Volume 300

 ありがとうThe-King。
 ありがとう諸君。
 ありがとうロックンロール。

 この七鉄コーナーが、節目の300回目を迎えることが出来たことに感謝致す!

 200回までは長かったと思うたが、250回、300回はあっという間にやって来たって感じじゃ。 歳を取ると歳月の流れがどんどん早く感じるようになるもんじゃが、200回からの早さってのは何だかそれだけじゃないような気もするな。 ひょっとしてボスの新作製作のボルテージが上がりっぱなしで、売上げも赤丸付き急上昇しっぱなしで、その勢いに便乗させて頂いておるのかもしれん! ということは、諸君のロックンロール・ライフの充実度も天井知らずってことか!
 それならそれに勝る喜びは無しってことで、クダラン分析は止めておこう! とにもかくにも、わしの駄文に300回という小さな歴史らしきもんが出来上がったことに驚きを隠せない2018年10月9日じゃ。

 記念すべき300回目は、わしが心から敬愛しとる男性シンガーのベスト300、じゃなくて30じゃ。 ついに何一つ楽器を満足に弾きこなすことの出来なかったわしにとって、ロックシンガーの好き嫌いは歌の力量は元より、そのパーソナリティが大いに判断基準になってきただけに、彼らの存在は親兄弟以上!
 だから死ぬほど辛かったよ、このセレクト! そんな事をやってしもうたら、ロックンロールの神様から死ぬまで罰を受けそうな気分じゃった。 罪悪感に苛まれながらやってみたこの度のベスト30、冷やかし半分で結構なんでどうかリンクを貼っておいたyou tube映像も併せて楽しんで頂けたら幸いじゃ。

 300回到達記念として、七鉄コーナーのアイコンを早々と不死鳥にしてみたが、本当の不死鳥とは七鉄ではなくてここにご紹介する30人のシンガーたちじゃ! エルヴィス、ジム・モリスン、ポール・ロジャーズ、ジョン・レノンetc わしの人生から退屈の二文字を葬り去り、常に前進する意欲を与え続けてくれた彼らに、The-Kingと諸君同様に、心から感謝する!

 なお、「ブルースはロックの偉大なるオヤジ」という屁理屈に固辞しとるわしとしては、ブルースシンガーたちを無視することは絶対にできないので、ベスト5に限り、ブルースシンガーとロックシンガーを分けておるのでヨロピクな!

(上写真、ミリオン・ダラー・カルテット)
(右写真、左からエルモア・ジェームス、ソニー・ボーイ・ウィリアムソンII、アーリー・フィリップス、リトル・ウォーター)



第4回 男性シンガー・ベスト30


Male Blues Singer

彼こそブルースの悪魔だ!
ロバート・ジョンソン
 
Robert Johnson 
Male Rock Singer

ロックンロール・ミューズからの使者

エルヴィス・プレスリー
 
Elvis  Presley

 「ブルースの悪魔と契約した」という伝説の男じゃ! 契約の条件とは、「ブルースをものにできるが、その代償として人生は破滅」。現にロバートは27歳で毒殺されておる。・・・ぅんまあ、伝説の真偽はともかく、わしは既にロバートの声の中毒患者なのじゃ。  一度その魅力に憑りつかれてしまうと、感動とか幸せとかいうよりも、全てのブルースの基準なるものが「ロバート・ジョンソン」になってもうて、他のブルースマンを正当に評価出来なくなるほどバカになってしまう! そしてそれは永遠に変わらないじゃろう。
 エリック・クラプトンやローリング・ストーンズはロバート・ジョンソン・ショックをある程度対象化してみせて、素晴らしいアレンジでロバートの曲をロックにしてみせたが、それをやってのけられた事自体がスゴイことであり、まあ“フツーの超一流”ロッカーでは到底無理! 何故ロバートだけがそんな魔力を持っておったんじゃろうか。 古臭い録音だろうが、チンケなラブソングだろうが、ロバートの声はいつの時代も時空の壁を簡単にブチ抜いてリスナーをレイプする。 それは、ロバート・ジョンソン、彼自身がブルースの悪魔だったからじゃ。
 「エルヴィスがNo.1」と定義するその背景には、キング・オブ・ロックンロールに対する絶対的な忠誠心があるんじゃけれども、ジョン・レノンを聞こうがジム・モリソンを聞こうが、特に映像で彼らの活躍をチェックし直すと、彼らを覆っておるオーラ自体が紛れもなくエルヴィスによってこの世にもたらされたことがわかってしまうから、やっぱりキングがNo.1じゃ!
 シンガー、パフォーマーとしての偉大さは今更言うに及ばずじゃが、斜め目線でロックの歴史を見た場合、誰もエルヴィスの様に歌えない、振舞えないから、バックバンドの存在の方が進化を起こして、ギタリストやドラマーが脚光を浴びる時代がやって来たのじゃ!とわしは今でもそう信じておる。 だからエルヴィスをロックの絶対的な起点とした場合、ビートルズ登場以降のロックの変貌は、進化、変化ではなくて退化と言ってもいい!
 没後40年、今日も明日も明後日も、世界の何処かでキングとフリークとの間の距離感を縮めようとする、無謀ながらも美しい企画が試みられているに違いない! 誰もキングには成れない。 でもロッカーならば誰でもキングに成りたいのじゃ! 



ザ・ブルースマン

マディ・ウォータース
 
Muddy Waters

知覚の扉の彼方へ旅立ったロック詩人
ジム・モリソン
 
Jim Morrison

 ロバート・ジョンソンは1930年代のキング・オブ・デルタ・ブルース、つまり「田舎っぺ大将」であり(笑)、マディ―は1950年代以降のキング・オブ・アーバン・ブルース、本当のブルースの「親方」じゃ! このお方がおらんかったら、エルヴィスの登場は別として、ブルースをベースにしたロックンロールの登場はもっともっと後になっていたに違いない。
 本当の男のカッコよさ、セクシャリティってのをブルースを通じて白人どもに教えてやったのはこのお方じゃ。 女性をそそのこかす甘ったるくてまどろっこしい駆け引きなんざ無用! クズだろうがカスだろうが俺は俺自身であり、俺はお前とヤリタイのだってのがこのお方のブルースの真骨頂であり、それまでの白人音楽の価値観を木っ端微塵にする重量級(いや無差別級!)の爆弾じゃった。
 そして何よりもこのお方の腰の据わった存在感そのものが圧倒的であり、先輩のみならす後輩も、また白人ロッカーにまで敬意を表して演奏する姿は数多くのフォロワーを生み出し、黒人ブルースの普及に大いに役立ったものじゃ。 キース・リチャーズ曰く「マディはブルース界のブッダ(お釈迦様)だ!」
 ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリンとともに、60年代後半の過激なロック・スタイルに殉死した「3J」の一人! キング・エルヴィスと比較すると、シンガーとしてはキングの足元にも及ばないものの、このお方の場合は何より作詩能力(作詞ではない)がロック史上随一であり、エルヴィスともビートルズともまったく異なる境地へとリスナーを先導するパワーが圧倒的じゃった。 まあわしはかなり“遠くまで”連れて行かれてしもうて、戻ってくるまで相当の時間がかかったものじゃ!
 ジム・モリスンがファンへ広げて見せた夢世界とは、いわば形而上文学の象徴的超越世界であり、それとロックを融合させたセンスは恐るべき奇跡じゃったけど、彼自身が先導者として刀折れ矢尽きてしもうて、ロッカーとして実働僅か4年半で夭折。 しかし理想郷を見失って自暴自棄に陥った際のブルースマン的なやさぐれた実存主義な作品も素晴らしかったもんじゃ。 まさに命がけで己の創作理念を実践してみせたロック史上最後のリアル豪傑じゃった。
 今年で没後47年、未だにフォロワーすら現れないその異様な個性は、ロック史上もっとも高くて孤独な位置で光り輝いておる。



ブルース・イズ・ライフ
サン・ハウス 
Son House
ブルースロックの鉄人
ポール・
ロジャース 
Paul Rodgers

 ロバート・ジョンソンの師匠とも言うべき、未だに多くの謎に包まれた生涯を送ったブルースマンじゃ。 このお方が硬質のナショナルギターでブルースを歌い始めると、即座に正座して聞かなくてはならんような崇高で呪縛的な魔力が放出される! ブルースとは何か、放浪とは何か、愛とは何か、生きるとか何か、歌うとは何か、全ての答えがこのお方のパフォーマンスが言い尽くしておる。
 「流れる水を二度踏むことは出来ない」を地で行ったお方だったのじゃろうが、あまりにもカッコ良過ぎて、あまりにも悲し過ぎて、聞いていながらも心の何処かで「スルーしとかないと、人生やってらんない」ってどうしても没頭出来ないジレンマを感じさせられてしまう。 それはわしが生粋のブルースマン的スピリットが無いってことなんじゃろうが。
 残されたお写真のお顔は、年輪が刻まれた、どころではない、元の顔立ちがもう分からんほどの皺くちゃなんじゃけど、何故かブルースマン・タイ(ロカ・タイの原型モデル)が似合うお方であることも贔屓の要因じゃ(笑) 


 60年代後期からフリー、バッド・カンパニー、ファーム(with ジミー・ペイジ)等で未曾有の喉を披露し続けた名シンガー。 ブルース・ロックを歌わせたらまさに“右に出る者はない”とまで評されて、当時の一流ロックバンドのリーダーの誰もがこのお方を引き抜きたがっておったもんじゃ。(何と、ジム・モリソン亡き後のドアーズまで!)
 最前線で活躍しておった時代ってのは、ロックシーンはインストゥルメンタル至上主義であり、何かと楽器演奏者が優先されて脚光を浴びておったが、そんな流行もまったく関係なく歌心を全面に押し出した歌いっぷりはお見事!このお方のバンドには超絶ギタリストもハイテク・ドラマーもまったく必要なかったのじゃ。
 驚いたのは8年前の日本公演。 全盛時代よりも更にパワーが増して、原曲からオクターブを下げることもなく、衰えをまったく感じさせずにシンガーとして更に前進しておった! 過去の名曲のリメイク、ブルースやソウルのプロジェクト、畑違いのクイーンのヴォーカル等、近年の活動は多岐にわたっておって素晴らしいの一言じゃ!



4 レッドベリー
     Lead Belly


  この方の活動開始は1900年代初頭とされており、前述のサンハウスとともに黒人ブルース創世記の伝説的、神話的存在じゃ。 その容姿から想像出来る通り相当のワルであり、刑務所服役を繰り返しながらブルース、フォークを演奏し続けたその人生はまさにブルースマン!
 ブルース演奏ではロバート・ジョンソンを嘲笑い、サンハウスに対抗するような「流れる水は何度でも踏んでやる!」ってなディープ&ワイルド。 フォーク演奏では一転してピース&マイルドな味わいで、良き理解者のお陰でアメリカ議会図書館用に数百曲を録音したという伝説もある。 悪魔と神の両方のセンスを持ち合わせたような不気味で謎めいたオッサンじゃわい。
 このお方に関する日本語資料は非常に乏しく、わしも全貌を掴み切れずにおるので、もっと歳をとって潤沢な活動費があったら、是非ともアメリカに飛んで調査してみたい。 魂が乗り移ってしまって、こんな顔になっちまうのは勘弁じゃがな!





5 エルモア・ジェームス
    
 
Elmore James

 マディ・ウォータース同様に、ブルースを都市音楽化、エレクトリック化した功労者であり、ブルースとロックとの懸け橋となる凄まじいボトルネック・ギターの名手として知られておる。
 わしの場合はボトルネック・ギターよりも、このお方のシンガーとしての魅力を強調しておきたい。 マニアックなふる~いブルースの録音を探してみると、当然一般的にはまったく知られていないマイナーなブルースマンがぎょうさんおるけど、中には恐ろしく過激でドストレートな演奏をしとるヤツもおって、彼らの歴史の陰に埋もれておるブルース・ソウルが乗り移ったような唱法がこのエルモア・ジェームス唱法とも言えるじゃろう! 極論を言えば、ハードロック唱法の原点みたいな歌い方じゃ(笑)
 まあ1950年代からスタートした楽器のエレクトリック化に負けないようなパワー唱法なんじゃが、ブルース・フィーリングを損なわないバランス感覚が当時のブルース・シンガーの中でもこのお方が飛び抜けておるな。 後の白人ブルースシンガーたちのお手本じゃ。
 

4 ジョン・レノン
    
 
John Lennon

 ビートルズが“超ひっちゃかめっちゃか”なスターダム・ライフに埋没することなく、音楽集団として前進、昇華出来たのはやはりこの方の存在が大きかったはずじゃ。 ビートルズ初期の頃より、例え甘美なラブ・ソングを歌っておっても、この方のお声は“魂の救済”じゃった!
 また己の本音がファンに届かないと絶望するや否や、作風も歌唱法も俄然多彩になって“歌うアーティスト”ジョン・レノンがベールを脱いだのじゃ。 ロッカーがアーティストと呼ばれるようになったのは、ジョン・レノンが元祖じゃろうな!
 ポール・マッカートニーは元々モノマネの天才であり、モノマネからオリジナリティを会得していったが、ジョンはノッケから結構オリジナルだったに違いない。 リズム・ギターなんてのは二の次であり、まずは歌で聴衆を圧倒することが元々の武器だったはずじゃ。そういう意味では古いタイプのロッカーなんじゃけど、ビートルズ後期からはこのお方のギターもわしは好きじゃ。 決して上手くないが、歌唱力で表現出来ない楽曲のカオスな部分を独特のセンスで紡ぎ出しており、ヴォーカル&リズム・ギターの理想形じゃ!



5 デヴィッド・ボウイ
    
 
David Bowie

 終生にわたって音楽性だけではなく、唱法までコロコロ変えて見せたデヴィッド・ボウイのシンガーとしての評価は難しいという輩は多いかもしれん。 わしもそうなんじゃけど、とりあえずグラムロック時代のハイトーン・ボーカルを抜きにして考えた末、アメリカンとヨーロピアン両方のダンディズムに根ざした正統的な唱法を聞かせてくれたボウイのサービス精神?に「第5位」という喝采と名誉を送った次第じゃ(笑)
 80年代はヘヴィ・メタル(バンド、ティン・マシーンにて)までやったボウイじゃが、基本的な歌い方は案外フランク・シナトラ風、70年代のエルヴィス風であり、情緒的なスタンダードポップスを真正面から歌い切るスタイルを得意としておった。 特にロックンロールのカバーをやるとそのクセが強く出てきて、原曲に不思議なポップ変換をもたらす効果があったのが代表的なボウイ・マジックじゃった!
 まあディスコ調の楽曲を発表した時はボウイ唱法と声調がフィットしておるとは感じなかったが、大ヒットさせてしまったんだからマッチしておったんじゃろう(笑)

6~10
 
(上写真のシンガーは、左から、下記表記者順)

第6位 アクセル・ローズ Axll Rose
第7位 ジョニー・キャッシュ Johnny Cash
第8位 ポール・マッカートニー Paul McCartney
第9位 エディ・コクラン Eddie Cochran
第10位 グレッグ・レイク Greg Lake


 さあて、6位以降はロックシンガーに的を絞るぞ。 と言っても、掲載写真の通り、新旧ごちゃまぜ、ジャンルも何もないカオス状態に、果たしてこの順位が妥当なのか早くも自信がなくなってきたが、この寄せ鍋的なのが七鉄流と割り切っていくぞ!

 第6位は、数多くのロックの大御所たちを押しのけて、ガンズン・ローゼスの
アクセル・ローズだ、文句あっか!(笑) 金切り声ばっかりがアクセルじゃない。 このお方はメジャー・デビュー前から、「七色の声を持つシンガー」としてマニアックなファンの間で評判になっておったらしいが、いざデビューしてみたらパンク・ロッカー真っ青のハイトーン・シャウト連発! しかしセカンド・アルバムでのアコギ・テイクやライブでの様々なカバーの披露等でシンガーとしての評価はウナギ登り! わしとしてもブートまで聞くのが楽しいぐらいアクセルの七色の声にハマッタ!

 
ジョニー・キャッシュ御大が第7位って、諸君からぶっ飛ばされそうじゃな。 でも御大ご自身からは「オマエがそれならそれでいい。 嘘は言うな。 オマエの好きなようにやれ!」って言ってもらえるじゃろう(笑) 御大は決して感情を炸裂させるような歌い方をしなかったのがシビレタたな! だからこそ迫力があったんじゃよ。 それからカントリーであの歌い方は本来邪道じゃろう!! 邪道を貫いてのオリジナルの確立。 いずれもキョービのヤング・シンガーに見習ってもらいたい。

 第8位は
ポール・マッカートニー。 ジョン・レノンの項でも述べた通り、このお方は50sシンガーたちのモノマネの天才!エルヴィスやってもコクランやってもバディ・ホリーやってもうまい。 だからなのか器用貧乏っぽくていまひとつ好きになれない時期もあったが、何曲かのオールドロックンロールのカバーを聞いて仰天! オリジナルを越えてとるわい・・・スゲエ。

 ポールの敬愛する先輩
エディ・コクランは第9位。 もう少し活動期間が長かったら、もっと多彩な歌声を聞けたかもしれん。 エルヴィスほどの衝撃性はなかった、現時代的デジタル・リマスター盤で聞いてみるとまったく古臭さを感じない! これは録音状態のデジタル加工の効果というよりも、エディの歌声自体の普遍性と官能性がもたらした結果じゃ。

 第10位の
グレッグ・レイク、ベスト10の中ではもっともマイナーな存在じゃけど、70年代のプログレシーンを席捲したトリオバンド、エマーソン・レイク&パーマーのボーカルじゃ! キング・クリムゾンの大傑作のファーストでも歌っておる。 プログレ・バンドのボーカルって特にオキニはおらんけど、このお方だけは別格。 深い憂いを帯びた歌声はクラシック調の楽曲にピッタリ。 またカントリー調の曲にも意外と歌いこなす器用さもあった。 ソロアルバムではハードロックを歌って見事に留飲を下げておった。



11~15位(順不同)

(左写真のシンガーは、左側上からリック・ダンコ、ニール・ヤング、グラム・パーソンズ。 右側上からスティーブ・マリオット、マーティン・ターナー)

・リック・ダンコ Rick Danko
・ニール・ヤング Neil Young
・グラム・パーソンズ Gram Parsonsl
・スティーブ・マリオット Steve Marriott
・マーティン・ターナー 
Martin Turner

 
リック・ダンコは、3人のリードボーカリストがおったザ・バンドの一員。 もっともロックっぽい曲を歌う場合が多かった。 恐らくじゃけど、このお方、故意的に上手く歌うことをしなかったんじゃないかのお。 突然しゃくりあげたり、ダミ声出したり、言葉を飲み込んだりと、一風変わった芸風というか唱風が持ち味。 これが彼流のロックだったんじゃろうなあ。

 お次の
ニール・ヤングは、60歳を越えてなお現役バリバリであろうとするフォーク・ロック・シンガー。 上述のリック・ダンコとは正反対で、何を歌っても原則的に唱法がほとんど変わんないが、それでもまったく飽きさせないからスゴイ! 根はロックンローラーで反骨精神の塊じゃが、歌う題材に対して目くじらをたてることなく諭すような歌い方が顕著であり、それが年齢を重ねるごとに磨きがかかってきておると言えるじゃろうな。

 
グラム・パーソンズとは、60年代のフォークロック・バンド、フライングブリットブラザースに参加した後、2枚のソロアルバムを発表して早死にしてしもうたシンガー。 名曲「ラブハーツ」のカバーが有名であり、儚い人生だった割には確たる存在感を残した美しい歌声が今も印象が強い。 60年代末期にストーンズの連中にアメリカン・カントリーの手ほどきをしたと言われる人物でもある。

 ブリティッシュ・ブルース・ロック好きなら絶対外せないのが
スティーブ・マリオット。 60年代中期からスモール・フェイセスでメッチャ黒っぽい声を披露しており、ちょっとやり過ぎな感は終生変わらなかった。 あまりにも黒っぽ過ぎて、70年代中期からの「ロック界全体のハードロック化」にフィットしずらかったのが残念じゃったが、熱狂的ファンはわしを初めとして少なくなかったな。

 そしてウィッシュボーン・アッシュの
マーティン・ターナー。 この方は果たしてリード・ボーカリストといえるのかどうか分らんような、コーラス・ボーカリスト的なシンガー。 実際アッシュの曲の大半にはコーラスがボーカルパートを占めておった。 マーティンの歌声は、完全な黄昏れ系であり、パワーもテクも無いが、演奏全体を包み込む様に儚くアレンジしていくボーカルは今も昔もロック界では異例じゃけど、パワーボーカル全盛の中においては却って中毒性があったもんじゃ!




16~20位(順不同)

(右写真、上段からブルース・スプリングスティーン、ドン・ヘンリー、マーク・ボラン。
下段右側左から、ビル・ブラッフォード、ロッド・スチュワート、ゲイリー・ブルッカー)

・ブルース・スプリングスティーン
 Bruce Springsteen
・ドン・ヘンリー Don Henley
・マーク・ボラン Mark Bolan
・ロッド・スチュワート Rod Stewart
・ゲイリー・ブルッカー Gary Brooker


 まず
ブルース・スプリングスティーンに関しては、初期5枚のアルバム(ファーストから『ザ・リバー』)まではサイコー。 ベスト10に入れてもいいぐらいじゃけど、メガヒット作『ボーン・イン・ザ・USA』からはドッチラケてしもうたのでこのランキングまで落ちてしもうたわい。 激しいロックンロール・ビートに乗せてマシンガンの様に言葉を乱射する初期のボーカル・スタイルは唯一無比だったんじゃけど、アメリカン・ヒーローに祭り上げられてからは、どういうわけかプロレスラー登場のテーマみたいな歌い方になってガックシ。

ドン・ヘンリーは、イーグルス解散後も持ち前のメランコリックなトーンを讃えたボーカルスタイルを変えずに奮闘しておってしばらく拍手を送っておった。 超人気バン ドの一員とソロとは違うんだとかコムズカシイことは言わずに素直にファンの要求に応えておったもんな! いい歳の取り方をしとるんで、いつの日か新境地が期待できる今や数少ないビンテージ・ロッカーじゃ。 でも案外金にガメツイようで、旧友たちからの評判は芳しくないのがチョイ心配じゃが。

 ここんとこ、どういうわけか昔は全然興味の無かった
マーク・ボランに惹かれておる! ホントこのお方の声って、激しく切なくて心臓にグサッとくておるんじゃよ。 ロックの持つ根本的なカッコヨサと儚さが同居しておるような、一晩だけ咲き狂う怖いほど美しい花の様な声、グラム・ロックそのものじゃ。 全盛時代は何かとデヴィッド・ボウイと比較されておったが、このお方が持つ天性の儚さだけは天才ボウイがどんなに演じても到達出来なかったロック無形文化財的希少さを誇っておる! 月日の経過とともに、もっと評価されてほしい才能とボーカルじゃ。

 
ロッド・スチュワート、このお方のボーカルの素晴らしさは今更言うに及ばずじゃけど、フェイセス解散後のソロ活動における歌声はいまひとつ品位に欠ける!と思うんでこのランキングに落ち着いておる。 ジェフ・ベックに見出されてメジャー・デビューをした頃は物凄いブルース・ロックを歌っておったんじゃけどな。 まあスター志向が強過ぎた結果、ブルース・フィーリングが希薄になって品位を落としたとわしは判断しとる。 え?ブルース自体に品位があるのかって?当たり前じゃ、バカモノ!

 品位と言えば、それがあり過ぎて時には嫌味になってしまうのが、プロコル・ハルムのボーカルじゃった
ゲイリー・ブルッカー。 バンドはプログレ系じゃけど、この人の声はどこかブルース・フィーリングがあって好きなんじゃけど、なんつうか聞く者を追い詰めていくような切迫感が激しくて、楽曲によっては心筋梗塞を起こしそうな歌い方をする! それがまた持ち味なんじゃけど、ちょいと鼻に付く感じていけ好かない時もある。 しかしクラシック調のロックを歌うことに関しては、第10位のグレッグ・レイクと双璧を成すほどのエレガンスさを発揮するお方じゃ。


21~25位(順不同)

(左写真シンガーは、上から下記表記シンガー順)

・レイ・デイヴィス Ray Davies
・ミック・ジャガー  Mick Jaggar
・エリック・バードン Eric Burdon
・ロジャー・ダルトリー Roger Dartley
・ロバート・プラント 
Robert Plant

 男性シンガー20~25位は、偶然にもブリティッシュ・ロック創世期を飾った名シンガーばかり。 全員もっと上位にランキングされても良さそうなもんなんじゃが、結局その時代のロックに対して、わしはメンバーのパーソナリティよりもバンド全体を見て、聞いておったってことなんじゃろうな。

 レイ・デイヴィスはキンクスのシンガー。 シンガーとしての魅力はさほど感じないものの、同期のビートルズともストーンズともフーとも違う、この人だけの感性によるブルースやポップスへのスタンスが大好き! アメリカンナイズされていないイギリス人特有の温かみとニヒルさが作風に滲み出ておって、ロックに飽きるとレイ&キンクスが聞きたくなるという不思議な吸引力を持ったお方じゃ。

 
ミック・ジャガーは、ボーカリストとしてその才能が開花するのは、わしの判断では結構遅くて70年代に入ってから。 60年代は試行錯誤状態であまり惹かれん。 まあ60年代のストーンズにおいては、わしはブライアン・ジョーンズの存在を大切にしておるからミックへの評価が後回しになっておるとは思うがな。 
 ミックがどう思っておるかどうか知らんけど、やはりストーンズあってのミック・ジャガー。ストーンズの上に乗っかってないミックは魅力半減って気がするな。 時を一気にぶっ飛んで現代まで来て評価し直すと、ブルースカヴァー・アルバムでのミックのヴォーカルは凄かった! もう懐メロ大会なんか止めて、人生の最後をブルースシンガーとして駆け抜けてほしい!

 60年代のブリティッシュ・ロック界でもっとも黒っぽいシンガーだったのがアニマルズの
エリック・バードン。 でも世間が言うほどわしは“モロ・ブルース”には聞こえず、後に続出してくるブルース・ロック・バンドのシンガーとして登場した方がよかったのではないか?と思うとる。 まあアニマルズが、エリックのヴォーカルをサポートし切れていなかったという事実も大きいが、エリックが70年代に結成した数々のリーダーズ・バンドを聞くと、このお方の歌い方は基本的にパワフルなロックシンガーであることが良く分かる。 エリックに関してブルースで括り過ぎると却ってこの方のシンガーとしてのスゴサをスポイルしてしまうことになってしまうので要注意じゃよ。

 ザ・フーのシンガーである
ロジャー・ダルトリー、このお方の最大の個性はブルースとかオールド・ロックンロールとかの影響をあまり感じさせないところ! かといってオリジナリティ溢れるってわけでもないが、バンド・サウンドを得体の知れない高みにまで引率していってしまう強烈なパワーは、ミック・ジャガーやヴァン・モリソン(ゼム)とかの当時のパワーボーカリストの更に上を行く迫力じゃ。 スタジオ盤での歌いっぷりが完璧過ぎて、ライブでそれをまた完璧に再現しようと暴れまくっていたテンションの高さもすごかったわい!

 ブルースをヒステリックなハイトーンボーカルで歌いまくったのがレッド・ツェッペリンの
ロバート・プラント。 まあこの人の高音域でのパワフルさは異常であり、まさにPA到来時代の申し子的なシンガー。
 その奇跡のハイトーン・ボーカルも喉を傷めた70年代中期以降はめっきり聞けなくなり、このお方の魅力がガタ落ち気味になった事も案外ツェッペリン解散の陰の要因だったのかもしれん。 それでも元々は美声の持ち主でもあり、歌う題材をトラディショナル・ソングに定めてから見事にソロシンガーとして復活。 超人気バンドのシンガーの中では、「元〇〇の」といった形容詞が必要のない数少ないグレイトな方じゃ。


25~30位(順不同)

(右写真シンガーは、上から下記表記シンガー順)

・マイク・スコット Mick Scotts
・アーサー・リー Arther Lee
・ルー・リード  Lou Reed
・デヴィッド・クロスビー David Crosby
・クリス・クリストファーソン Kris Kristferson


 マイク・スコットは、80年代中期から90年代初頭に活躍したブリティッシュ・フォーク・ロック・バンドのウォーター・ボーイズのシンガー。シンガーとしてのタイプはロジャー・ダルトリーの様なハイ・テンション、ハイ・エナジーなタイプ。一点の曇りもない信念を全身全霊で歌い上げる唱法はチト暑苦しいが、その熱さ故に記憶に残るお方じゃな。

 アーサー・リーも聞き覚えてのない名前であろうが、60年代前半にアメリカ西海岸でカルトな人気を誇ったアングラ・フォーク・バンド、ラブの黒人シンガーじゃ。黒人とは思えぬ澄み切った美声が持ち味であり、混沌とした当時のアメリカの若者の心情を軽やかにすくい上げることのできる魅惑の声じゃった。 アーサーを初めとしたラブのメンバーは全員ドラッグ漬けだったらしく、それがバンドのメジャー化を阻んだとのことらしいが、アーサーの歌声にはそんなダーティーな残響は一切聞こえてこない!

 ニューヨーク・パンクの元祖、ベルベット・アンダーグラウンドのリーダー兼シンガー
、ルー・リードも忘れがたきマイナー・シンガーの一人。シンガーというよりもストーリー・テラーの如き語りかけてくる様なディ―プな歌声と唱法はいかなるスピード感の楽曲においても十二分に発揮されておった。一般的な上手い下手の基準から超越した次元で歌うという表現をコントロール出来た稀有なお方じゃ。 小説やコラムを書くフィーリングで歌うことの出来た隠れた名シンガー!

 アメリカの世相が変わり、ヤングの有り方が変わると必ず集合を求められるフォーク・ロック・バンドがある。 それは大御所4人のファミリーネームが冠されたバンドCSN&Yであり、その一人がデヴィッド・クロスビーじゃ。他の3人、ステファン・スティルス、グラハム・ナッシュ、ニール・ヤングの持ち味とは明らかに異質の、極めてロック調なデヴィッドの歌いっぷりはCSN&Yの中でもっともインパクトがあり、それはいつの時代もロックのダイナミズムが民衆にとって必要であることを教えられるようじゃ! お顔は柔和なタコ入道みたいじゃけど、歌は激しいエレキサウンドとドラムがもっとも似合う強烈なロックンロール調じゃ。

 30番目にご登場頂くのは、アメリカン・フォーク界の重鎮、
クリス・クリストファーソン。 ニール・ヤング、CSN&Y、ブルース・スプリングスティーンら、優れたアメリカン・シンガーソングライターの歴史はこの方のご登場によってスタートしたのじゃ。 ジョニー・キャッシュ御大との仲がよろしかったようで、御大同様に派手でトリッキーな歌い方をせずとも、歌に込めた情念と抑制されたエネルギーによってその歌心は民衆へ確実に届くことを証明し続けた偉人じゃ。 映画の中で挿入されると、鋭利なナイフの様に一撃グサリ!でストーリーの核心を突く効果を発揮するシンガーでもある! 


 いやあ~ツカレタ! こんなランキング、二度やりたくないけど、心のどこかでスッキリしたようでもある! 4回に渡って「愛するヒーロー/ヒロイン」のランキングにお付き合い頂いて、諸君もお疲れさんでやんした!
 この度のランキングは、あくまでも「現在の視点」が基本なんで、選から漏れた大好きな連中もたくさんおるんで、それは近い内にピックアップして一気に特集するかもしれんので、その時はまたヨロシューな!
 って、このシリーズ、何かが足りんよな! そう、まだギタリスト・ランキングをやっておらんかったのじゃ。 それも近い内に! 
 
 まあ「七鉄300回云々」に関しては今回でキレイさっぱり忘れてくれて構わんので、その代わりThe-Kingに変わらぬご愛顧のほどを! 引き続きガンガンお買い物を頼むぞ!




GO TO TOP