NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.264

 4月10日の帰国まで残り一週間あまり。 住み慣れたタイ・バンコクにおいて、旅人から日本人、The-Kingのスタッフに戻るための精神統一をやっておる?! お気楽モードのわしから、「ビバラス」参加で超多忙な日々を送っておるThe-Kingのボスへの、せめてもの心遣いじゃよ(笑) まあバンコクってのはかつて数年間仕事をした場所であり、長旅の時は幾度となく骨休めに立ち寄っておる場所でもあり、東南アジアの中ではもっとも心がやすらぐんで、自分をいかようにもコントロールできるのじゃよ。
 さて、只今バンコク、タイ愛好者の間で激震が走っておる! 今年9月から「タバコとお酒(プラス〇〇店)の大幅値上げ」が発表されたからじゃ。 「たかがタバコと酒の値上げだけだろう」と思うなかれ。 タバコと酒以外でも年々旅行者や長期滞在者にとって都合の悪い制度改正が次々と発表されており、外国人にとって既に「タイ国良いトコ一度はおいで」ではなくなってきておるのじゃ。 「タバコとお酒(プラス〇〇店)の大幅値上げ」は外国人締め付け制度の真打ちと言えるのじゃ。

 タイの日本人観光客は依然として増加の一途を辿っており、その数は既に年間150万を越え、長期滞在者は推定8万人と言われておる。 わしの日本の知り合いの中にも、「老後はタイでのんびり暮らしたい」「仕事がきついから、長期休暇をとってタイで過ごしてみたい」という連中は結構おり、彼らはネット上で繰り広げられておるタイの魅力的な体験談を信じ込んでおる。だから移住とか長期滞在の相談を受けた際、わしはより事細かにタイの実態をお伝えしてきたが、もうすんなりとオススメできなくなってきたわい。
 諸君の中にもタイ経験者は結構おるんじゃないか?とわしは推察しておるが、もし移住や長期滞在を考えておる方にとっては予め警鐘を鳴らしておいた方がいいんじゃないかという判断のもとに、今回はタイ国の近年の外国人をじわじわと締め付けにかかる制度の改正を書いてみたい。

20年ぶりの長期滞在者大移動か!
今秋の嗜好品大幅値上げで、旅人の聖地バンコクの火が消える!?


■ 長期滞在者ご用達の格安宿が消える?! ■

 まず、「タバコ、酒の大幅値上げ」よりも、もっともっと深刻な懸念についてじゃ。 わしはバンコクに長期滞在する際、一泊300〜400バーツ(約900〜1200円)程度の格安の宿を複数使い分けることにしておる。 エアコン無しでトイレ・シャワーは共同じゃけど、それ以上に宿泊者同士の情報交換の場としての価値が絶大なのじゃ。 中には来る日も来る日も宿の中で死人のように過ごしておる“終わっちゃった”人もおるが、安宿の中には旅のツワモノも多く、彼らとは一度仲良くなりさえすれば、ネットや情報誌の情報よりもはるかに有益で生きた情報を交換出来るのじゃ。
 しかし近年はこの手の宿がぽつりぽつりと廃業していっており、残りは僅か・・・。 値段だけで判断すれば他にも存在するが、場所が僻地で治安が悪かったり、衛生状態が悪かったり、鞍替えする気分にはまだなれん。 バックパッカーの聖地といわれた安宿街カオサン・ロードも、今やちょっとしたオシャレな一画に変わってしまい、海外の右も左もわからないオニーチャン、オネーチャンばっかり。 本格的な長期旅行者、目的をもった長期滞在者はお呼びではないのが現状じゃ。

 わしらが“最後の砦”と思っており、現在も宿泊中の某日本人宿も、年内中の閉鎖が噂されておる。 先日オーナーとお話させて頂く機会を得たが、「もう、あんたら(長期旅行者、長期滞在者)にとってタイは都合の良い国ではなくなってきとるしなあ〜」と言われてしまったわい。 一生懸命に宿の存続をオーナーにお願いした結果、「まあ当面は安心せえ」なる言質はとったが、どうなることやら。
 しかし最後には「あんたも、旅はもう十分じゃろう。 いつまでもあっちこっちフラフラしとらんと、タイで一旗上げたらどうや!」と。 挙句に「タイで男になる為にはなあ、タイの女が必要じゃぞ。 わしがエエ女紹介したる!!」とか、「わしはエエ物件も持っとるぞ。 そこでタイの女と餃子でも焼け」とか話がおかしな方向に進んでしまった(笑)
 「なんで餃子なんですかい?」と伺うと、「これからのタイは専門店や。 そうや、酢豚も作らんかい!」って言いだす始末〜。 餃子と酢豚作りの修行のために、次回は中国にでも行ってみるかって、そんな話じゃなかったな。 いやいや失礼つかまつった!


■ タバコと酒は日本より高値になる?!■

 9月から値上げされるタバコと酒じゃが、まずタバコにおいては1本につき一律5バーツ(約15円)課税され、タバコ1箱(20本)で100バーツ(約300円)値上げされることになる。 現行では1箱45〜100バーツ(135〜300円)のタバコが日本以上の価格になる勘定じゃ。 年に3〜4回の値上げを続けてきたタイのタバコじゃが、ついにとんでもない値上げが断行されることになり、喫煙者は悲鳴どころかため息もでない(苦笑)
 実はタイの嫌煙ブームは年々広がっており、「タバコは賤業(せんぎょう)者(卑しい仕事をする者)の品」というイメージ戦略もとられており、パッケージには「ホラーラベル」と呼ばれる喫煙による健康被害をクローズアップした気持ちの悪い写真があしらわれておる。
 また食事処での喫煙は完全ご法度であり、タバコのポイ捨てには2000バーツ(約6000円)の罰金が課せられるのじゃ。このポイ捨て罰金も、10年前に比べると5倍に跳ね上がっておる。
 夜の街に繰り出すと、以前より巡回警官の数が増えており、彼らは眠気眼をこすりながら「ポイ捨て罰金徴収」の任務を遂行しておるのじゃ。 (もっとも彼らの仕事は、徴収した罰金をチョンボする小遣い稼ぎが真相なのじゃが)

 次に酒。 これはアルコール度数によって値上げ幅があるので現在のところ正式な値上げ価格の発表はないが、どうやら330mlの缶ビールが現行の35バーツ前後(115円)から2倍になるとのこと! 大瓶ビール(現在約60バーツ=180円)も倍近くなるという。これが施行されると日本より遥かに高い・・・まさにぐうの音も出ない値上げじゃわい。
 タイ産のウイスキーや焼酎類もどうやら日本と同額あたりになるらしく、その低クオリティを考えるとバカバカしくて買う気にもならなくなるもんじゃ。


■厳しさを増す出入国管理法■

 現在のところ日本人はビザ(査証)無しで30日間タイに滞在出来て、延長したい場合は、出入国管理局で所定の手続きをして1900バーツ(約6000円)を払えば更に最大30日間滞在できる。 また高い費用さえ払えば、日本国内や第三国にて三ヶ月間、半年間、一年間など滞在出来る色んなビザの取得が可能じゃ。 そのビザの中には、長期休暇や長期現地視察にはもっとも使い勝手のよいダブル・エントリー・ビザがあり、一度タイ国外に出た後に再入国すれば4〜6ヶ月タイに滞在出来るのじゃ。 しかしこれが近年消滅してしまったのじゃ。
 そこでタイ愛好者たちは仕方なくビザ・ランという手段をとっておった。 これはノービザ滞在を繰り返すために30日間のノービザ滞在期限の切れる寸前に陸路で周辺諸国に出国して、すぐにタイに戻ってくる方法じゃ。 しかしこの方法も「陸路入国は年間2回まで」というお達しが下されてしまってオジャン。 まるで「長期滞在希望者」を目の敵にしておるようなタイ政府の制度改定じゃ。
 そのほか「永住ビザ、リタイアメントビザ(50歳以上)、労働許可証を持たない者のタイ滞在期間は、年間180日まで」という表向きには見えない制度もあるらしいが、これは間違いなく適用されておるのかどうかは不明。 出国の際に適用されてしまい、オーバーステイ代(1日500バーツ=約1500円)を徴収された運の悪い輩がいたことは事実じゃ。


■大規模な屋台規制による屋台の撤退■

 路上の屋台といえば東南アジアの名物であり、安値でバラエティに富んだタイの屋台飯はタイ庶民や長期滞在の外国人にとって絶対の味方じゃった。 3〜4年前から道路規制法が大幅に改定され路上から次々と屋台が消えていっておったが、現在では本当にその数は僅か。 見た目にも寂しい限りじゃ。 利用者は元より、屋台営業で生計を立てておった者たちは一体どこに行ってしまったのか?と心配になるほどの変貌じゃ。
 わしにとって飯屋屋台以上にその消滅にがっかりしておるのは、ストリート・バーの存在。 タイは店舗における酒類の販売時間が限られており、特に夜12時以降は酒が買えないのでストリートバーは実に有難い存在じゃった。 通常の店舗バーよりも安くて、夜風を受けながら飲むストリート・バーの酒は実にうまかったんで、それが無くなったのは誠にイタイ(>_<)。 話し相手になってくれた気さくで優しいオネーサンたちもわしは大好きじゃった・・・(笑)。
 バンコクという大都会の電飾は年々煌びやかになっていくものの、ストリートから屋台が無くなってしまったことは、なんだか「都市の命の灯」が消えてしまったように見えるのはわしだけか?! まあその分「ストリートが歩きやすくなった」とかのたまう輩もおるが、わしに言わせればそんなストリートは味気無く、舗装状態の悪いただの凸凹歩道じゃよ。


■ 〇〇店の大幅値上げ ■

 冒頭より「〇〇店」と表記したのは、まともに書くとThe-Kingのホームページの性格上において品位に欠けるとの判断でありまして(笑)、その実「風俗店」であります。
 膨大な数の観光客がタイに押し寄せる最大の理由は、MP(マッサージ・パーラー=ソープランド)、ゴーゴーバー、援交カフェ等の風俗店がタイに無数にあるからじゃ。 年々値段は上昇しておるとはいえ、経済大国に比べればまだまだ安価であり、“その為だけに”大型連休には必ず来タイする野郎どもが世界中にぎょうさんおることは諸君もご存知じゃろう。 これが観光立国タイの偽らざる実態なのじゃ。 多少なりとも風俗業に従事するタイ女性がいなければ、タイという国の経済は成立しないとまで言われておる。
 その風俗業の中のMPにおいて、9月から一斉に1回1000バーツ(約3000円)の税金が課金されることになったのじゃ。 短期旅行者や東南アジア・デビュー間もない者にとっては大変にイタイ料金改定に違いない。
 大概の長期滞在者にとってはMPは無用と化しておるが、他の風俗業や酒を扱う店が便乗値上げに踏み切ることがおおいに懸念されるのじゃ。 なんで酒を扱う店も?と思った方もおるじゃろうが、東南アジアという所は、酒と風俗は商売上において常に背中合わせ。 一部の高級店や専門店を除けば、酒の後ろには常に“ビジネス・レディたち”が控えておるんじゃよ。 もはやバンコクでは、のんびり&まったりと安酒も飲めんようになってしまうのか、って事じゃ。


 1998年じゃったかな。 確か前年に大規模なアジア通貨危機があり、またバンコクのチャイナタウンにあった巨大な安宿「ジュライ・ホテル」が閉鎖したこともあって、バンコク中の長期滞在者たちが一斉にどこかへ消えたんじゃ。 一説によると、ギャンブル好きは中国へ、女好きはカンボジアへ、ハッパ好きはラオスへ、だったとか。 わしは酒好きじゃったから、そのままバンコクに留まったってのはジョーダンでありまして、閉鎖を知らずにもぬけの殻になったジュライホテルを訪れたもんじゃった。 閉鎖されとるから人っ子ひとりおらんかったが、明らかについ先日まで大勢の宿泊者で賑わっていた匂いが残っており、置き去りにされた巨大なコンクリートの建物が炎天下の中ですすり泣いておるように感じたものじゃ。
 まだインターネットの情報網も確立されていなかったから、大勢の旅人が一斉に消えたことを驚く反面、その一種“民族大移動”的な旅人社会の動きに一足遅く乗り遅れたことを少々悔んだものじゃった。
 ふいに無人のホテルの中が見たくなり、ぶっとい鎖がかけられた鉄の門を無理矢理開けようとすると、すぐ近くの屋台で汁麺をすすっていたタイ人女性が何かタイ語でわめいた。 意味は分からんかったが、「ここはもう、アンタみたいな者(不良な旅人)が来るトコじゃないわよ!」ってニュアンスじゃったな。 それでもわしは、近くの安宿にチェックインして、初めてのバンコク長期滞在を始めたもんじゃった。
 ちなみにジュライ・ホテルの建物は廃墟と化しながらも現在も残っており、驚くなかれ1階と2階は春をひさぐ女性たちの仕事場になっておるという。

 しかしながら、約20年前にバンコクから消えた長期旅行者たちが、別天地を発見したという話はついぞ聞かんかったな。 どうやら、結局はバンコクに舞い戻ってきたというのが真相のようじゃ(笑) 20年前の周辺諸国は発展途上国どころか、発展開始国じゃったからそれも致し方ない。 旅の鉄人でさえ、長期滞在にはまだまだ耐えられない状態じゃったに違いない。
 とりあえず今夏、今秋において久しぶりにバンコクから長期滞在者たちの大移動がある可能性は高いと思うのじゃ。 今度は乗り遅れんぞ、というよりも、視察を続けて別の安息地を見つけなければいけない、という妙な使命感に燃えておる(笑)
 そんな都合の良い場所がおいそれと発見できるとは思わんが、放浪という実体が感じにくい行動にひとつの目的が出来て活力が湧いてくるというか(笑)それとも先述した定宿のオーナーのお言葉通り、「バンコクで餃子でも焼くか」?!

 まあタイという国は一度極端な法令改正を出した後、被害者たちの抗議を受けて法令を覆すことも少なくないので、しばらくは様子を見る必要はありそうじゃ。
 いずれにせよ、バンコクは旅人にとって居ずらい場所になってしまったんで、まずは他国、他都市の視察が急務じゃな!ってことで七鉄はまた近いうちに旅に出ます! これからタイ、バンコクでリーズナブルな長期滞在を目論み、期待しておる方がいらしたら、上記の情報を参考にされたし。

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