NANATETSU ROCK FIREBALL COLUM Vol.207


ロック・レインソング・ベスト30(後編)
 しょ、しょくん、わしを覚えていてくれておるか(涙)・・・旅の途中で有り金全部を性悪女に巻き上げられてな・・・挙句に宿代未納で追い出されたわしは、左写真の通り、南国の凄まじいスコールの中でヒッチハイク・・・ぐすん・・・これからどこに行ったらええんじゃ。
 「だったら日本大使館にでも泣きついてさっさと帰国して、師走に向けてチョー忙しいThe-Kingの手伝いでもしたらどうだ!」って諸君のキビシ〜お声が聞こえて来るようじゃ!?
 ってアリソーで絶対にアッテワナラン!ジョーダンはさておき、スコールにインスピレーションを得て「レイン・ソング・ベスト30」を企画中じゃが、まだ覚えておいででしょうか?(笑) 「スコールの後のように、洗いざらいすっかり忘れていたぜ!」なんておっしゃらずにお付き合い下さ〜い。 今回は後編ですぞ。 でも気が付いてみたら長引いていたスコールの季節は終わっちゃっており、今は毎日カンカン照り。 スコール、雨とは無縁のシーズンになってしもうたわい!

 一応念のためネットで検索しまくったんじゃが、「雨にまつわるロック」みたいなブログ、結構ありますな〜。 素晴らしい文章力、分析力を披露されとる方もおってちょっとタジタジになりかけたんじゃが、少なくとも30曲もピックアップしているブログは皆無だったんで胸をなでおろしたわい(笑)
 内容はともかく、数だけはわしが勝っておるんで(アホか!)、どうかご自身のロック知識の上積みのためにお読みいただけますよう〜お願いいたしやす!


雨はロックの原動力!? 
 洋楽史を彩る素晴らしき
“レインソング”ベスト30!(後編)



PART 4 〜ブリティッシュ・ロック界の重鎮たちの「雨の慕情」!

♪tune-15 ワン・モア・レイニー・デイ/ディープ・パープル

 ディープ・パープル→ハードロック→レインソング→やかましい土砂降りロック!なんて連想したかと思うが、とんでもない! 轟く雷鳴からスタートはするが、やがて美麗なオルガンが踊り始めるこの曲は、イメージとしては“天気雨”。 「雨よ降れ!過去を一掃して新しい日々をもたらしてくれ!」っつった極めてポジティブな内容じゃ。
 このバンドがハードロック・バンドに変身する前、“アートロック・バンド”との触れ込みで発表された68年のデビューアルバム収録の一曲じゃ。 わしは学生時代の一時期、この曲を“お目覚めソング”にセットしていた程気に入っておった。

♪tune-16 6月の雨の日/キンクス
 イギリスが雨の多い国であることはご存知じゃろうが、時の場合によってはそれがとても鬱陶しい。 そのすっきりしない気分そのままに、雨の日の情景にまっすぐに向かい合うことからで生まれたのがこの曲らしい。 景色に色彩感がなくなって気分は沈み、暗いトーンの視覚だけがグラデーションを帯びて広がっていく・・・なんて歌われておるが、不思議とサウンドは陰々滅々ではない。
 元々は画家志望だったレイ・デイビスならではの、絵画的描写による異色のレインソング、って某ブログに描かれておったが、まさにご名答! 勝手ながら流用させて頂きました。

♪tune-17 レイン・ソング/レッド・ツェッペリン
 個人的には、「天国への階段」と並ぶ名曲と密かに評価しとる一曲。 雨の情景が、これほど穏やかな熱情をもって奏でられたロックはないじゃろう。 オリジナルテイクはアルバム「聖なる館」に収録されており、ブリティッシュ・トラッドに系統することでアコギの腕を磨いたジミー・ペイジのプレイが素晴らしい。 ライブテイクも数多くあり、こちらロバート・プラントのボーカリストとしての力量にシビレル。 でもベストは、ツェッペリン解散後の2人のプロジェクト「ペイジ・プラント」でのプレイじゃろうな。

♪tune-18 雨に寄せる抒情/ユーライア・ヒープ
 なんか邦題はモロ演歌じゃけど、演奏はいわゆる典型的なロック・バラード。 ミュージシャンを志す者なら誰でもこんなロマンチックな曲を書き、演奏してみたいだろうと思われるほどベタな出来じゃが、ケン・ヘンズレーなるリーダー兼キーボード・プレイヤーのピアノが実に秀逸。 この人のピアノは、グランドピアノを弾いても、どこかアップライト・ピアノのような素朴で閑静な響きがあり、やり過ぎのアレンジでもこの鍵盤さばきの妙技で神聖に聞かせてしまうのじゃ。

♪tune-19 クライング・イン・ザ・レイン/ホワイトスネイク
 前回紹介したエヴァリー・ブラザースのクラシック・ポップスとは同名異曲。 雨の中で泣き崩れる恋に破れた男の心情を歌う、タイトルそのまんまの曲。
 1977年に発表されたオリジナルテイクは、情熱的なボーカルと演奏とのブレイクを挟みながらの掛け合いがチョーカッコええ〜。 例え失恋したって、これなら別の女から即座に求愛されるじゃろう!(笑) ところが、バンドがアメリカ進出を目指して再録音した86年のテイクは完全にメタルになっちゃってて、ヤカマシーことこの上ない。 「これじゃモテんじゃろう」って残念なデキじゃった!?


PART 5 〜数少ないブルージーなレインソング

♪tune-20 サンディ・モーニング・レイン/デュアン・エディ

 親愛なる8鉄センセーが前回のコラムで紹介しておったデュアン・エディ。 「世界でもっとも最初に成功した器楽演奏者」、「パチンコばかりやってるとうちゃんだの、近所のばあさんだの〜『おや、こちらは、綺麗で覚えやすくて、うきうきするねえ』」とは8鉄センセーの御言葉!
 この曲の原曲は恐らく古いブルースだと思うが、さすがは達人エディ、ギター1本、それもシンプルな構成でストーリーテラー的インストに磨き上げております。 またエディを敬愛するライ・クーダーは、この曲を原型にして1986年に公開されたロバート・ジョンソンの“伝記的”映画「クロスロード」のエンディングテーマ曲を作曲、演奏しとる。



♪tune-21 ホエン・イット・レイン・イット・リアリー・プアーズ
  /ビリー・ザ・キット・エマースン

 どういうわけか、黒人ブルースにレインソングはほとんど無いんじゃ。 生まれた時から既に「心の中は雨」だからか? かつて黒人の大半が住んだ綿花畑が広がる南部は雨が少なかったからなのか? それとも雨が降りゃあ辛い労働から解放されてウレピー!だったからか? とにかく数少ない黒人ブルースのレイン・ソングがコレじゃ。
 わしは先にエルヴィスの洗練されたテイクの方を聞いてしまっておったから、あんまり純度100%のブルースには聞こえないが、やっぱり黒人シンガーに雨は似合わんな。 というか、雨という状況設定が必要だったのか?と思えるほどの酸いも甘いも突き抜けたヴォーカルじゃわい。 季節とか気象状況とかは黒人ブルースにはお呼びでないんじゃろう。 朝か夜か、嬉しいか悲しいか。 この単純なパターンの中でブルースは勝負しとるんじゃろうな。
 ちなみに ビリーのオリジナルテイクとエルヴィスのテイクを続けておる映像があるんで、是非聴き比べてみてほしい。

♪tune-22 アイ・シンク・イッツ・ゴーイング・トゥ・レイン・トゥディ
      /ニーナ・シモン

 これも数少ないブルースのレインソング。 ニーナ・シモンって方は、聞いた時の精神状態によっては、その日の晩は悪い夢にうなされそうな声をしとるが、この曲は意外にもサラリと歌い終えておる。 やはり昔の黒人さんは、雨ごときの自然現象で泣いたり喚いたり落ち込んだり、また“黄昏たり”するほどヤワではないんじゃろうか? 情感溢れる白人シンガーのレインソングばかり聞いていおると、ニーナ嬢の歌声は事の他逞しく聞こえるのお。
 「今日は雨になるでしょう」って、お天気オネーサンみたいなタイトルじゃが、「だからアンタたち、ウダウダ、メソメソしている暇なんかないからね!」っつう叱咤激励に聞こえないこともない(笑) やはりポジティブな女性は、男を根本から鼓舞してくれるのお((笑)

♪tune-23 雨の日に夢去りぬ/ジミ・ヘンドリックス
 “Rainyday, Dream away〜”ってナチュラルでロマンチックな響きじゃな〜。 名盤「エレクトリック・レディ・ランド」製作中のある深夜、スタジオの外は霧雨が降り出し、その情景を見ながらジミはセッションを再開して魔法のようにこの言葉を突然紡ぎ出してはギターを弾き始めたそうじゃ。 この演奏は途中からほとんどジャズじゃ。
 彼の頭の中にはあらゆる音楽が鳴り響いており、その時々の運命に導かれて最適の音がプレイとして引っ張り出されてくるという。 “夢去りぬ”ということは“新しい夢の誕生”か? 続編ともいうべき“スティル・レイニング・スティル・ドリーム”も録音されておる。


PART 6 〜バラエティに富んだ、アメリカン・レインソング

♪tune-24 雨の日の女/ボブ・ディラン

 一応タイトルには“雨”が入っておるが、歌詞の中にはどこにも見当たらない! 滅茶苦茶で出鱈目な歌い方、調子っぱずれなカーニバルのような安っぽいホーン、“誰もがストーンされたらどうだい”っつうキメ台詞以外は意味不明?な歌詞。 この曲はディラン史上、最大級のヒット曲であり、最難関な内容の曲じゃ。
 歴史、風土や習慣、体制、目上の者からの教え、当たり前の価値観、そんなものは一度キレイさっぱり忘れて素っ裸になったらどうだい!?って事らしいが、確かにそうやって聞いてみると奇妙な高揚感に包まれる! 雨の日の女? 髪の毛もメイクもファッションも雨でグチャグチャになった女みたいになっちまえ!って事じゃろう。

♪tune-25 ファイアー&レイン/ジェームス・テイラー
 60年代末期に到来したシンガーソングライター・ブームの先駆者じゃったのがこのお方。 「激動の時代との戦いに破れた後、自己の内面を静かに見つめる」ってのがシーンの共通のフォーマットじゃったが、さしずめこの曲はそのシンボルというべき内容じゃな。
 「雨の日の女」同様に、現象としての雨が題材にはなっておらず、60年代という過激な社会性に左右された若者の心情を「炎」と「雨」として歌ったのじゃ。 国語の先生の朗読みたいな生真面目な歌い方じゃが、疲れた心に染み渡るナイス・フォークソングじゃ。

♪tune-26 (シー・スカイ)アバウト・トゥ・レイン/バーズ
♪tune-27 優しい雨のごとく/ザ・バンド

 ディラン、ジェームス・テイラーから一転して、オーソドックスで生粋のレインソングじゃ。 バーズのナンバーは1973年の再結成アルバムのラストに、ザ・バンドは1976年のラストアルバム「アイランド」のオープニングにセットされておった。 どちらもバンドとしての全盛期の作品ではなく、ロックをやるにはもう若くはないが、さりとてトラディショナル・ソングをやるほど年をとってもいない、いかにもプレイヤーとしての立場がはっきりしない微妙な時期の演奏じゃ。
 この2曲は、収録アルバムを含めてマスコミの評価は極めて低いものの、ファンには人気が高い。 ブログ等でも“この曲を聴くだけでもアルバムを買う価値がある”といった賛辞が目立つもんじゃ。 わしもその意見に賛成派であり、雨のもたらす情感や雨への憧憬によって、それぞれのバンドが持っていたファンに愛された特性がナチュラルに表現されておると思う。 ベテランに差し掛かった名ロッカーたちの、どこか切ない迷演ではあるが。

♪tune-28 レイニング・イン・マイ・ハート/バディ・ホリー
 さあ〜て、そろそろ佳境に入ろうかのお。 この名曲、意外にも日本では一般的にはあんまり知られてないようじゃ。 バディ先生がピンクの上着を着た「ベスト・オブ・バリー・ホリー」や2枚組の「ザ・ベリー・ベスト・オブ〜」にも収録されておらんからじゃろう。 道理で日本では、バディ先生といやあ軽快なナンバーばかりが取り沙汰されるわけじゃな。 ということで、日本人の心にも通じるバディ先生版の悲しき雨の慕情ってやつをピックアップしておくぞ!

♪tune-29 雨に唄えば/ジーン・ケリー
 前回紹介した「雨に濡れても」と並ぶ不滅の名レインソングじゃな。 こういう曲の配列をすると年がバレてしまうが仕方ないのお(笑) わしは子供の頃に、お袋さんと姉貴に無理矢理ミュージカル映画を何本も劇場で見せられたトラウマが強くて!?(本当はヤクザ映画が見たかった、ってどーいう感性のガキなんじゃ!)、以降どうもミュージカルはダメでな。
 でもやっぱり「雨に唄えば」だけは、この主題曲が素晴しいから別格じゃな。 雨が降るのが待ち遠しくなったもんじゃ!  しかし最近の映画をあまり観ておらんからエラソーには言えんが、こういうほんの何分間かだけで永遠に人々を魅了してしまうような映画ってあるんじゃろうか。 現代は映像と音楽を気軽に同時に楽しめる時代になったとはいえ、「雨に唄えば」に匹敵する“名映像”にお目にかかってみたいもんじゃ。

♪tune-30 ケンタッキー・レイン/エルヴィス
 やはりラストはキングじゃ。 これには誰も異論はなかろうな!(笑)
 アルバム「フロム・エルヴィス・イン・メンフィス」と同時期の録音であり、同作のスペシャル・エディション盤の2枚目に収録されておったが、やはりこの頃のキングの歌唱力は超絶じゃ! 失ってしまった最愛の女性を探す悲しい男の一人旅の模様が歌われておるが、映画よりも、小説よりも、キングの歌は男の心情の機微を残酷なまでにえぐり出す。 こりゃ〜鳥肌が立つどころの騒ぎではない! またほんのちょっとだけ挿入される“♪〜Wlth the rain in my shoes〜♪”(雨の染み込んだ靴とともに)というか細い女性コーラスにも泣かされるな。 外はカンカン照りでも、この曲を聞くと心は涙雨になっちまうのお。 絶対にキングのテイクしか聞きたくない! 


 「雨」と来たからにゃ、次回は「嵐」か「虹」でもやるか!と言いたいところじゃが、そこまでわしのアタマは“どストレート”ではないんで、そういうのはまたいずれ。(笑) ロックの知識の整理をしたくなった時が来たらタイミングを見計らってやりますわい。
 しかしまあ、スコールの季節が過ぎると、東南アジアの主要都市の繁華街ではある異様な人物たちの出現率が俄然高くなってくる。 それはだな、「物乞い以上、仙人未満」みたなご年配の日本人じゃ。 何故日本人と分かるかってえとだな、彼らは暇つぶしの為に(?)、無料日本語情報誌を何冊も小脇に抱えておることが多いからじゃ。 暑さのせいか意識の半分はトンジャッテいるようだし、どうみたってお金は無さそうじゃ。 恐らくパスポートも失効しておるに違いない。
 わしも若ければ「テメーラ、日本人の恥さらしじゃ!」って憤慨したじゃろうが、正直なところ「明日は我が身か」って空恐ろしくなってくるんで、今後もより一層気持ちを引き締めて旅を続けることに致しやす。

 あらためて考えてみれば、この時期に「レインソング・セレクション」なんて、お歳暮に水ようかんやカルピスを届けるような“おバカ企画”のようじゃが、今後もそんな季節錯誤なヤツが出てもどうかお付き合い下され! そして、わしへのお歳暮は今年は受け取れないんで(笑)、その費用はThe-Kingのお買い物でど〜んと使って頂きたい! よろしゅ〜。



七鉄の酔眼雑記  

 この度の「レイン・ソング・ベスト30」の選から、最終的に外さざるをえなかった16曲も一応書き記しておこう。 個人的なセレクションなんざ、時々の気分で大幅に変わるから、以下の曲がいつランクインするか分からんしな。 機会があったら聞いてみてほしい。

「ディドント・イット・レイン/ジョニー・キャッシュ 」
「レイン/ビートルズ」
「レイン・フォール・ダウン/ローリング・ストーンズ」
「激しい雨が降る/ボブ・ディラン」
「ザ・アワー・オブ・ノット・クワイト・レイン/バッファーロー・スプリングフィールド」
「トゥ・マッチ・レイン/ポール・マッカートニー」
「ビー・ザ・レイン/ニール・ヤング&ザ・クレイジー・ホース」
「フール・ストップ・ザ・レイン/CCR」
「クリフトン・イン・ザ・レイン/アル・スチュワート」
「フール・イン・ザ・レイン/レッド・ツェッペリン」
「サマー・レイン/U2」
「オーシャン・レイン/エコー&ザ・バニーメン」
「ノーベンバー・レイン/ガンズン・ローゼス」
「雨の日と月曜日は/カーペンターズ」
「雨のニューヨーク・シティ/ベイ・シティ・ローラーズ」
※「Night Rain/Jessica Gardlund 」

 最後の方の2曲は意外じゃろう!(笑) カーペンターズのヤツはメドレーで「恋にさようならを」に続く構成にシビレタわい! またベイ・シティ・ローラーズって、「オマエ、アタマどーかしてんじゃねーのか!」って呆れられるじゃろうが、騙されたと思って聞いてみい! 彼らの最後のシングルであり、ボーカルのレスリー・キッコーマン、ん? いやいやマッコーエンが実力派だったことを証明する、彼の熱唱が聞けるぞ!!
 ※印のJessica Gardlundってのは、旅の途中で偶然you tubeの検索でひっかかった、ジュディ・オング似(笑)のなかなかカワユイメタル系レディのギター・インスト。 まだまだ標準的なメタル系ギタリストのレベルかと思うが、メロディに負けることなく、音は“しっかり出しておる”。 まだ日本ではアルバムも発表されてないようじゃが、一部のメタルファンの中ではアイドル視されておるようじゃからシャレでご紹介しておくぞ。 ちなみにボーカルもやっとるが、そっちはAKBちゃんレベルだった(笑)
 ここは番外編なんで無理強いせんから、you tubeのリンクは貼り付けないでおくが、検索してくれたら嬉しいわい。 わしはロック・リスナーでありながら、熱心なポップス・リスナーでもあるわけじゃ〜♪




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