NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN VOL.181


 「プルオーバー・シャツ」というThe-Kingにとって新境地の作品が発表された。 50s幻のスタイルのシャツじゃぞ。 う〜ん、The-Kingブランドはまさに「ロックンロール・ダンディ・ブランド」としての使命を貫き通しおるな。 それならば、 わしも2回連続で「ロックンロール・ダンディに近づいたロッカー」をやりとうなったわい!
 前回はロック史のいわば第2世代(1960年以降デビュー)、第3世代(1970年代前半デビュー)のダンディー候補者を挙げてみたが、今回は第4世代(1970年後半デビュー)辺り、つまりパンク発祥前後にデビューしたロッカーに注目してみた。 世代の分け方には異論もあるじゃろうが、このカテゴライズからいくと、我らがストレイ・キャッツもこの第4世代に該当するから、細かい事はスルーしてくれ!?

 一応、わしが前回定義した「ロックンロール・ダンディ7ヶ条」をあらためて記載しておこう。
@ 大酒飲みでもヤク中でもOK。 要はその悪習を克服できた強靭な精神力の持ち主。
A 例え女グセが悪くてもOK。 ただし、お人形ちゃん的、パー子的女性には興味のないこと。
B 黒人ブルースに造詣が深いこと。 ロッカーの基本中の基本じゃ。
C 文学的、哲学的に考察を重ねた作品を発表しとること/内省的な作品が幾つか存在すること。
D アルバムカヴァー、ライブ・サポーター、ビデオクリップに女性をあまり起用しないこと。
E 中年以降も痩身を保っておることを大前提として、どんなファッションも着こなしてみせる、マルチセンスの持ち主。
F ファンを拒絶する孤高性をまとっておること。

 「『ロックン・ロール・ダンディ』とは、ロッカーとしての己のスタイルを頑固に守りぬいていることじゃないのか? 細かい要素や理屈はカンケイネー!!」というお叱りは甘んじてお受け致します(笑)。 まさに「おっしゃる通りでごぜーますだ、お代官様!」ではあるが、それは「ロックン・ロール・バカ」と紙一重であり 、その境界線を見極めるのは誠に難しい。 厳しいハードルの先に栄光の(!?)の「ロックン・ロール・ダンディ」があることをもう一度再認識するようにな! 
(上写真は、わしからイチ押しの「ロックンロール・ダンディ候補」である、ジョン・デヴィッド・サウザーのダンディなジャケ写)

ダンディと呼ばれし男:第7回〜番外編(後篇)
“ロックンロール・ダンディ”に近づいたロッカーたち

                      

■ スリム・ジム・ファントム ■ 
  
 取材やライブ鑑賞から、バックステージ乱入まで!? わしは随分とロッカーを至近距離で見てきたもんじゃが、文句無しのNo.1、いやダントツでそのカッコ良さにシビレタのはこのお方じゃ。 彼がオフタイムの時にお会いしたんじゃが、ストーンズのベロTシャツを着ておってな。 だからストーンズのハナシをちょっとさせてもろうたものの、その間わしはほとんど直立不動のフリーズ状態じゃったよ。 東海林太郎になってもうたあ〜。
 スリム・ジム・ファントム、彼は人間じゃない! つうか、中世の英国騎士(ナイト)が蘇ったような絶対的な強さと逞しさと、超絶的なクールさをまとった「神の作品」って感じじゃったよ。 「神の作品」に対して、このわしが@が足らんとか、Aがどうしたとか、そんな屁理屈を並べ立てるのは失礼そのものじゃな!

 まあ彼はプレイヤーとしてはドラマーの域を出ておらんし、そのスゴ過ぎる存在感でブライアン・セッツァー殿の活動に華を添えておるので「ロックンロール・ダンディ」として四の五の言うべき相手ではないのかもしれんが、こういうテーマには登場してもらわんことには、わしのコラムそのものに箔が付かんわな!
 スリム・ジム様にお会いして既に20年あまりが過ぎたが、あの時の衝撃は生涯忘れられん。 「何度生まれ変わったって、こんな男には絶対になれない」って“爽快に打ちのめされた”思い出じゃ。


■デヴィッド・カヴァーディル ■

 1974〜76年にディープ・パープルのヴォーカリストを務め、世代的には「第3」「第4」の中間じゃが、彼の本当の実力を世界に知らしめたのは、70年代後半からスタートさせたリーダーズ・バンド「ホワイトスネイク」なんで、この方は「第4世代」とさせて頂く。
 このカヴァーディルさん、とにもかくにも驚かされるのは、既に63歳だというのに、「太らず禿げずしょぼくれず」でメタル系ファッションがいまだに似合うってことじゃ。 お見事である! わし自身はメタル系ファッションは「どうも・・・」じゃが、初老の方でアレを着こなせるのは彼だけじゃろう。 それにロンゲなのにスーツも似合う。 ほんの一時期じゃが、短髪でカジュアルなファッションもバッチリキメておった。 強烈なブルース系ハードロック嗜好も衰えず、それを時代毎の需要に合わせてサウンドの装いを工夫して聞かせる「ハードロック魂」も絶賛モノじゃ。

 「ロックンロール・ダンディ」の欠落部分としては、絶対的な自信作を世に送り出す際に、必ずDをやらかしてしまうクセがある事かのお。 それに彼の書く歌詞の99%のテーマが求愛! そこがまたCの欠落にもつながる・・・。 まあカヴァーディルさんにとっては、求愛が究極の人生哲学なんじゃろうが。


■ ポール・シムノン ■

 あれは2002年にクラッシュの「ロック殿堂入り」ニュースが報じられた時じゃったかな。 元メンバーの近況を伝えるHPを見ておったわしは、その中の1枚の写真にノックアウトされた。 「カッケーーーーーーーーーーーーーーー!」 それが左の写真じゃ。 さっそくスーツの襟を立てて真似したが、「そんなに寒いんですか?」って言われてしもうた。(しょぼ〜ん)
 元々わしはクラッシュの中ではビジュアルは断然ポール派じゃったが、そのお姿は「これがオールド・ロッカーの理想的スタイルじゃ!」ってアタマん中で閃光が走った! まあわし自身の理想と現実とは違うんで、そこら辺は追及せんでほしいがな。
 スリム・ジム・ファントムにしろ、ポール・シムノンにしろ、デカ過ぎる衝撃で思考回路がブッタ斬られてしまうと、まともな判断なんざデケンわしじゃがって、まるで10代のロック小僧みたいじゃな。 まあエエではないか、それで! 

 反論を覚悟で書いてしまうが、クラッシュというバンドに対して、わしはポール・シムノンのベースとビジュアルがなかったら聞いていなかったと思う。 それはクラッシュが基本的にはロックンロールの「リヴァイバル・サウンド」だったからであり、それを飛び越えようとするジョー・ストラマーやミック・ジョーンズの言動や演奏が上辺には下品に感じたんじゃな。 それをわしの感性にハマる情緒レベルに変換してくれたのが、彼のベースプレイであり、クールな佇まいを崩さないビジュアルじゃった。
 基本的には縁の下の力持ちであり、「ダンディ云々」を語れるほどの情報は露出されておらんから細かい分析はでけんが、やはり「ロックンロール・ダンディ」の候補者の一人として挙げておきたいロッカーじゃ。


■ デヴィッド・シルビアン ■

 「ジャパン」という名で、80年前後に活躍していたネオ・サイレント・パンク・バンドのヴォーカリストとして有名な男。 また大島渚監督「戦場のメリークリスマス」のテーマソング「禁じられた色彩」に歌詞を付けて歌ったこともあるお方じゃ。 ジャパン活動当時はあまりにも美青年過ぎて、日本ではアイドル扱いされておったが、日本でのイメージと音楽性が、彼ほどかけ離れていたロッカーも珍しい。
 ビジュアルに関してはハンサムなだけではなく、デヴィッド・ボウイばりに様々なヘアスタイルやファッションを自分のものにする天性のセンスがあった。 音楽活動においては、ジャパン解散後はワールド・ミュージックのフォーマットの中で、一貫して「人類の在り方」を問う姿勢を崩さず、大きな成功こそないが充実した軌跡を残しておる。 歳をとっても衰えていない彼の目の光が何よりもそれを雄弁に語っておる。

 しかしながら、デビュー当時のほんの一時期だけロックサイドに身を置いておっただけで、活動歴を重ねるごとにロックとは疎遠になっていった。 だから@とかAとか、ロッカーが必ず通り過ぎる経緯に関しては、この人はあんまり聞いたことがない。 ロッカーというよりも「孤高の文学者」としての生き方を好んでいたに違いない。 そこがロックファンにとってはどうにも物足りない。 若い頃に、もっとどんちゃん騒ぎをやっとれば(一緒にやりたかった女性は腐るほどおったろうに!)生真面目過ぎるその後の活動におもしろい色を加えることができたんじゃないか、と。


■ ジョン・デヴィッド・サウザー ■

 
前回のドン・ヘンリーに続き、今回もアメリカン・ロッカーは一人だけ。 ジョン・デヴィッド(J.D.)・サウザーは、一般的には1977年に大ヒットした「ユア・オンリー・ロンリー」だけしか知られておらん。 しかしその作曲とアレンジャーとしての才能は、イーグルス、リンダ・ロンシュタッドを初めとするウエストコースト・サウンドを長らく陰から支えており、伝説のスーパー・サブ的シンガー・ソングライターじゃ。
 またウエストコーストきっての“モテ男”でもあり、「彼とすれ違った女の子はみんな恋に落ちるワ」(byリンダ・ロンシュタッド)とまで言われたもんじゃ。 「我が愛しのリンダ嬢にそこまで言わせる男って、どんなヤロウなんじゃ!」ってわしは嫉妬に狂った(!?)こともあったが、「ユア・オンリー・ロンリー」のヒットで初めてJ.D.サウザーの写真を見た時は拍子抜けした。 当時まだ25、6歳なのに「人生に何の希望も持たない異様な老成感」が漂っており、シブ過ぎたからじゃ。 彼の書く曲も歌声も、作為的な匂いがまったくせず、“雲が空を流れるような”“星が夜空にまたたくような”、己の内にある魂から音楽を極々自然と奏でているような超自然的な悟りを感じたもんじゃ。 そのスタイルはまったくブレずに現在までマイペースで活動を続けており、何と2009年には来日公演も行っておる。 

 ロッカーとも、一般人とも、まったく別の精神世界で生きているようなJ.D.サウザーに「7ヶ条」を当てはめるのは無謀じゃが、あえてケチでもつけてやろうとイジワルに見れば、Eが無いというか、ファッションにまったく興味がないようなのじゃ。 もう何十年も一貫してブラック系のフォーマルスタイルが基本なのじゃ。 よく見ると実はお顔の作りもイケメンなんでもったいないが、本人が興味が無い(んじゃろう)からしょうがない。 それでもアメリカン・ロック史上、もっとも「ロックンロール・ダンディ」に近い男じゃ。


 前回と併せて七鉄の選ぶ「ロックンロール・ダンディ候補者」は圧倒的にイギリス勢になってしまった。 なんでアメリカ勢はいない? やっぱり食べ物のせいか? ステーキ、ハンバーガー、ポテトを常食にしとるアメリカ人は、ほぼ例外なく中年太りしてしまう。 また田舎生活嗜好が強い方が多くて、ある程度の貯蓄が出来ると田舎で隠遁生活を始める者も少なくない。 「ダンディ」とはほど遠い世界を好むからなんじゃろうか。
 しかし歳を取っても「ダンディ」たるには、中年以降にはどんな食生活を送ればええんじゃ? 「歳をとっても肉類は必要デス」とか「種類豊富に、色んな食べ物をとるのが長寿の秘訣デス」とか、はたまた「人間、粗食が一番デス」って一体どれが正しいんじゃ〜。

 いつだったか、上記のデヴィッド・カヴァーディル(だったと思う)が「ほほぉ」って事を言っておった。 「食生活を気にしていたらストレスが溜まるぜ。 自分が一番かっこいいって思える服をいつまでも着ることが出来るボディを維持する事が健康法だ」とな。 そりゃそうじゃな。 例えば今は「L」サイズでも、5年後「LL」、10年後「LLL」なんてなったら、デザインよりもサイズばっかり気にして選択肢も先細りじゃ。
 よし、わしももう一度クローゼットを開けてみて、自分に一番クールって思えるThe-Kingファッションをあらためて探してみるか!(みんなクールじゃがな!) どれが着られるか、どれが着られないか、ちょっと怖いが、やっぱりこれが一番の健康法じゃな!
 おっと、ファッションとボディスタイルばかり気にしておったら、モノホンのダンディにはなれんぞ。 もう一度The-Kingのホームページを隅々まで目を通して、七鉄のかます「ロックンロール・スピリット」を復習してくれ〜い。 そして、「ロックン・ロール・ダンディ」としてもっとも肝心なお買い物も忘れんようにな!



七鉄の酔眼雑記 〜狼1号!
 
 わしの原稿をおもしろがって読んで下さる方の中で、わしが知りうる限り最高齢は75歳。 このお方、見た目は「穏やかなロバート・デニーロ風」のナイスガイであり、お仕事は貿易商社の重役で、もちろん現役バリバリ。 今でも一年の半分は海外で過ごされておる。 ロックには興味が無いが、なかなかのお洒落ではある。 動物と諸外国の料理をこよなく愛し、スマホもタブレットもスイスイ使いこなし、ご老人なのに過去を懐かしむよりも現在を楽しんで生きておるそのバイタリティは感心してしまうわな。
 その方が先日「ナナテツちゃん、相変わらず(ダンディがどうしたとか)いちいち理屈こねてるね」「歳とってダンディの基本は、健康で女好きじゃないの?」と笑顔で言っておった。 健康なら何でもトライ出来るし、女好きならお洒落や生活仕様に自然と拘りが出てくるからと。

 ま、まあ、そりゃそうなんじゃが、そう言ってしまうと「身も蓋もない」というか「それを言っちゃあおしまいでしょう」というか、わしとしては「原稿が書けないでしょ!」ってトコじゃ。
 しかしこの方、スゴイ! 今でも彼女さんが3人、しかもみんな外国人なんだそうじゃ。 「ナナテツちゃん、カノジョってのは日本語の出来ない外国人がいいよ。 コミュニケーションとろうとしてこっちも語学の勉強するじゃない? ボケ防止にもなるよ」だって。 さすがはロバート・デニーロに似ているだけはある!? 考えることが前進的じゃ。
 なあ〜んて事を飲み屋さんで話していたら、周りから予想通りのチャチャが入った! 要するに、その歳でお相手の女性を“満足させられるのか?”って事じゃ。 するとそのお方、ニッコリ笑ってあるブツを取りだした。 中国製のバ○ア○ラみたいなオクスリじゃ。 その名も「狼(おおかみ)1号」! 「南極1号」じゃあるまいし(知っとるか? ダッ○ワ○フの商品名じゃ)、なんつーネーミングじゃ。 しかしパッケージのデザインが安っぽいながらもスゴイ迫力じゃ。 紫の炎の中から狼がこっちを睨みつけておる! まるでB級ヘヴィメタル・バンドのジャケットみたいなノリじゃ。 化学薬品なのか自然生薬なのか知らんが、こんなもん服用したら本当に“昇天”しそうじゃ! 「そんなことやってたら、アンタいつか腹○死するよ」ってからかわれておったが、「なあ〜に、御守りみたいなもんだよ」とご本人は一笑に付しておった。 そう言えば、以前にもこのお方は「コレは○○に効く。 コレはetc」って得体の知れないブツを披露しておったな。

 手っ取り早く、化学や医学の力を借りて若返るのもええけど、元々病院嫌い、薬嫌いのわしは、もっと心身の根底から元気が湧き出る方法を実践したいと願っておる。 その為には、いろんなハードルが必要なんじゃないか、って考えておるんで「ロックンロール・ダンディ七ヶ条」なんてのを定義してしまったわけじゃ。 しかしわし自身が死ぬまでにいくつのハードルを乗り越えられるんじゃろうかって、いつもビッグ・ロッカーと自分とを同一線上で考えておる、そのオメデタイ思考こそがわしの活力なんじゃろう。 おあとがよろしいようで!
 
  

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