Volume 298/300

 このコーナーの新アイコンの不死鳥を見て「やべえ。 クリックしてしまった!」と後悔する方も多いことじゃろう(笑) そうじゃ、七鉄は不死身、もう一度蘇る為に不死鳥にご登場願っておるのじゃよ。 だから今回もロックジジイの超わがまま企画にお付き合い願うぞ!

 前回からスタートさせた「七鉄コーナー300回記念連載」、第2回はドラマーとベーシストのそれぞれベスト20としよう。
 本来はベスト30、40ぐらいにしたいのじゃが、それじゃあ読むのに長過ぎてしまい、30位以下の存在が却って希薄になってしまって本人たちの印象が悪くなってしまうのでベスト20のみの紹介にしておく。

 ドラマーとベーシストってのはガッチリと組んでバンド演奏をテイクオフさせる(離陸させる)、聴衆よりもまずバンド演奏の為にあると言ってもよい“縁の下の力持ち”“ザ・男の仕事師”じゃ。 だからシンガーやギタリストたちよりも脚光を浴びる機会が少ないものの、キャラクター的に惹かれる方が非常に多いのじゃ。 わしの評価にはそんなポイントも加わっておる。
 またわしはミュージシャン経験がまったくなく、楽器も長期間練習したこともないので「テクニック云々」って側面にはほとんど興味なし! 大体、基本的な力量やセンスを別として、ロックには楽器演奏の高度なテクニックなんて必要ないと信じておる。 いかにサウンドを物質化させて聴覚に残すことが出来るか、傑作とは言えない曲でも興味深く聞かせるだけのリズムの特殊なセンスがあるか、メロディラインを別次元にまで引き上げる誘導力があるか、まあそんなところに着目しながら20人をセレクトしてみた。
(上右写真、エルヴィス&D.J.フォンタナ)


第2回 ドラマー&ベーシスト・ベスト20


ドラマー Drummer

未来永劫のNo.1ロックドラマー
ジョン・ボーナム
 
John Bohnam 
ベーシスト Bassist

永遠に彷徨い続ける巨人

ジャコ・パストリアス
 
Jaco Pastorius

 レッド・ツェッペリンを初めて聞いた40年あまり前から現在に至るまで、不動のナンバーワンに輝き続ける偉大なドラマーじゃ。 まあ世界中のロックフリークの中でもわしと同じ評価をしておる方は星の数ほどおるじゃろうが、結構天邪鬼なわしもジョン・ボーナム様に関してだけはロック・ワールドの常識的評価に同意じゃ。
 ギターのリフと一体化することで音楽を硬質極まりない物質化させて聴覚にぶち込む!これが出来るのはこのお方だけ。 本来はジャズ好きだったらしいが、強引に口説き落としてツェッペリンに参加させたジミー・ペイジの慧眼振りも頭が下がる。 
 ロックの歴史の中で、なんでジョン・ボーナムだけが音楽を物質化させるドラムを叩けたのだろうか? それは恐らくボーナムが類まれな運動神経と音楽センスによってツェッペリン・サウンドの内側に入り込んで、ツェッペリンという生命体のセンターから激しいシグナルを送り続けていたからじゃろう。 バンドの中でそんな奇跡と思われる演奏をやってのけたのは恐らくロック史の中でボーナムだけじゃ!
 ご存知ジャズ史上に燦然と輝く狂人ベーシストじゃ。 ジャズをやるにはセンスがアバンギャルド過ぎ。 ロックをやるにはテクニックが超人過ぎ。 フュージョンをやるには性格がワイルド過ぎ。 生涯でついに音楽的着地点、安住の地を見つけることが出来なかった孤高の天才じゃ。
 わしがプロデューサーだったら、何が何でもロックの世界に引っ張り込んで、ジミ・ヘンドリックス無き後、ビジネスライクになりつつあった業界とロックサウンドをぶった斬らせたかった! 「何がツェッペリンだ、何がストーンズだ、何がパンクだ、ジャコに適うヤツはいない」ってな! ジャコのトンデモ振りに刺激を受けた若い才能が次々と“正統的”に芽吹く二次効果もあったはず。
 いいんだよ、バックバンドはレベルが違い過ぎたって。 バックバンドとのアンバランスさが、ジャコを暴走させてすさまじいダイナミズムがってそれじゃジミ・ヘンドリックスの二の舞じゃけど、やっぱり一度はロックをやってほしかったのお。 せめてベースをギターの様に弾きまくったブルースのカバーアルバム1枚ぐらいはなあって今でも思うわい。



ハードロック・ドラムの権化

ジンジャー・ベーカー
 
Ginger Baker

前代未聞のリード・ベーシスト
ゲイリー・セイン
 
Gary Thain

 前述のジョン・ボーナムの出現によって、わしの中でのNo.1の座を奪われたもんじゃが、ロックバンドのライブ映像なんて滅多にみられなかった40年以上前、この方のクリーム時代の映像を観た時は衝撃じゃった!
 全力疾走するエリック・クラプトンとジャック・ブルースを後ろから煽り立てるように叩きまくる映像の記憶は永遠じゃ。 まさにハードロック・ドラムの絶対的な基本を生み出した方と言えるじゃろう。
 おかしな宗教に走ったりして人格的に大いに問題ありとされておったからかどうか分からんが、あまりの強烈な個性とドラミングによって、クリーム解散以降は良いバンドや協力者に恵まれずにシーンの表舞台に登場しなくなったのが残念じゃった。 もっとも、この人がフィットするサウンドなんで人間の能力では作り出せないのかもしれんな。
 ジョン・ボーナムにはツェッペリンが、キース・ムーンにはザ・フーがあったから彼らは長く光り輝くドラムヒーローに成ったが、ジンジャー・ベイカーには活動期間僅か3年弱のクリームしかなかったのが悲運ということじゃ。
 70年代中期の3~4年、ユーライア・ヒープなるハード&プログレ系バンドに在籍しておったお方じゃ。 まあ知名度からすれば既にほぼ無名と言える存在じゃけど、メロディ・ラインとは別次元で勝手にベースでメロディを作ってフィットさせてしまう驚くべきぺーシストじゃった。 ベーシストの役割を超越した一人芝居が許されておったと言えよう。
 ゲイリー殿がユーライア・ヒープに在籍して時期が同バンドの全盛時代。 多少アメリカンナイズされたサウンドにゲイリー殿のプレイは強烈なインパクトをファンに与えており、「テクニック云々」で評価を決める口ウルサイ日本のロックファンにも人気があったと記憶しておる。 まあわしの友人じゃったゴリゴリのジャズ・ファンに聞かせたら「何だいこりゃ?」って一笑にふしておったけど、強烈な印象を与えたことは間違いないようじゃった。
 どうやら極度のヘロイン中毒だったようで、感性が完全にぶっ飛んだままプレイしておったが、ジャコとは反対にゲイリーにジャズをやらせたらもっとスゴイフレーズで暴れまくっておったに違いない。



不滅のロックドラム小僧

キース・ムーン 
Keith Moon

スターにして裏方名人
ポール・マッカートニー 

Paul McCartney

 1960年代後半にクリームやツェッペリンが出現したことで、悪い意味でロックはアイディアとテクニックの品評会気味になったが、「何をやろうがロックンロールとは楽しむものだぜ!」ってドラムを叩きまくったのがザ・フーのキース・ムーンじゃ。 ドラムセット全体を、まさにどんちゃん騒ぎのごとく叩きまくり蹴りまくり、ザ・フーのライブを異様な次元にまで放り出すクレイジー・ドラマーじゃった。
 ストーンズのキース・リチャーズが「アイツ、基本的なドラミングはヘッタクソなのに、ザ・フーの中にいるととんでもないドラマーになりやがる」と言っておったもんじゃ。 ザ・フーがピート・タウンシェントの志向で哲学的なテーマを掲げるようになっても、キースのドラミングだけは「楽しむ為のロック!」という路線を貫き、終生全身全霊でそいつを体現しておった。
 泥酔した挙句、自動車に引きずり回されて絶命するという壮絶な死に様をくらったキース、失礼な言い方だが、その死ぬ間際の恐怖の中でも彼のアタマの中ではクレイジー・ビートが鳴り響いていたのかもしれない。 ジョン、ジンジャー、そしてキース・ムーン、この3人だけはロック史の中で不世出の天才ドラマーである!
 ベーシストなんて誰も注目しない、どころか、ベースなんて必要なの?なんて言われた時代に、ドラマーのリンゴとともにサウンドの土台作りというパートに積極的に取り組んでいたポールってスゴイお方じゃ。 やっぱりポールのベースとリンゴのドラムがあったからこそ煌めくビートルズ・サウンドが完成されていったのじゃ。
 もちろんビートルズは曲自体が素晴らしいが、単なる代表的な60年代のポップ・ソングで終わらなかった要因はポールのベースに潜んでおるんじゃよ。 カールフォフナーのバイオリン型ベースに次いで、リッケンバッカーのガリガリ君ベースを使い始めた時は「ちょっとビートルズには違うんじゃないか?」って思ったが、70年代のウイングス時代には見事に音質を改変しておった。 ホント、この人って音楽に関しては何をやらせても天下一品じゃわい。
 近年発表され続けるビートルズのリマスター盤を聞くと、何よりもポールのベースサウンドがクリアに迫ってくるのが嬉しい。 少々テンション不足?なジョージ・ハリスンの楽曲も、ポールのベース・サポートでいい仕上がりに到達しておったりしとる! スター・ミュージシャンにして裏方名人じゃ。


4 コージー・パウエル
        Cozy Powell


 ジェフ・ベック・グループ、レインボウ、マイケル・シェンカー・バンド等、数多くのビッグ・ハードロック・バンドを渡り歩いたスター・ドラマーじゃ。
 とりたててパワフルでもテクニカルでもないが、コージーがドラムを叩き始めるとサウンドが一気に本物のロックになる、ロック・センスの塊みたいなドラマーじゃった! またドラマーのくせに「ドラム・ソロなんてのは、ジョン・ボーナム以外は聴衆には退屈なものだ」と言って、自らのドラムソロには派手なBGMやイルミネーションを多用してショーアップを試みたアイディアもカッコよかったのお!
 狼ヘアーにスリムなボディのスポーティーなビジュアルは、従来のドラマーのイメージを劇的に変えたともいえ、ジェフ・ベックやリッチー・ブラックモアらのスターギタリストたちの見せ場でさえガンガン頭打ちで向かってくるスリリングなドラム・スタイルにシビレタもんじゃよ。 


5 マイケル・シュリーブ
    
 
Michael Shrieve

 「ウッドストック」にて、バンドリーダーのサンタナを完全に食ってしまった驚異のテクニカル・ドラミングの映像イメージが強烈! まあどう見ても“キメテおった”が、そんな事はロック少年にとっては関係なしじゃった!
 サンタナなんてそれほど好きじゃなかったが、「ウッドストック」のマイケルのイメージが抜けきれないのでサンタナのレコードを買い続けたわい。 基本的にはジャズ系の華麗なテクニックの持ち主じゃが、それがサンタナのラテン・フレーバーが加わるとこの方のプレイは俄然スケールアップするんじゃ!
 70年代中盤あたりから多彩なジャンルのレコードに参加し、日本のジャズ・ピアニスト山下洋輔とスティーブ・ウインウッドらとフュージョン・アルバムも製作。 脅威的なテクを披露しておったが、発表のタイミング遅くて脚光を浴びることなく終わった。 しかしいかなるジャンルでの演奏でも、ジャンル本来の魅力を一気に底上げするスピリチュアルなテクニックはもっと評価を与えられても良いと思うが。


6 D. J. フォンタナ
   D. J. Fontana

 エルヴィスの400曲を越えるレコーディングに参加したこのお方、「第6位なんてとんでもねーぞ!」とクレームの嵐じゃろうがどうかご勘弁。
 あらためて着目してみると、ホント余計なことは一切しないがエルヴィス・サウンドの心臓じゃったなあ~。 ビル・ブラックとの息もピッタリであり、まさにスターシンガーのバンドのドラマー&ベーシスト・コンビとして理想的じゃ!
 もしもバンドそのもの、また楽器演奏者各人まで脚光を浴びる時代にエルヴィスとともに登場しておったら、と何度も想定してみたがどうしてもイメージが湧いてこない。 それだけエルヴィスの存在が絶大だったんじゃが、D.J.フォンタナ自身にもバックバンド・ドラマーとしての強い矜持があったってことじゃろうな。


4 アンディ・フレイザー
    
 
Andy Fraser

 弱冠17歳にしてフリーのベーシスト兼コンポーザーでデビュー。 ブルースロック界に早熟過ぎる才能を轟かせ、僅か22歳で消えた流れ星のような方じゃった。 大地を這いずり回るような印象的なベースラインをかましまくり、その音色とリズム感はいわゆる“アンディー・フレイザー節”であり、何人も真似の出来ない唯一無比の個性じゃったなあ。 
 最近のブルースロックって“ロック寄り”じゃけど、アンディが活躍した70年代初頭は“ブルース寄り”。 白人プレイヤーの誰もが黒人ブルースマンにコンプレックスを抱いておったが、アンディだけは独自のセンスを発揮してブルースとロックの橋渡し役を果たしたのじゃ。 アンディがいたからこそ、ボーカリストのポール・ロジャースの唱法は進化し、ギタリストのポール・コゾフは一瞬で聴衆を圧倒できるトーンを会得したはずじゃ。


5 マーティン・ターナー
    
 
Martin Turner

 70年代のライトなブルースロック・バンドだったウィッシュボーン・アッシュのベーシスト兼ボーカリスト。 専門は6弦ベースだったこともあり、ロック・プレイの為に4弦に持ち替えたセンスはかなり異様なんじゃけど、それが時代が求めたライトなブルースロックを生み出す原動力になっておった。
 派手なプレイはほとんどやらなかったが、不思議と耳に残る印象的なベースラインを生み出すお方であり、70年代を代表する個性派ベーシストの代表格じゃ。 若かりし日は正統的なイケメンであり、黄昏れたヴォーカルがまたサイコーであり、サンダーバートのベースを持つために生まれて来たような体型もグッド(笑) トータル・ミュージシャンとしての魅力が大いに作用した結果の上位ランクなのじゃ。
 マーティンのボーカルやベースを聞くと、今更ながらに「70年代前半のブリティッシュ・ロックはサイコーだったのお」とシンミリしてしまうわい!



6 ジョン・ポール・ジョーンズ
     John Paul Jones

 歌う体操選手ロバート、リフ中心のリードギターのジミー、爆音主体のジョン(Ds)、レッド・ツェッペリンというバンドは超個性派ぞろいじゃが、それを集合体としてまとめて演奏を商品化させていたのはこのお方であり、まさにミスター・ベースマンであり、ライブにおけるプレーイング・プロデューサーじゃ。
 ツェッペリン・サウンドの最大の個性とは、ギターとドラムが一体化した強烈なリフなんじゃけど、ギター&ドラムという音楽では本来ありえないコンビネーションの成立には、実はこの方の役割が非常に大きいのじゃ。 時代が移り変わり、方法論的に様々なロックが出現してきたが、いまひとつツマンナイのは、ジョン・ポール・ジョーンズ的存在が裏方におらんからじゃろう! ライブ映画「永遠の歌」を見ると、相反する持ち味のジョン・ボーナムとジョン・ポールのアイコンタクトが非常に印象的じゃ。

7 ラルフ・モリ―ナ
      Ralph Molina

 一般的には無名じゃが、社会派フォークシンガーのニール・ヤングが本業以外でやりたい事をやる時のプロジェクト「クレイジー・ホース」の無くてはならないドラマーでありますぞ。
 「クレイジー・ホース」はハードロック、パンクロック、時にはコンピュータ音楽(こんな表現はもう死語じゃな)なんかをメッチャ楽しむバンドであり、このお方の引っ叩きまくりのドラムが暴れまくっておると想像してくれて間違いないぞ。 アフタービート気味で後ろからガンガンがぶり寄りで迫って来るビートは恐ろしいまでの迫力じゃ。 この方がおらんかったら、ニール・ヤングの尽きることの無いアイディアは枯渇しておったかもしれん。
 本人は「俺は元々スタジオ・ミュージシャンで礼儀正しいんだぜ」なんておっしゃっておるが、駆け出しのハードロックバンドなんて一発で叩きつぶしてしまうような強烈な個性のビートが真骨頂じゃ!


8 デイブ・グローブ 
      
David Grohl

 現在はフー・ファイターズのリーダーとして歌にギターに活躍しておるが、シーンに登場してきた時はグランジロックの旗手ニルヴァーナのドラマーじゃった。 ニルヴァーナに関しては世間ではリーダーでありシンガーのカート・コバーンばかり注目されておったけど、わしはこの方のドラムを聞く為にアルバムを買っておった。
 グランジ・ロックは平たく言うと、ヘヴィメタルとパンクが合体した90年代的展開のロックじゃが、パワフルでヘヴィなメタル・ビートとラフでヘタウマ的なパンク・ビートの両方を叩きまくれるスゲエドラマーの筆頭がこのデイブ・グローブじゃろう。 同系にはレッド・ホット・チリペッパーズのチャド・スミスがおるけど、チャドほどエンターテイメントなフレーズは叩かず、不気味なニルヴァーナ・サウンドのスウィング感の創出に全霊をかけるデイブの力仕事にわしは惚れておった! 


9 サイモン・カーク
    
 
Simon Kirke

 フリー、バッド・カンパニーで活躍した元祖アフタービート・ドラマーじゃ。 このお方とベーシストのアンディ・フレイザーが創出したアフタービートがあったからこそ、古臭いブルース・ロックは新しいロックへと生まれ変わることが出来たのじゃ。 ひょっとしてこの2人のプレイに“やられてしまった”から、わしはヘヴィ・メタルの一種コケ脅かし的な力感とリズムに馴染めなかったのかもしれん。
 この手のドラマーはアフタービート以外のノリは下手くそな場合が多いが、サイモン殿は実に器用であり、フリーよりライトアップされたバッド・カンパニーのサウンドにもフィットしたビートを創出しておる。 基本的にはパワードラマーじゃが、その持ち味を自由自在に制御出来るセンスもある。 お年を召されてからのプレイには、そのセンスに磨きがかかっておって恐れ入ったぞ。


10 チャーリー・ワッツ 
       Charlie Watts

 この方の魅力が分かるまで随分と時間がかかった。 今では、ミック・ジャガーにエネルギーを注入し、キース・リチャーズに職人仕事を没頭させとるのはチャーリーだったことがよ~く理解出来る! 残念ながら大規模なスタジアム・コンサートではチャーリーの仕事の本質は聞こえずらいものの、パッケージされたサウンドや映像においてはチャーリーこそ麻薬の様にファンの身体に浸透するストーンズ・サウンドの滋養強壮剤であることは明白じゃ。
 延々と同じようなロックンロールをやっとるようなイメージのストーンズじゃが、その実は時代にフィットする仕掛けが随所にほどこされており、それはチャーリーの多彩な表現力なくしては成立せん。 もしブライアン・ジョーンズがサウンドのリーダーシップを取り続けて、ストーンズがピュア・ブルースロック・バンドへの道を辿ったとしても、チャーリーが叩き続けておれば、時代にフィットしたサウンドが完成しておったじゃろう。


7 アーサー・ケイン 
      Arthur Kane

 わしが大嫌いで大好きな!?ニューヨーク・ドールズのベーシストじゃ。 バンド内でもっとも目立たなかった方じゃけど、その音色とベースラインはパンクの基本というか、過激なパンクバンドのベースは全部この方のコピーにしか聞こえない! いわばトンデモナイ、パンク・ベースのフォーマットを確立しておるのじゃ。
 ニューヨーク・ドールズ活動期は“殺し屋(キラー)”という愛称で呼ばれておったが、彼に殺されるのは聴衆というよりも、バンドの過剰なテンション。 いくらパンクだろうが、過ぎたるは及ばざるがごとしであり、バンドの程よい毒消しを担っておったともいえるじゃろう。 晩年は恵まれなかったが、再評価が待たれる筆頭ベーシストじゃ。



8 ビル・ブラック 
     Bill Black

 ミュージシャン経験の無いわしには、この方の魅力を正確に表現することは難しい・・・けど、初期のエルヴィスの過激なサウンドが着地点を見失わなかったのはやっぱりこの方の手腕じゃったと思う。 楽曲のテンションやメッセージがどうであれ、常に壁の向こう側から手綱を引いておるような磁力は強力じゃよ。
 ドラマー第6位にランクしたJ.D.フォンタナの項でも述べたが、この2人がいたからこそエルヴィス・サウンドの骨格が完成したわけであり、「リズム・セクション・ベスト20」ならJ.D.&ビルのコンビがNo.1じゃ。 アメリカのスタジオ・ミュージシャンは驚くほど多彩な連中が揃っておるが、ベーシストたちのフォーマットって実はビルなんじゃないか?って最近になって思うわい。 またこうした仕事が出来るバンド・ベーシストってホント少なくなったもんじゃ!
 

9 ジェリー・シェフ
    
 
Jerry Scheff

 エルヴィスの70年代を支えた名ベーシストじゃ。 この方のプレイを聞いておると、リズムキープとアレンジメントを兼用するピアニストの左手のプレイのようじゃ。 ロックンロール、ブルース、カントリー、またマニアックなアメリカン・トラディショナルまで見事にこなすマルチプレーヤーじゃな。 孤高のロックサウンドであるドアーズのアルバムでもキメてみせたのは知られざる偉業じゃぞ! その圧倒的な力量は、ジャコ・パストリアスにも共通するとわしは評価しとるんじゃ。
 エルヴィスのリハーサル・ステージやバックステージの映像を観ると、エルヴィスがこの方をいかに頼りにしていたが分かる。 ステージ前に自分をコントロール出来なくとなると、エルヴィスは必ず声をかけている。 偉大なる音楽教授ってトコじゃな!

10 メル・サッチャー 
          Mel Schacher

 使い古された“唸りを上げるベースサウンド”って表現は、グランド・ファンク・レイルロードのベーシストじゃったこの方の為にあったようなものじゃ。 それ以外はとりたてて特徴はないが、唸り方が凄まじい。 唸りにビブラートまでかましておるようなブレス無しのベースラインは一度ハマッタたらヤミツキじゃ。
 暴れまくるマーク(Vo、G)とドン(Ds)をまるで奴隷の様にこき使い、コントロールしておる賢い土方のオヤジさんみたいじゃ! グランド・ファンクがもしパンクに走っていたら、もっと光り輝く仕事をしたんじゃないかと!?
 最近はベーシストでも目立ちたがり屋が増えてきて、覚えたてのテクニックを嬉しそうに披露するヤツが多いけど、ベーシストが本当に目立つには、メル・サッチャーの様にサウンドを指揮すりゃええのじゃ。 
ラマー11~15位(順不同)
 
(上写真のドラマーは、左から、下記表記者順)

・リンゴ・スター Ringo Starr
・ブライアン・ダウニー Brian Downey
・スチュワート・コープランド Stewart Copeland
・テリー・ボジオ Terry Bozzio
・ジョン・デンズモア John Densmore


 では11~15位、16~20位は順不同でいくぞ。
 まずあまりにも評価が低すぎるドラマーを2人、ビートルズの
リンゴ・スターとシン・リジーのブライアン・ダウニーから。 まあわしの友人には元ベーシストが多く、彼らがリンゴ・スターを大変に褒めておるので、その影響が強いかもしれんな。 「リンゴがね、ライブやスタジオの機材が進化した70年代以降に全盛期を迎えていたら、プログレだろうがフュージョンだろうが、どんなバンドもレベルアップさせるもっとスゴイ仕事をしてたぜ!」とのことでアリマス(笑) 個性派ぞろいのメンバーのプレイのクセを知り尽くした素晴らしい接着剤的ドラミングをするんだそうじゃ!
 ブライアン・ダウニーはテクニックがあるのにそれを滅多に見せないチラリズムと、ミディアムテンポの楽曲で聞かせる程よくヘヴィでアフタービート気味のノリが絶品じゃ。

 
スチュワート・コープランドは超テクニシャンながら多彩なポリス・サウンドにフィットするビートをつむぎ出すドラマー。 ポリス解散後、リーダーだったスティングは様々なジャンルの音楽へチャレンジを繰り返しておるが、スチュワートと活動を共にしておれば、もっと完成度が上がるのになあ~って思う。

 
テリー・ボジオは、ちょっとカテゴリ分けが難しく、テクニカル・ヘヴィ・ドラマーとでも言うかのお。 一般的にはフランク・ザッパ、ジェフ・ベックとの共演やプログレ・バンドのUKが有名か。 テクニカル&ヘヴィなんてアリエナイんじゃが、テリーだけがそれをやってのけており、ルックスの華麗さもあって彼をドラム・ヒーローとする声は確かに多い。 わしゃ~ミッシング・パーソンズという変なニューウェイブ・バンドで変態的テクをかましておったテリーのプレイが好きじゃ。

 そしてわしの大好きなドアーズでドラムを叩く
ジョン・デンズモア。 元々マーチング・バンドで腕を磨いた経緯があり、まさにバンドメンバーの気分から高揚させていくご機嫌なリズム感を創出する達人じゃ。 ドアーズがブルース色を強めたラスト2作では、ジョンはジャズ・ドラミングのテクも随所に発揮してドアーズ・ブルースに逞しい生命力を与えておる。


ーシスト11~15位(順不同)

(上写真のベーシストは、左から、下記表記者順)

・ジャック・ブルース Jack Bruce
・ポール・シムノン Paul Simonon
・ボズ・バレル Boz Burrel
・ジャック・ニール Jack Neil
・ベリー・オークリー Berry Oakley


 まず
ジャック・ブルース。 バンド・アンサンブルをブチのめさんばかりのテンションが抑制出来れば、もっと上位なんじゃけどな~(笑) それが最大の個性と言えばそれまでなんじゃが、この人の悪影響がいまだにロック界に残っておると思うのでこのランクは悪しからず。
 
ポール・シムノンもジャック・ブルース同様なプレイが見受けられるが、こちらの場合はパンクロック(クラッシュ)だし、ルックスがカッコイイから許せるって、とんでもない評価基準じゃな(笑) ポールはクラッシュ加入直前に“一夜漬け”同然にベースをマスターしたらしいが、その割にはバンドサウンドの特性を知り抜いたプレイじゃよ。 センスあるヤツって、このお方の様なタイプを言うんじゃろうな!

 
ボス・バレルは、元来ブルースバンドだったバッド・カンパニーのサウンドに、フレットレスベースでアップライトなノリを持ち込んだ職人じゃ。 ロック・ファンにフレットレス・ベースの魅力を紹介した功労者でもある。 ポール・ロジャース(Vo)大好きのわしも、いつもボズの躍動するベースラインに聞き惚れておる。

 お次は、ブルー・キャップスの
ジャック・ニール。 へそ曲がりな感性と言われそうじゃが、ギタリストのクリフ・ギャラップのギャロッピング奏法は、ジャックの堅実なプレイがあってこそ成立するように聞こえる! ロックンロール・ウッドベースの基本じゃし、もっと評価が上がってもええ代表格のベーシストじゃ。

ベリー・オークリーは70年代のサザンロックを牽引したオールマン・ブラザース・バンドのベーシスト。 オールマンをビッグにしたのはライブのインプロビゼーションであり、アメリカ南部の大地から立ち昇る熱気のようなサウンド・テイストはこの方のライブ誘導力にあったとわしは睨んでおるのじゃ。


ラマー16~20位(順不同)

(左写真、左側上、からカール・パーマー、カーマイン・アピス。
右側上から、ビル・ブラッフォード、ニール・パート、ドン・ブリュワー)

・カール・パルマ― Carl Palmer
・ビル・ブルフォード Bill Bruford
・ニール・パート Neil Peart
・カーマイン・アピス Carmine Appice
・ドン・ブリュワー Don Brewer


 音楽サイトなんかでテクニシャン・ドラマーのランキングがされる際、必ずプログレ系のドラマーが上位にくるもんじゃけど、わしはスゴイテクニシャンではないものの、エマーソン・レイク&パーマーの
カール・パーマーが好きじゃ。 かなり強引じゃけど、ロックのダイナミズムとクラシックの様式美を融合させたサウンドにカールのドラマチックなフレーズの反復は不可欠じゃった。

 二番手はイエスとキング・クリムゾンという二大プログレ・バンドでスティックを振るった
ビル・ブルフォード。 プログレ・サウンドが情緒的になり過ぎず、あくまでもロックであり続けるためにビルのドラミングは不可欠じゃった。 また曲調がアバンギャルドに展開してロックから遊離しそうになるとビルがビシッとロックサウンドに戻すテクを発揮するパートはスリリング。

 テクニシャンと言えば、その最高峰と言われるのがラッシュの
ニール・パート。 まあ筆舌に尽くし難い超絶テクをかまし続ける天才ドラマー。 あまりにスゴ過ぎて、楽曲じゃなくてドラミングそのものを聞いてしまうほどじゃけど、正直「だから何?」って気分になる時もあって、かようなランクに落ち着いた次第。 ここまでのテクが果たしてロックに必要なのか?って思わせるわい。

 テクとかパワーは別として、ドラムサウンドの音質そのものが大好きなのが
カーマイン・アピス。 ヴァニラ・ファッジ、カクタス、ベック・ボガード&アピス、ロッド・スチュワート・バンドで活躍されたロック・ドラムの理想的なセンスの持ち主じゃ。 適度にヘヴィで適度にパワフル。 オカズの入れ方もカッコ良くて快感!

 んじゃここらでヘタウマ・ドラマーの代表格の
ドン・ブリュワー(グランド・ファンク・レイルロード)を入れておこう。 まあ70年代ロックに詳しいファンならば、「オメエ、どういう耳してんだよ!」って笑われてしまうに違いない。 ただ力任せに引っ叩くしか能が無いとの評価が多いが、野卑で下品だけど男臭い独特のセクシーなバンド・サウンドにフィットしておるから、それでエエではないか!


ベーシスト16~20位(順不同)

(右写真左側、上からマイク・ラザフォード、フィル・チェン、ジョー・B・モードリン)
(右写真右側、上からジョン・エントウィッスル、タル・ウィルケンフェルト)

・マイク・ラザフォード Mike Rutherford
・フィル・チェン  Phill Chenn
・ジョー・B・モードリン Joe B maudlin
・ジョン・エントウィッスル John Entwistle
・タル・ウィルケンフェルド 
Tal Wilkenfeld

 
 ベーシスト16~20位は、まったくタイプの異なる布陣となったわい。 
マイク・ラザフォードはプログレ時代のジェネシスのベーシスト。 プログレ系のベーシストはわしは何故か苦手が多いんじゃが、マイクのプレイはベースギターなのにめくるめくジェネシス・サウンドにイルミネーターの様な多彩な色どりを加味させておるように聞こえるマジック・ベースなのじゃ。 ブリティッシュ・フォーク・カントリーからプログレへ劇的に変化して成功したジェネシスの陰の功労者じゃよ。

 一般的には無名の
フィル・チェン、この方は全盛期のロッド・スチュワート・バンドの一員であり、大ヒット曲「アイム・セクシー」に飛び跳ねるようなリズム感を導入しておった。 またジェフ・ベックの名盤『ブロウ・バイ・ブロウ』では上述のマイク・ラザフォードの様な美しいベースラインで“フュージョン的ギター・インスト”という新しいジャンルの確立に大いに貢献しておった忘れがたき職人じゃ。

 
ジョー・B・モードリンとはバディ・ホリイ&クリケッツの地味~なベーシスト。 わしにとってバディ・ホリーのメロディはいろんな感性の狭間に漂っていてなかなか実体化してこないんじゃけど、この方のベースがある時極上の座り心地を用意してくれる。 その本質はなかなか聞こえてこないんじゃけど、不思議と気になってしょうがないような存在じゃ。

 ココで一気に超個性派ベーシスト、ザ・フーの
ジョン・エントウィッスル! ランキングの登場が遅すぎた感が今更ながらあるが、ザ・フー・サウンドが暴走する時にチェンジされるバンド・ギアそのものといった特徴が魅力。 その印象が強烈過ぎて幅広い評価に繋がらないんじゃな。 70年代になるとザ・フーではスタジオ・ミュージシャン的な完全な裏方に回ることが多かったのも残念。 でもバンドをテイクオフさせるポイントにおいてはこの方の右に出る者はおらん!

 
タル・ウィルケンフェルトは、ベース・ボディの上に右のおっぱいを乗っけて弾くのがタマラン!って何を言わせるんじゃ(笑) 21世紀初頭からジェフ・ベック・バンドの一員として登場し、そのカワイイ容姿とは裏腹に、ジェフの過去の名曲に被った埃を一掃するような独創的なベースラインは迫力満点じゃ。 その音色とセンスはジャズなんじゃが、ジェフのロックギターに見事にフィットさせるフレーズを編み出す才能は、まだまだノビソロがある!


 前回の女性シンガー・ベスト30よりも言いたい放題になってしまって、ランキング順位より、ランキング理由にアタマに来た諸君もおるじゃろうから申し訳なくもあるが、まあ酒飲みながらワイワイロック談義をやったら、誰だってこんな内容になるんじゃないか!(笑) そう、七鉄が酒飲みながら言いたい放題、やりたい放題をやるのが「300回記念連載」でありますぞ! 諸君もお時間がたっぷりある時に一杯やりながら己のベスト20、30をやってみてくれ。 知識があればあるほどランキング付けが難しくて頭がこんがらがってきて、最後は自分の感情のおもむくまま、酒の酔いに任せてまとめに走るに違いない!
 とりあえずは、今回もお付き合いありがとう。 ではでは次回も引き続きこのノリでいくのでよろしくな!!

(右写真、キース・ムーン、ポール・シムノン)



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