NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.273

 只今わしは、“危険がいっぱい”なカンボジア・プノンペンにおる。 このところ外国人観光客相手のひったくりが頻発しており、わしもつい先ほどランチから宿に戻る途中、三度目の未遂に遭ったわい。 実害は防げたものの、犯人の乗ったバイクのハンドルがひったくり失敗の際にわしの右手甲を直撃! 骨が折れれたかってほどの激痛でその場で座り込んでしまったわい。
 急遽持参していた湿布薬で腫れを抑え、痛みに耐えながらこの度の寄稿を迎えたが、どうか哀れと思って読んでつかーさい(涙)
 こういう被害に遭うと、やはり治安の良い日本にいるのが一番いいと実感するわい。 北朝鮮へのアメリカへのミサイル威嚇によりそのとばっちりを喰らっておる日本じゃけど、国内は基本的に平穏じゃもんな。諸君、今一度日本の治安の良さを噛みしめながらThe-Kingアイテムでファッショナブルなロックンロール・ライフを楽しんでくれたまえ。 いやあ~右手が痛くてこれ以上ご挨拶を続けられんわい・・・。

 さて物騒なオハナシはこれぐらいにして、この度の本題に入ろう。 今回は、わしの撮影した写真を軸にして、2017年プノンペンの実態をお届けしたいと思う。 写真撮影の技術はまだまだ未熟であり、とてもとても人様にお見せするレベルではないんじゃが、実は現在元報道カメラマンというお方と一緒に動き回っており、こういう機会は長旅の中でも稀なんで、恐らくわしの写真にもなにがしかの進歩があるだろう!という希望的観点に基づいて披露致しやす!

 そのカメラマンT氏、御年68歳、報道カメラマン歴40年じゃ。 現役を退いたとはいえ、現在も東南アジアを精力的に旅しながら色んな写真を撮影しまくっておる。 どういうわけか、わしがプノンペン入りすると必ずT氏と鉢合わせする。 最初は共通の知人を介して知り合ったんじゃが、メルアドやIDを交換することはなかった。 それでもその後の度重なるプノンペンでの再会により、T氏とわしは自然に打ち解けるようになった。

 肝心のT氏の写真作品は、芸術的でも商業的ショットでもないが、何というか、被写体が静物であろうと動物であろうと、被写体の“気”が発せられてくる瞬間”の捉え方が抜群に素晴らしい。 「これが報道カメラマンの技術ってものなのか!」と唸る思いがするんじゃな。 以心伝心なのか、お互い酒好きってことが幸いしたのか、T氏はわしにとても親切にしてくれるようになった。
 そこで今回のプノンペン滞在において、T氏と出来る限り行動をともにすることで、少しでもI氏の撮影技術を学んでみようと決意した! 撮影状況に応じて複数のデジカメを使い分けるT氏に対して、わしの撮影道具はアンドロイドのスマホのみ。 それでも「被写体の気」の読むコツを何としてでもつかみたくてレクチャーを申し出ておるのじゃよ。

 今回のコラムでは、「一丁カメラマンの修行でもやってみっか」という気紛れを起こしたわしの写真と、スペシャリストのT氏からのアドバイスを併せて紹介することで、報道写真つうもののイロハ(の一部)ってもんを少しでも諸君にお伝えできれば幸いじゃ。
 (上写真は、プノンペン市内でもっとも高層のビル「プノンペン・タワー」最上階ラウンジからの撮影)

七鉄のロック回り道紀行~Vol.16 2017年カンボジア雑記/プノンペン編
気分は新米報道カメラマン!
報道写真のプロが七鉄に伝授した?!撮影の真髄


■ パノラマ的全景写真編~「これから何かが起こる!」と感じさせるように撮れ!■



 プノンペンの商業ビルではもっとも高層な「ソリア・デパート」の8階屋上から撮影した写真。 左側がT氏、右側がわしの撮影した写真。
 写真内中央の斧の様な型の建物は、プノンペン有数の高層ビル「カナディア・タワー」。右側の横に伸びる黄色の建物は、プノンペン最大の市場「セントラル・マーケット」。
 しっかし「何かが起こると感じさせる」って一体どーすりゃええんじゃ! 雲の動きや太陽光線の具合を計算しろってことなのか。 T氏の指摘通り、わしの写真は確かに起伏がなく、のっぺりと写っておることは事実じゃな。
 大体ソリア・デパートのエレベーターは、エレベーターガールの操作により通常は6階止まり。 それを立ち入り禁止の8階まで行かせてしまうT氏のなんとも厚かましい行動力(笑)。
「(8階指定のボタンを)自分で押しゃあいいんだよ。 押されればエレベーターは行くっきゃないんだから。 キミ(わし)は酒好きじゃないか。 酒好きなら少しでも高いところに登りなさい!」ってジョークもふるっておったわい!


■ パノラマ的全景写真番外編~現実と非現実との境界線を注目せよ!■

 「ソリア・デパート」8階屋上からの撮影を終えて引き上げようとすると、T氏は依然としてファインダーを覗いておる。 しかも屋上最先端にある危険防御柵をアングルに入れて撮影しておる。
 「この柵は、ここから先の進入は危険という合図。 撮影可能なギリギリの地点だよね。 つまりここは現実と非現実との境界線なんだよ。 色んな境界線の周辺には見過ごしている現実があるんだ。 柵の隙間から見える全景を撮ってみなさい。 君がいつか、プノンペンの裏話を書く時に紙面を一風変わった雰囲気で飾ることのできる1枚になるかもしれないよ」と。
 優れたショットが撮れたとは言い難いが、希望していた全景写真がとりあえず撮れてそのまま引き上げようとする自分の欲の無さ、探求心の浅はかさに気が付かされたアドバイスじゃった。


■ 雨天撮影編~スコールの中の“動き”を探せ!■

 東南アジア特有のスコール(短時間のどしゃ降り)の情景を写真に収めるのはド素人にとって至難の業。 わしも何度かトライしたものの、肉眼で見た感覚よりもはるかに写真全体が水煙でぼやけてしまっておる。 スコールを跳ね返す道路や建物の水しぶきも、肉眼では爽やかに映ったとしても、写真になると汚らしいだけになってしまう場合がほとんど。 激しい降雨のスピード感もまったくとらえることができない。
 だからわしは、T氏一緒に動き回っている最中密かにスコールがやってくることを待ち望んでおった。 そして、その時はついにやって来た!

 スコールが本降りになってから1分、2分、3分、T氏はカメラを胸元に持ってきてはおるが、まったく動かない。 アングルを計る動作も無し。 やがてスコールの中で我々の目の前は通り過ぎようとするトゥクトゥク(三輪自動車タクシー)が現れると、T氏は風のように軽やかに動いて見事なショットを撮影。(写真上)
 わしの方はというと、視界の中で起きている変化に即座に反応することが出来なかった。 というのも、すさまじいスコールで視界そのものが不良であり、トゥクトゥクが通り過ぎる光景を「撮影する光景に足らず」と見過ごしておったのじゃ。
 「スコールは肉眼では全景がぼやけてしまうから、撮影のタイミングを見誤ることは結構あるんだ。 基本的に激しい雨の写真は難しから、雨の激しさに気持ちを奪われる事なく、雨の中で起こる動く光景を待っていて、それがやって来たらとらえるんだよ」
 う~ん、なあ~んとなく理屈では分かるような気もする・・・後日、別の場所で一人でスコールに遭った時にやってみたが(右写真)、いかがなもんか?


■女性と子供撮影編~女性の撮影は、ヨイショを絶やさないこと!子供の撮影は慈しむようにファインダーを覗くこと!!■



 写真撮影ド下手のわしは、その中でも女性の撮影が最悪(笑) 大体東南アジアの一般女性は恥ずかしがり屋さんがほとんどで、撮影をお願いしても断られるか、逃げられるのが関の山。 運よく撮影に応じてくれても、緊張して顔がこわばるか、カメラの方を見てくれない。
 T氏が女性の撮影をお願いしておるのを観察しておると、まず最初にお相手を徹底に褒めちぎる。 容姿を褒めるのは当たり前で、服装、アクセサリー、髪型など至る所を褒めておる! そして撮影している時もずぅ~とヨイショの声掛けを絶やさない! そういえば、ファッションモデルの撮影現場では、カメラマンがモデルさんを褒めまくっておるのは当たり前じゃったな!
 さっそくわしもやってみた! 撮影技術云々は別として、以前よりかは遥かによいショットが撮れたと思う! ちなみにT氏は、“自分の好みのタイプの女性”や“通いたい食事処等で働く女性”の写真は、必ず後日プリントしてお相手に差し上げておるそう! 女性には、やはりヨイショとマメさが大切じゃ(笑)

 また子供の撮影は、カメラのファインダーを通して子供を慈しむように見つめると必ずいいショットになる!とT氏は断言。 「子供の瞳は、人類の宝物。 その気持ちを忘れることなかれ!」だそうです(笑)
 まあ現代の日本で子供の写真をお願いしても、下手したら不審者として通報されてショッピカレル時代じゃ。 東南アジアにいる間に子供の撮影の練習に精を出すしかない!


■街中撮影編~都会は撮影ネタの宝庫。慎重かつ素早く動き回れば、おもしろい、珍しい、初めて見る光景と出会うことが出来る!■



 (写真左)
大変珍しいトゥクトゥクの女性ドライバー。 「おっかさん、今日も元気に頑張っているな!」って感じ。 T氏と行動をともにしていなかったら、彼女とも出会わなかったじゃろうな。

 (写真中央)
物売りのオバチャンと談笑する若い僧侶。 僧侶の笑顔なんて街中では滅多に見られないだけに希少な場面じゃろう。 ちなみに僧侶の近距離撮影は基本的には失礼らしいので、このショットは望遠機能を使ってパシャリ。

 (写真右)
自転車の単なる接写じゃが、よく見ると日本の防犯登録シールが! この自転車を扱う店の自転車約100台は全て日本からの盗品!!こういう店が堂々と経営されているのもプノンペンの魅力?! それにしても、街中を散策しながら即座にこういう店を見つけてしまうT氏の嗅覚には脱帽じゃ。


■ 全盛時の遺物撮影編~寂れるものは寂れるままに、悲しいものは悲しいままに

 急速に都市化の進んでいるプノンペンは、至る所で新旧交代劇を見ることが出来る。 T氏もわしも、当然すたれていくものに哀惜の念を抱きながらシャッターを切っておった。 しかし、T氏とわしとは、被写体の見つめ方、写真に収める意図がまったく違った。
 わしは寂しく廃れていく物を一種の歴史記念物として観ておったが、それでは単なる記念写真で終わってしまうんだそうじゃ。T氏は「廃れていく時代の流れは誰も止めることは出来ない。 それは悲しいのだ。 だからこそ、悲しいものは出来るだけ悲しく撮るべきだ」
 悲しいものを悲しいままで撮る・・・楽しいものを楽しいままに撮るのは誰もが出来るが、その反対は確かに難しい。 だから勉強せにゃいかんとうことじゃろうな~。



(上写真左)
市場の前で客待ちをしておる人力車四人衆。 何気ない光景じゃが、「人力車ってのは、もう間もなく無くなってしまうんだ。 運ちゃんたちも、何となく寂しそうじゃないか。 彼らはトゥクトゥクやバイクを買ったり、免許証をとったりするお金なんかないからとても不安なんだ 。 それでも今までの仕事を続けるしかないんだよ」とT氏。

(上写真右)
現代のプノンペン市街では珍しくなった舗装されていない道路。 車のヘッドライトの光に浮かび上がる水たまりが物悲しくも美しいと自画自賛するか!
 ちなみに、夜間撮影における車のヘッドライトの扱い方のコツは、肉眼で良いと思えるよりも遠目の距離で撮影することらしい。

(右写真)
かつては盛況じゃった“売春宿”。 今はマッサージ屋兼ビアバーとして細々と存続しておる。
 「ここ、君だったらどう撮る?」って言われて撮影した一枚じゃが、 「(手前の)店と関係ない金網と、奥で座り込んでいる男がいい雰囲気出してるな。 うん、キミ、センスはいい。 でも俺だったらここは夕暮れ時に撮るな!」と評されやした(笑)


■ 女性を美しく撮影する方法編?!~女性の“ささやかな”幸せの瞬間を逃すな! ■


 (左写真)
 猛暑の街中を歩き回っておる最中、突然T氏が立ち止まった。 それは小さな美容室の前であり、丁度女性客がシャンプーをしてもらっておる最中じゃった。 T氏は女性客と女性店員に向かって「ビューティフル」「ユーアーハッピー」と声をかけながらシャッターを切り始めた。
「いやあ~二人ともとても幸せそうじゃないか! いい写真の基本は、男性ならまず女性の幸せそうな表情を見逃さないことだよね! こっちだってハッピーになってくるじゃないか」と。
 最初は「こんなショット、何がおもしろいんじゃろう?」と思ったが、お互いのハッピーショットか、なあ~るほど! ハッピーで楽しくないと、何に取り組んだって上達せんもんな~。

(下写真)
 こちらは、丸一日撮影で歩き回った後に、T氏と二人でビールを飲みまくったビアガーデンでの一コマ。 
 既に営業時間が過ぎて女性店員たちは私服に着替えて帰る準備を始めておったんじゃけど、T氏は依然として席を立たずお勘定もしない。 やがて私服姿の女性店員たちが店の出入り口付近に集まり始めて、彼氏か友達かがバイクで迎えに来るのを待っておる。 T氏はこの時を待っていたようじゃ。 
 「仕事が終わって私服に着替え、お迎えを待っている。 この時って、彼女たちは素の顔に戻ってリラックスし始める時なんだよ。 営業スマイル無しでかわいいじゃないか。 これを逃がすって手はないだろう!
 言われるままに彼女たちにスマホを向けたわしじゃが、ビールピッチャー4杯くらい二人でペロリと空けてリラックスしておっただけに、撮影魂が依然として旺盛だったT氏に対して、いやはや何とも恐れ入りましたってのが本音じゃった!


 以上、T氏のご指導、それによるわしのショットはいかがなもんでしょーか! 所詮まだまだ写真撮影ド素人のわしなんでお恥ずかしい限りではあるが、まあ「旅の恥はかき捨て」ともいうし(笑)、ご紹介したショットの中で1枚でも諸君が楽しめるものがあったらならば幸いじゃ!

 この度の撮影のお師匠となったT氏。 とにかく行動がエネルギッシュであり、猛暑のプノンペンを2~3時間ぶっ続けて歩き回ることなんてへっちゃら! 更によく食べよく飲み、そしてよく喋る!(ついでにかなりの女好き~笑) その凄まじいアクションは、周囲の旅人仲間が行動を共にすることを躊躇しておるほどじゃ。
 また自分のアピールの仕方もハンパなく、撮影した写真を惜しげもなく披露、解説するのじゃ。 その熱弁は、ほったらかしておれば一日中続くんじゃねーかと思えるほどパワフルじゃ。
 例えわしに写真のセンスはなくとも、T氏の行動力と撮影魂ってのを見習って、撮影の良いタイミングを少しでも捉えることのできる集中力、鑑識力だけでもいつの日か身につけたと願っておる!

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