NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.228


■ロックまわり道紀行〜ハンガリー(後編)

 新作のナッソーをチェックしながら、今年のフェアウェル・パーティーはどれにしようかな〜♪などとほくそ笑んでいる諸君の顔が目に浮かぶ今日この頃じゃが、皆の衆元気にしとるかあ〜。
 わしは東欧に来て一ヶ月。 東南アジアとは別の意味で“ロックが遠い”地域におるが、年末年始はどのナッソーで〜じゃなくて、どこで過ごそうかのお〜って思案しとるわい。  既にハンガリー、スロバキア、チェコ、ウクライナと回っておるが、ポーランド、オーストリア、クロアチア、ルーマニア、ブルガリアなどなど未踏の国はぎょうさんあるしなあってトコじゃ。 ポーランドの上のバルト三国(ラトビア、リトアニア、エストニア)も魅力的じゃが、「今から行ったって、寒くてただのど田舎だぞ」とリトアニアの青年に言われてバルト三国はリストから外したわい(笑)

 しかしまあ、そんなこんなでまだまだ放浪気分真っ只中の七鉄であるが、前回に引き続き今回もハンガリー・ブダペストの話をさせて頂きたい。 とはいえわしは観光ガイドではないので、体験談を交えた「よもやま話」で後編をまとめてみることにしよう。 現在はブダペストを離れ、ハンガリーの隣国ウクライナの首都キエフにおるんじゃが、早くもブダペストに戻りたくてしょうがない! わしはブダペストに心臓を鷲掴みにされてしまったようじゃな。 その割には「よもやま話」の内容はぜ〜んぜん大したことないかる〜いオハナシなんで(笑)、どうか安心して読んでくれたまえ。
 なお冒頭の写真は、ハンガリーが独立国家になるために大いに貢献したドイツ系貴族ハプスブルク家の家紋ともいうべき鷲のモニュメントじゃ。 首都ハンガリーのシンボル、「王宮の丘」の上から、訪れる者を日夜歓迎しておる(見張っておる?)雄々しきモニュメントじゃ!


七鉄のロック回り道紀行 東欧編 Vol. 2
“ドナウの真珠”ブダペストを擁するハンガリー
(後編)



●Part 5  王宮の丘〜ブダ城、セント・マーチャーズ教会

 前回「王宮の丘の上には何があるのか? それは次回・・・」って思わせぶりをかましておったので、紹介するぞ。
 ブダペストの街を大きく二分するドナウ川に架かるもっとも美しい橋「セニーチェ鎖橋」を渡ると、目の前に「王宮の丘」が迫ってくる。 ここはブダペスト観光のメインの場所であり、約70メートルの丘を登ると、世界遺産「ブダ城(宮殿)」とセント・マーチャーズ教会が建っておる。 ぱっと見の宮殿はヨーロッパ独特のゴシック様式によるありきたりの石造宮殿なんじゃが、どうも雰囲気が異様なのじゃ。 
 歴史を調べてみると、周辺の列強国に何度も侵略、占拠され、その都度破壊と再生、もしくは修復を繰り返しており、その苦難の経緯が建物に異様な情感を与えておるんじゃな。 また近年では国の行事等でたまに使用されるだけで普段は無人宮殿のようであり、その利用されていない無機質さも相まって観光ポイントとしてはちょっと不気味じゃ〜。
 この地に宮殿が建立されてからかれこれ800年が経過したらしいが、ヨーロッパの城マニアに言わせると、原型をしっかりとどめている(再現されている)宮殿の中ではもっとも威嚇的でダイナミックな様相とのことじゃ。

 宮殿から徒歩10分くらい移動すると、見目麗しいセント・マーチャーズ教会に出会うことが出来る。 ヨーロッパの教会では、見た目に温かみを加えるためにフレスコ画が用いられておる場合があるが、ここの教会は屋根の部分に色鮮やかなモザイク模様が施されており、不気味な宮殿を観た後では誠に心暖まるもんじゃ!
 しかもこの宮殿から見下ろす光景はまさに絶景! 旅行本や旅行パンフレットでブダペストが紹介される際に用いられる写真は、ここから撮影されたものがほとんどじゃろう! 悠然と流れるドナウ川、ドナウ川に豪勢な装飾を施す「セニーチェ鎖橋」、美しく荘厳に建つ国会議事堂、彼方に広がるペスト側の街並み。 昼夜問わず、眺めることの出来るその構図の美しさは完璧じゃ!


●Part 6 宿の目の前にアナログディスク屋!

 わしがブダペストで逗留しておった宿は、日本人バックパッカー専用の「アンダンテ」。 一泊10ユーロ(約1300円)とチト割高じゃが、大陸横断系のツワモノも多く立ち寄るという噂も高いので、情報収集の為にもわしはここを選んだ。
 ところが驚いたことに、アンダンテが含まれる建物のほぼ正面に、ロック専用のアナログ盤屋さんがあって、旅の情報収集よりもアナログ盤チェックを優先してしまった(大笑)! あまりの至近距離に3、4日ほど気がつかなったほどで、「アンダンテ」で仲良くなったロック好きの青年もわしに言われるまで知らなかったほどじゃ。

 品揃えは特別にレアものがあるというわけでもなく、東欧独自の編集盤が時たま見つけられる程度じゃが、一応エルヴィス、ビートルズ、ストーンズらのメジャー路線の正規盤アナログディスクはかなりの種類が取り揃えられており、現在アナログブームが再燃しておるという日本でも、枚数からいってここまで集められておる店はまだ少ないじゃろうな。
 「何故アナログ盤?」ってことを店主さんに伺ったんじゃけど、残念ながら英語をあまり話すことのできない方で、詳しい話はほとんど聞けなかった。 どうやらニュアンスから、アナログ盤の音が好みとかいうポリシーではなくて、おおぶりのジャケットがいいとか物量感が嬉しいじゃないか!とかそんなノリで店を始めたみたいな事を言っておった。 値段はビートルズ以外は1枚2000〜2500フォリント(800〜1200円)ぐらい。 ビートルズは3,000フォリントぁら。 やっぱりビートルズはハンガリーでも人気のご様子(笑)

 残念だったのは、お客さんがみんなしずか〜にセレクトしておるので、かつてのわしの得意技、両手の親指と中指を使ってアナログ盤を次々とつまみ上げながらチェックする早業を披露出来なかったこと!(笑)


●Part 7 アナログ盤もあるイミテーション勢ぞろいのウイークエンド・マーケット

 「おもしろいモンがいっぱいあるよ」と日本語ペラッペラのハンガリー学生から紹介されたウイークエンドマーケットは、ブダペストの中心街から路面電車で10分くらいのデカイ公園ヴァーロッシュ・リゲット広場の中で開催されておる。 ここには日用品、雑貨はもとより、ほとんどイミテーションとはいえ見てくれはなかなかの似非骨董品が結構ある! ホンモノの骨董品なんかとてもじゃないが買えんが、ここなら何とか(笑)

 もっともわしが一番興味を惹かれたのは中古CD屋とアナログ屋。 ここの主人は英語堪能だったから少しロック談義をしたが、まあ詳しかったな! 逆に「オマエ、日本人なのに何でロック詳しいんだ?」って聞かれた時は吹き出したわい(笑) わしを誰だと思っとるじゃあ〜って知っとるはずないがな! しかしここでもやっぱりアナログ盤を扱っているということは、ハンガリー人にはアナログ派が多いってことなんじゃろうな〜。 主人に聞いたら、「ハンガリー人を侮ってはならんぞ」みたいな意味不明の返答がきた・・・どういう事なのか? アナログ盤を愛するほど、ハンガリーの音楽ファンは年季が入っている者が多いってことか? 「そこまで言うなら、品揃えをもっと徹底せえ〜。 なんならわしがレクチャーしたるぞ!」っつたら、「レクチャーは要らんから、イギリスに買い付けに行ってくれ!」って言われた(笑)


●Part 8 謎の「リスト・パガニーニ・ミュージック」ストア

 先述した逗留先「アンダンテ」から徒歩1分、「リスト音楽院」の目の前にあるこのお店、いまだに正体不明??? ショウウインドウにはバイオリンとかリストやパガニーニ関連のCDが綺麗にディスプレイされておるが、どういうわけか中に入れない! いつも鍵が閉まっており、ある日ドアノブの調子でも悪いのでは?と、思いっきり開けようとしたら、「200%超ウルトラ頑固ジジイ」みたいな禿げたオッサンがスゴイ形相ですっ飛んできて「あっち行け!」とばかり手で追い払う仕草をしたからビックリ。 なんじゃありゃ?
 また別の日に店の前を通り過ぎようとしたら、珍しくウインドウのブラインドが開けられており、なんとバイオリンの製作中の模様を見ることが出来た。 どうやら店の一部はバイオリン工房のご様子。 若い職人さんが懸命に作業に取り組んでおったが、その後ろにはあの頑固ジジイが!(笑) しばらくバイオリン製作を見学した後に正面入口に向かったら、白人の男性がやはり頑固ジジイから「帰れ!」の仕草をされておった(笑) なんだい、この店?

 頑固ジジイの姿がなさそうな日曜日(定休日)にブライドの隙間から注意深く店の中をチェックしたら、ストラディバリウス並みのスゴそうなバイオリンとか、みたこともないリストやパガニー二のレコードとかが!
 ここはバイオリン製作注文者や、リスト音楽院の偉いセンセー方専門の店なのかもしれん。 チキショー、もう一度ハンガリーへ行くので、必ずわしを店の中に招き入れさせるからな! まってろよ、あのジジイ!



●Part 9 世界一高級のマクドナルド

 わしは別にマック・フリークというわけではないが(どっちかというとバーガー・キング派)、世界一高級なマクドナルドがブダペストにあるってんで行ってみた。 世界一高級といっても、お味やメニューやお値段が最高級!ってワケではなくて、店構え! なるほど、欧州伝統の石造建築物の中にあり、なかなか荘厳な店構え! マックの「M」のロゴマークもシンプルなデザインだけに、建物の外観を損ねることもなく溶け込んでおる。

 中に入ると、高級ホテルのラウンジみたいなスペースの一画にマックさんはありました。 一階のエントランスから地下中1階みたいな位置にカウンターがあり、なんだか高級ホテルにチェックインするような気分じゃよ。 メニューは基本的に世界共通なんで特別目新しいものはなく、わしはビッグマック(に見えた)のセットをオーダー。 大きさは日本のビッグマックの8割程度で、お値段もポテトとコーラがついて800フォリント(約350円)だったかな。 日本においては既にマックさんは庶民的なイメージが定着しておるが、さすがはこの店構えと店内インテリアの中ではよぉ〜く味わって優雅に食したもんじゃ(笑)
 ちなみに野外スペースもあって、夜になると周囲のゴシック建築の彫刻が街灯の光によって浮かび上がる様を見ながらのお食事となり、ファーストフードを厳粛な庭園で食べておるようなミョウチクリンな気分になるに違いない!


●Part 10 世界が注目した、“あの”ブダペスト東駅(キレティ駅)

 ほんの一か月前までシリア難民が大量に押し寄せて大変なニュースになった場所じゃ。 「そんな時期になんでわざわざハンガリーに行くんだ!」ってな連絡を何人かから頂いたけど、別に難民の中に潜り込んでオーストリアやドイツまで無料で行こう!なんてゲスな事を考えていたわけでもないし、難民にとってブダペストは一時逗留地に過ぎず、そこで各国政府からの移動援助を待っておるわけだから物騒な事をやらかすはずもない。 なのに何で日本の皆さんは心配するんじゃろう?ってのがわしの偽らざる気持ちじゃった。
 わしがハンガリー入りした9月13日には、既にほとんどの難民はハンガリー政府がチャーターした無料バスによって隣国オーストリアへ移動しており、15日に様子を見に行った時はまさに「蛻の殻」。 現場には難民たちが時間潰しに書き残した壁の落書きが残っていただけ。 周囲も綺麗に清掃されていて平和そのもの。 日本のマスコミってのは、騒ぎが起きた時は大々的に報道するものの、騒ぎが終結したっつう報道はせんよな〜。 だからわしが忠告されたように、つまらぬ誤解が生じるわけなのであ〜る。
 なお、先述した日本人宿「アンダンテ」にわしより一週間遅れでやって来たアーパーギャルちゃんから、「すいませ〜ん。 あの〜難民って何処にいるんですか?」って聞かれたわい。 マジでハリセンでひっぱたこうかと思ったぞ!

 ご参考までに、日本のハンガリー好きの知人から入った連絡によると、三井住友銀行モビットのCMに使われた撮影場所が、この東駅。 確認したが間違いないじゃろう。


●Part 11 犬もタダ乗り?路面電車と地下鉄は無賃乗車状態


 ブダペストの街中移動の交通手段はトラム(路面電車)と地下鉄なんじゃが、これがほとんど無賃乗車出来てしまうから呆れてしまう。 一応駅(停車場)の自販機で紙っ切れのチケットを買うのがキマリなんじゃけど、ほとんど無人駅状態であり、改札機はあるにはあるがそこにチケットを通さなくても乗れてしまうんじゃよ。
 車内でも車掌さんが「チケット拝見」なんてやって来ることはまずない。 一部の駅では改札機の前に係員がいるらしいが、わしはトラムも地下鉄も随分と使ったが係員なんて見たことがない。 もうタダ乗りやりたい放題なのじゃ。 もし係員(もしくは車掌)にバレた場合は、その場で罰金8,000フォリント(約3500円)という罰則があるらしいので、気の弱い旅行者はちゃんとチケットを買っとるみたい(笑)
 それから、路面電車に乗ると、デカイ犬を連れた乗客に出くわすので最初は盲導犬かと思って面食らうぞ。 ハンガリー人は大型犬を可愛がる習慣が強いようで、街中でもよぉ〜く見かける。 そのお犬様を路面電車の中まで連れてきちゃうから恐れ入るわい。 さすがに地下鉄では見ておらんけどな。 まあお犬様はタダ乗りOKだと思うがな!
 しかしまあよお仕付けられおって、周囲の者が興味を示しても、日本の小型犬みたいにすぐに飼い主にしがみつきながら「ウゥ〜」なんて牙をむくことなんてない。 かわいくて立派なもんじゃ。 しかし番犬の役割は果たせないじゃろうな〜。


●Part 12 七鉄、フォアグラ料理に挑戦!?

 諸君はフォアグラって知っとるか? わしは恥ずかしながらよぉ知らんかった。 ガチョウとかアヒルの肝臓を肥大化させた超高級料理らしいな。 聞く所によれば、現在日本へのフォアグラの輸入は、全てハンガリー産とフランス産で占められているらしい。 しかもガチョウのフォアグラの最大の輸入先はハンガリーとか。
 だからハンガリーではフォアグラがメッチャ安いはずとふんでさっそく市場へ! なんと真空パックされた約600グラムのフォアグラが1500円ぐらい! 同行した若者が「食べたい、食べたい」ってヤカマシーので買ったわい! 「作ってくれますよね?」って、わしはロッカーじゃがシェフじゃねーぞ、おい! しょーがねーから、すぐにLINEで料理上手の女性に連絡をとって即席レシピを教えてもらいトライ!

 瓢箪から駒というか何というか、この七鉄風フォアグラ料理が宿の連中に大好評! 常温に戻して塩胡椒して、2センチ幅にスライスして小麦粉をまぶす。 中火で熱したフライパンに薄くバターを引いてさっと炒めてフォアグラ・ソテー! 付け合せの野菜は、単なるひらめきで茹でたブロッコリーにしたら、これもドンピシャ! 600グラムも買ったんで、到底数人では食べきれず、翌日もまた作ったわい!
 更に炒める際ににじみ出た油を一度濾過させてから、スクランブルエッグに使用したらこれも美味い! 「難民どこにいるんですかあ?」のアーパーギャルも「生まれて初めて〜チョー感激!」だとさ(笑) フォアグラから出た油(フォアグラが溶けた液体)は全て大事に保管しておいて、「翌日スパゲッティの具やら肉料理の調理に使いなさい」って若者たちに言っておいたら、2〜3日できれ〜いにj無くなった!


 試しに前編とから通しで読んでみたら、少々しつこかった気もするが、これにてハンガリーのご紹介は一旦終わらせて頂きます。 “ご静読”誠にかたじけない!
 結局酒の話はほとんど書かなかったが、あんまりガブガブ飲む気になれなかったってのが正直なところなんで、ハンガリーとは大酒飲みの七鉄でさえ酒を控えさせた国であることも、加えて覚えておいてほしいわい! いずれ年内中にはハンガリー・ブダペストに戻ることは間違いないので、その時はロック事情とかファッションモードとかをじっくり観察して、文化的に少しは掘り下げたレポートをしてみたい。 その時はまたヨロシューな!



酔眼雑記 
〜第三の故郷になるか!?ブダペスト

 “おのぼりさん”呼ばわりされるのは覚悟の上じゃが、すっかりハンガリー・ブダペストにハマってしまったわい。 既にチェコ・プラハ、スロバキア・プラチスラバ、ウクライナ・キエフ(現在の逗留地)と東欧都市を回ったが、ブダペストが一番しっくりとくるんじゃな。 もちろん憧れのピアニスト・リストの生まれ故郷ってこともあるが、何でハマったのか。 夜のブダペストを徘徊していると不思議な心の安らぎを感じるのは何故じゃ。 観光客にとって見所はいっぱいあるし、ビールやワインは安いし、ハンガリー料理も悪くはない。 でもそんな事じゃない。
 ブダペストの住人は、とにかく静かに酒を飲んでいる。 数多くの路上カフェバー、バーを見て回ったが、みんなジェントルに静かに微笑みながら酒を飲んでおるんじゃよ。 酒を飲んだらロックを聴かにゃいかん。 酒を飲んだらみんなでワイワイ楽しくやりたい。 日本ではそんな飲み方をしてきたが、ブダペストの方々の飲み方はその真逆であり、だから連れ合いの女性を引き寄せて少々いちゃつきながら飲んでいても見苦しくないのじゃ。 意外なことに、ココにわしは惹かれてしまったのかもしれん。
 残念ながらハンガリー語はまったくダメなんで、飲んでいる連中がどんな話をしておるのかは分からん。 酒の席なんでひょっとしたら男同士でエッチな話をしとる場合もあるじゃろうが、なんかこう全体的に品性のある雰囲気なんじゃな〜。 これは単にハンガリー人、ブダペスト人の気質なのかもしれんが、ちったあ見習ってわしもジェントルに飲みたいな〜と思ってしまうし、それがまた窮屈に感じないのじゃよ。 これがこの度のハンガリー滞在でもっとも意義のある体験だったといえよう! 「おいおい、七鉄キャラとは全然ちがうぞー!」って嘲笑交じりのからかいを受けるかもしれんが、事実なんだからしょうがねーじゃろ!

 あれは夜の21:00頃。 ビールとツマミを買いに近くのミニスーパーに出かけた時のこと。 「風邪も治ったし、今夜は久しぶりにたらふく飲んだるわ〜」ってな気分で歩いておったら、かすかにリストのピアノ曲が聞こえてきた。
 CDの再生音ではなく、生のピアノの音じゃ。 曲名は多分「エステ荘の噴水」。 静かに吹き上がる庭園の噴水の情景を、きめの細かい美旋律で奏でられるピアノ独奏曲じゃが、「どっから聞こえてくるんじゃろう?」と思ったら目の前の建物の空けられた窓からじゃった。 そこはリスト音楽院の分校、分室みたいな場所であり、誰かが練習しておったのじゃ。 う〜ん、神聖じゃ、優雅じゃ、美しい夜じゃ〜って、うっとりしてしまった。 こんな体験が当たり前に出来る環境にも魅せられておる(ジュディ・オングじゃねーぞ!)ってワケじゃ。

 そんな話を宿の若者にしたら「ヘンなオッサン!」みたいな顔をされたがほっとけっ! 分からんヤツは分からんでよろしいってのがわしの流儀じゃ。 今のところ、同志はおらんでも、わし一人でわしだけの感性で充分に街を堪能できるのがブダペストなんじゃよ。 いい歳こいて旅先で群れたがったり、とにかく若い女の子と一緒いたがる日本人のオッサンはみっともないだけに、一人で外地を楽しめる感性がまだ失われていなかったことに胸をなでおろすとともに、そういう中年男にしてくれた神様、両親の躾に感謝しておる次第であります!




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