NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.220

 The-Kingが新作ノーマルパンツをドカン!と発表したな。 諸君、自分の御御足(おみあし)のファッション・センスを磨く季節じゃぞ〜。 足を使うことは、頭を使うこと以上に人間の生活の基本じゃ。 ガッツリとゲットして御御足を飾ってロックンロール・ウォークを楽しんでくれたまえ。 わしも自分の足を使って集めた情報を公開するぞ!

 3〜4年前のこのコラムで随分とブツクサ言わせてもろうたが、東南アジアに本格的なロックンロールはお呼びじゃない。 ごくたまにはどっかのホテルのイベントなんかで、白人客を目当てにした「エルヴィスそっくりさんショー」や「ビートルズ・コピー・バンド・ショー」みたいなもんがあるにはある。 都会のライブハウスにいけばアマチュア・バンドがロックの名曲コピーをやっとる時もある。 しかしどれもほとんど「学芸会」「お遊戯会」のレベルでハナシニナリマセンわい。 どれぐらいのレベルかってえと、日本の高校生が憧れのロックスターにほんの少しだけ近づけた!って喜びながら覚えたてのコピーをやっとるレベルじゃよ。 間違っても金を払って聞くレベルじゃない。

 じゃあ、ホンモノのロックンロールを東南アジアで聞くにはどうしたらええか? それは、主に白人さんが経営しとるロックバー/カフェを探すしかない。 そこでお店自慢の音響装置で流されておるCDやDVDのサウンドを楽しむしかないのじゃ。
 「東南アジアにもそんなトコあるのか?」って思われるじゃろうが、あるんじゃよコレが。 現地では有名店でもなんでもないが、不思議なことに、わしはそういうお店に割と苦労なくすんなりと出くわすんじゃ。
 見知らぬ街を当てもなく散策しておると(老人の徘徊ではないぞ!)、ある時突然に視界の中に飛び込んでくるんもんだから、正直なところ苦笑しとる。 現地特有の空気を味わっておるつもりなのに、やっぱりわしの感性はロックを忘れることを許さないのじゃ!(笑) まさに「生粋のロック・フリーク」って胸を張っておこう!
 では東南アジア各地で見つけた「ロックバー/カフェ」を紹介してしんぜよう。 いつまで経営が続けられるのか、そんな事は分からんけど、諸君が近い将来旅行する時があれば、立ち寄ってみてほしい。

七鉄が偶然に遭遇した、
タイ、カンボジア、ベトナムのロックバー/カフェ


■タイ・チェンマイ〜「ポンノン・カフェ」■

 今のところわしが立ち寄った東南アジアのバーの中で、エルヴィスの写真を大々的にディスプレイしとるのはココだけ。 バーというよりもカフェバー&レストランであり、チェンマイの繁華街の入り口「ターぺー門」のすぐ近くにある。 
 正面入り口左側の壁面いっぱいにエルヴィスの写真、それも56〜57年当時のもっともエルヴィスがカッコよかった写真ばっかりがチョイスされておる。 勿論トップに飾られた写真は、タイのプミポン国王が「G.I.ブルース」撮影時のエルヴィスを訪ねた時のショット。 タイ人にとっては“King meets King”のタイトルで有名な1枚じゃ。
 ディスプレイのセンスはともかく(笑)、「嬉しいもんじゃの〜」とか関心しながら何気に振り返ると、反対側の壁面には1963〜4年頃の若々しいビートルズの写真のオンパレード! エルヴィスとビートルズの沢山の写真に見守られながら、酒と食事を優雅に楽しめるってトコロじゃ。 ちなみにエルヴィスやビートルズ以外の壁面は、浮世絵だらけ。 ここのオーナーのセンスはオーバー・ザ・ワールド! まあ日本人大歓迎って認識しておいてもええじゃろうな。
 BGMはあったりなかったり。 ちょっと「ロックバー」とは言い難いが、チェンマイは古都なんで、オープンエアーの店にはそれなりの規制があるのかもしれんな。 まあいいではないか。 東南アジアの由緒正しい美しい古都とロックンロールの融合。 静かに穏やかに楽しもう!って気にさせるお店じゃ。


■カンボジア・シェムリアップ〜「イエロー・サブ」■ 
 シェムリアップとは、巨大遺跡「アンコール・ワット」「アンコール・トム」らを擁するカンボジア第二の都市。 一年中外国人観光客で賑わっておるが、安宿街から徒歩20分くらいの所に「パブ・ストリート」と称された歓楽街がある。 ここに入り込むとカンボジアにいることを忘れてしまうほど白人観光客だらけ。
 「イエロー・サブ」はその名前から連想される通り、「ビートルズ」をコンセプトにしたバーであり、「パブ・ストリート」のメイン通りから何本も横に伸びる細い路地の中の一画で見つけた! 白壁を基調とした店内はとても清潔感があり、所狭しとビートルズのアートポスターや名ショットの数々がディスプレイされており、整然としながらも計算されたディスプレイは明らかに専門家のセンス。 「ビートルズ・ミニ博物館」的な内装と言ってもええじゃろう。 潜水艦(サブマリン)の様な閉ざされた空間では決してなく、開放的で明るく健全なお店じゃ。
 カウンターがフューチャーされたワイン・バー的な上品な雰囲気なだけに、またモチーフがビートルズだからなのか、割とジェントルマンな白人客が多いのも特徴じゃ。 「昼間はアンコールワット、夜間はワインでビートルズ」って気分にはわしはなれんかったが、シェムリアップに滞在した5日間はいつも超満員。 「近い将来、路地裏からメイン通りの方に移転したい」とマネージャーは語っておった。


■カンボジア・プノンペン〜「ツェッペリン・カフェ」■
 カンボジアの首都プノンペンの安宿街から徒歩20分の位置にプノンペン最大の繁華街「バー・ストリート」があり、丁度その中間地点辺りで発見。 周囲は静かな住宅街で、ほんの一画にビアバーやディスコを中心とした「ゴールデン・ソリヤ」という商業施設地域があり、その端っこにひっそりと営業しておった「ロック・バー」。 名前は「ツェッペリン〜」じゃが、BGMはいつもメタルじゃったな。 店内もレベルフラッグがメインのスペースに張られていて、アメリカン・ロックのフレーバーを強調?しとるようで、どうも店のコンセプトが曖昧。 それでも、そこそこの音量でロックのBGMがあるから一応「ロック・バー」の体裁を保っておる。
 残念ながらオーナーに直接出会うことはなかったので店の詳細は不明。 近くの「Nick's Bar」というビアバーで出会ったスペイン人のカメラマンの話では、オーナーは台湾人らしい。 元々はアナログ・ディスクでツェッペリンを中心とした70年代ロックをガンガンにかけていたらしかったが、客層が悪くなる一方となり、最近では毎日閑古鳥が鳴いておるらしい。 だからヤケ気味にメタルばっかり流すようになり、ますます客足が遠のいておるんだとか。 かつての日本の「ロック・バー」や「ロック喫茶」の末路を聞いたような気がしたもんじゃ!?


■カンボジア・プノンペン〜「ガレージ」■
 先述の「バー・ストリート」、それもリバーサイドという一等地に近い?場所にて発見。 ベルベット・アンダーグラウンドの“バナナ・ジャケット”をモチーフにした袖看板が2つあり、夕暮れ時の喉が渇いたビアタイムに周囲をうろついていた際に視界に飛び込んできた!
 バーカウンター中心の小さな店じゃが、店内のディスプレイはベルベット・アンダーグラウンド、それに主に70年代に活躍した知性派フォーク・シンガーのレナード・コーエン! この奇妙なコンセプトがオモシロクて、いきなり生ビールを5杯も飲んでしまった! よく言えば、ニューヨークのグリニッジ・ビレッジとか、パリのモンパルナス辺りにある小さいがアットホームな洒落たストリート・パブのような趣きがあってなかなか居心地が良い! 

 ディスプレイを細かくチェックするわしに興味を持ったのか、マネージャー的な女性スタッフが声をかけてきて、「そんなもの(店内ディスプレイ)に関心を示すお客なんて初めて。 アナタ日本人なの?初めて話したわ!」とか何とか。 一応ジャンボ・ハンバーガー(7ドルだったか?)がウリらしいが、「みんなランチタイムからビールばっかり飲んで全然ハンバーガーをオーダーしてくれないの」と苦笑しておった。
 ちなみに彼女は、ベルベットもコーエンも全然知らないみたい! 「だってそんな人たち、カンボジア人は誰も知らないわよ!」ってお嬢さん、そんな態度でえーんかい! 一発ウンチクでもタレテやろうかと思ったが、ビールの安い「ハッピーアワー」が終わりそうな時刻だったので止めておいたわい(笑)
 日がとっぷりと暮れた20時ぐらいになると、入り口付近のオープンスペースには妖しいオネーサマたちがチラホラ。 ほろ酔い加減で出てくるお客を待ち構えておった。 まあロック的と言えばロック的!(笑)


■ベトナム・ハノイ〜「ハノイ・ロック」■

 ベトナムの首都ハノイには、「旧市街地」と呼ばれる半世紀前のパリみたいな大きな区域がある。 車二台がやっと通れるほどの狭いストリートが無数にあり、強い日差しを遮ってくれる街路樹が生い茂り、雑多な種類の商店、飲食店が延々と軒を並べており、今回のわしの旅の中でもっともオキニになった地域じゃ。 「ハノイ・ロック」はその旧市街地の真ん中辺りに位置しておる。 バックパッカー用のゲストハウスも経営しており、1階のレセプション周辺がライトな感覚のロックバーになっておる。 ロック好きの旅行者さん、いらっしゃ〜いってノリじゃ!
 「ハノイ・ロック」というと、バッド・ボーイズ・ロックの伝説的バンド、ハノイ・ロックスを連想するが、ディスプレイのモチーフはローリング・ストーンズや70年代ロック。 ストーンズのベロマークがエントランスを飾り、店内の壁には、ジミ・ヘンドリック、デヴィッド・ボウイ、ビートルズなんかが描かれておる。 バースペースや照明設備はなかなかモダンであり、イメージとしては「ハードロック・カフェ」のミニチュアといったところか。

 わしが訪れた時はどういうわけかディスコサウンドが流れておった。 とても愛想のいい白人のバーテン君に「エルヴィスかストーンズをかけてくれんか?」とお願いしたところ、「悪いな。 もうすぐディスコタイムがスタートするから、客寄せのために流さなきゃいけないんだ」とか。 詳しく聞くと、店の奥がディスコになっておるらしく、午後8時にオープンするとハノイ中の白人旅行者たちが続々と集まってくるそうじゃ。 ディスコねえ・・・お客さんをたくさん呼ぶにはその方が得策なんじゃろうけど、少々残念。
 「ここではロックは聞けないんかい?」って伺うと、昼間はロックを流しておるという。 ただし、ゲストハウス宿泊者以外の一般客には午後6時まではアルコール類を販売しないんだそうじゃ。 う〜ん、わしのようなタイプのロックファンが歓迎されとるのかされておらんのか、よくワカンネーけど、要するにココに宿泊すりゃエエってことじゃ。 ロックをビジネスに結びつけるのは難しいもんなのかもしれんなあ。


■ベトナム・ホーチミン「サイゴン・レディ」■
 ベトナム南部の大都市ホーチミン(旧名サイゴン)では、どーしてもロックバーに出くわさなかった。 歩き疲れてしまって「いかん。 このままではぎっくり腰が再発しそうじゃ」ってホテルに帰って寝た、わけねーだろう! サウナから出てきたばっかりの激汗、酸欠、喉カラッカラ状態に陥ったんで、人の良さそうなバイクタクシーのアンチャンに「ロックが聞けるビアバーへ連れて行け」と頼んで案内してもらったところ、なんのことはない。 泊まっていた宿から徒歩数分の位置にそれらしきバーがあった。 灯台下暗しとはこの事じゃな。
 まあ、ロックバーと言っても店構えはフツーのビアバーであり、一見ロックとは関係なさそう。 ビールも大して安くない。 ところが店先で客引きをやっとる若いベトナム人男性がやたらと愛想がよくて英語ペラッペラだったんで、「ロックをかけてくれんか」と頼んだら、事もあろうにドアーズをかけやがったんでビックラこいた! 「オマエ、好きなんか?」って聞いたら、「シラネーヨ。 店にあるモン、テキトーにかけただけだよ」だって。 それからクイーンとボン・ジョビ。 どーいうセンスしとるんじゃ、オマエら! でもその御厚意、感謝いたす!

 この店のあるブイビエン通りは、ホーチミンの中でもっとも外国人が集まる飲み屋街であり、夕方から白人の酔客でごった返すもんじゃが、この店だけはいつも女性客たちが静かに飲んでおる印象が強かったもんじゃ。
 一度デンマーク人のお嬢さんと話す機会があり、「ビールはデンマーク産、それもカールスバーグが一番よ!」とかお国自慢をしておった。 「ここでロックのリクエストをしたことある?」っつったら、「ノー! ココはこの通りで一番冷えたビールを出してくれるから来てるのよ」と。 はい、おみそれいたしました!


 基本的にわしは、都市部の散策をする時はガイドブックを持ち歩かない主義。 見知らぬ街で迷子になった時のために、一応現地でゲットした地図だけは持っとるがな。 予備知識無し、それも可能な限り自分の足で歩き回るから、気に入ったバーとかショップに出くわした時の喜びは大きい。 決して予定調和ではないからのお。 休憩時に飲むビールのお味も格別じゃ。 今回ご紹介した「ロック・バー/カフェ」も、そんなスタイルから偶然発見したお店ばかりじゃ! 
 しかしながら、途中何度も道に迷って、地図を見ても現在地が分からず焦った! 歳とともに、方向感覚がズレてきておるのかもしれんな(笑) でも、迷ったら最寄りのビアバーで一杯! これがまた格別ではあるけどな〜(笑) それに大概のビアバーはwifi無料サービスあるから、ビールを飲みながら現在地を確認。 散策の仕切り直しが出来るのじゃ。
 まあポケットwifiでもゲットして、Googleマップで常に現在地を確認できるようにしておく手もあるが、休憩時のビールのお味が落ちるような気がするから、多分ポケットwifiは買わないじゃろう!

 ビアバーでひと休みしておると、バイクやトゥクトゥク(4人乗り3輪軽便タクシー)に乗った観光客が涼しい顔で移動しておる光景に出くわす。 半日契約でもしてスムーズに市内観光をしておるんじゃろう。 それも悪くはないが、どうしても移動中の注意力がいい加減になって、「偶然の発見」はほとんどない。 やっぱり散策は自分の足が一番じゃ。
 「ロック・バー/カフェ」に限らず、今後も偶然の発見を大切にしながら旅を続け、わしのお眼鏡にかなったショップを折を見て紹介していきたい!



七鉄の酔眼雑記 

 東南アジア諸国を各都市を転々と移動しておるある日、夜行寝台バスの中で当たり前の事に気が付いたもんじゃ。 「ロックンローラーってのは旅芸人」であることじゃ。 エルヴィス、エディ・コクラン、ジーン・ヴィンセント、バディ・ホリー、またビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フーetc。 昔のロッカーってのは旅から旅の毎日じゃった。 インターネットなんて影も形もなく、ようやくテレビが一般化しつつあった時代においては、より多くの土地を回りながら果てしなくコンサートを続けることが成功するロッカーの絶対条件じゃった。 それを考えると、別に何もせんでも各地を転々とするだけでも快感になってくるもんじゃ!(笑) 

 しっかし、昔のロッカーってのは、音楽センス、ファッション・センスが優れている以上に、とにかく「タフ」だったんじゃの〜。 わしらビンボー旅行者とは違って、それなりのレベルのホテルや食事や交通手段がロッカーには用意されておったはずじゃが、「果てしなき移動」ってのはその行為自体が大変なのじゃ。 身も心もゆっくりと落ち着ける時間も場所もない、ってことはあらためて考えればぞぉ〜とする。 
 仮に同じような歌詞を歌っても、同じようなフレーズを演奏しても、昔のロッカーの方がビンビンと心の奥底まで響いてくるのは、落ち着くことのできない悲しみや苛立ちの果てから演っとったからなんじゃろうな〜と。 説得力というか、迫真力というか、やっぱり今時のプラスチックなお子ちゃまロッカーとは違うわい!

 こーいう事を考え始めるとキリがなくなるもんじゃ。 旅から旅の移動型生活において得られるものは、定住型生活では到底得ることのできないスペシャルなモンが多いじゃろう。 その反面、移動型生活では当然のごとく守るべきものを守れなくなってくる。 失うものが多い。 このわしは今、「何を得て、何を失っておるんじゃろう」とか自問自答してしまう。
 また、1970年代のアメリカン・ロック界を代表するザ・バンドの映画『ラストワルツ』の最後のシーンで、リーダーのロビー・ロバートソンが確かこんな事を言っておった。

 「オレたちも旅から旅の人生だった。 でももう止めるよ。 昔の素晴らしいブルースマン、ロックンローラーたちは皆んな旅の中で死んでいった。 そんな人生、ありえないよ」

 ・・・ま、まあ、その通りなんじゃけど、お金をかけた豪華なプロモビデオと、一度にガッポリと収益をあげられるフェスティバル型マンモスコンサートが当たり前のロックシーンってのが「ロッカーたちのありえない人生」を改善する方法なんじゃろうか?とかな。 まあそんな事を考えておる夜のオチは、酒が進み過ぎて考えるのが面倒になり、酔っ払って寝てしまう、ってトコじゃけどな(笑) 
 只今せっかく長期旅行という特殊な体験をしておるんで、そのうちに昔のロッカーの旅の日々を想像しながら、旅の中から生まれた名曲のピックアップしてみようかな?などと考えておるので、その時はまたヨロシュー!
 経路は未定じゃが、来月からは中央アジアを目指して、インドシナ半島北部、中国山間部を北上する計画を立てておる。 予感としてはこの先訪問地でロックと出会う確率はどんどん低くなるじゃろうが、わしのロックスピリットは何処に行っても不滅なんで(笑)、これからも引き続きこのコラムを継続させて頂きます!



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