に当然のごとく絶賛されまくって1977~1978年頃はそれこそうんざりするぐらいオンエアされた曲じゃ。 「ビデオーキル・レディオスター」のコーラスリピート、「アーワッアゥワッ!」という合いの手、いずれもかわゆい声の女性コーラス隊のお仕事が今も耳に残っておる! バグルスはヴォーカルのトレバーとキーボードのジェフリーのコンビ・バンドであり、この曲一発で終わったものの、後に2人もプログレ系の人気バンドの主要メンバーとなって80年代を駆け抜けたもんじゃった。

♪~ラジオ・ガ・ガ/クイーン(1983年)
 クイーンのロックンロール・ドラマー、ロジャー・テイラーが書いた超ポップでノスタルジックな大ヒット曲。 ロジャーのご子息(赤ちゃん)が、ラジオを「ガ~ガ~グゥ~グゥ~」と呼んでいたことからこのタイトルになったそう。 (赤ちゃんだって大好きなラジオ)まだまだラジオのことを愛している人はいるんだ!という歌詞と美しいメロディに世界中が酔いしれた。 ライブ・エイドでも演奏され、同フェスの出演バンドの中で「6曲演奏」という特別扱いじゃったクイーンのステージ中でも、もっとも盛り上がったのがこの曲じゃった。

♪~デビルズ・ラジオ/ジョージ・ハリスン(1987年)
 ジョージ最後の名盤『クラウドナイン』収録の1曲。 軽快なポップソングで昼間のドライブに最適なノリなんじゃけど、歌詞の内容が結構辛辣。 ラジオを利用してゴシップを流しまくる質の悪いジャーナリストたちを歌っておると解釈してよろしいかのお。 ♪~ヤツラはゴシップと見るや、獲物を狙って急降下するハゲタカみたいだ。 それも真昼間からアーデモナイ、コーデモナイってご苦労なこった~♪(大意)。 これにもうひとひねり加えるとジョン・レノン級のシニカルな~って止めておこう(笑) コイツをポップソングに仕上げるのがジョージの個性でアリマシタ。

♪~ラジオ/ビヨンセ(2008年)
 わしが現在おるバンコクの外国人居住地域の白人さん用バーでやたらと流されておるんで、もう耳にこびりついてしまった1曲。 多分お客からのリクエストが多いんじゃろうが、東南アジア好きの白人さんがビヨンセを贔屓にするって、まあ分らんことはない(笑) ビヨンセは黒人というよりも、イメージは褐色の肌のセクシーガールじゃからな。 白人さんたちの講釈によれば、なんだかんだ言ったって、田舎モンの白人さんたちはビデオよりもラジオからもっとも影響を受けとって、ラジオにはまだまだ頑張って欲しいわ!ってな曲らしいですぞ。

♪~エルヴィス・オン・ザ・ラジオ/KFL(1990年)
 KFLというバンドというか音楽集団の実体はようわからんけど、サンプリングによるアンビエント音楽をやるお方たち。 サンプリングって、有名曲のショートフレーズを拝借して別の曲のパートに組み込むことで、まあわしなんか絶対に許せない方法論なんじゃけど、この曲はエルヴィスが歌う「イン・ザ・ゲットー」のフレーズをアンビエント音楽(日本で言うと癒しの音楽)に生まれ変わらせるという無謀な発想ながらも悪くない完成度に仕上げておるから許す!まあエルビスの歌はどう聞いても素晴らしいから当たり前ではあるが。 ハワイアン・フィーリングのスティール・ギターを被せたアレンジのセンスも悪くない。 みんなエルヴィスとエルヴィスが活躍していた時代が好きなのだ。

♪~WASP(テキサス・ラジオ)/ドアーズ
 
 ドアーズのジム・モリソンに言わせれば、テキサスは全米でもっとも多角的に異種ラジオの電波をキャッチできる所。 様々な情報と音楽が乱舞し、融合、離脱、友情、惜別、あらゆる人間と感情とが生まれる所という。 わしがグダグダ説明を続けるより、ジムの素晴らしい歌詞を読んでみてくれたまえ。

テキサス・ラジオとビッグ・ビートの話をしよう
そいつはヴァージニアの湿地帯から届いて来るんだ
クールでスローな中にふんだんに緻密さがある
細かいバックビートで、そう、修得するのは難しいぜ
その見事さときたら、極楽みたいだって言うやつもいるし
西洋の夢の醜悪さであり、また哀れさだともなる
おれは自分がこの薄っぺらな筏の上に集めた友人たちを愛している
おれたちは脱出という栄誉において複数のピラミッドを建造してきた
ここはファラオが死んだ土地なのだ

森の中のニグロたちが賑やかに羽根飾りをしている
彼らは言っている
夜を忘れるのだ
空の色をしたこの森でおれたちとともに暮らそう
あたりには星はひとつもない
おれたちは石と化し、無垢となる


ラジオを讃えるナンバーとして、ロック史上最高の名曲じゃ。


 自分でやっておいてアレじゃが、15曲じゃ全然物足りねーな(笑) まあラジオの放送時間にだって枠ってもんがあるんだし、15曲がダトーかのう! 
 若きThe-Kingのカスタマーにおいては、「へえ~ラジオってそんなに愛されていたんだ。 たまにはロック・ジジイのハナシも聞いてみるもんだな」なんて多少上から目線ってトコじゃろうが、じゃあチミたちに聞こうか。 「MTVとかyou tubeを讃える曲ってあんのかい?」 
 まだねーんじゃないか? それじゃあ、今んとこはラジオの偉大さってのを学ぶ意味でも、これらの曲を聞いてみなさい。 昭和ってのはインターネットも無く、カード社会でもなく、AKBちゃんもいなくて(笑)現代よりも不便な時代じゃったかもしれんけど、ラジオってのは時空を越え、海を越えて限りない夢の世界をリスナーに与えてくれていたのじゃ。 Radio is Forever!




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