ROCK FIREBALL COLUMN by NANATETSU Vol.126

 引き締まった筋肉に鋭い眼光。 場違いのような左の写真、誰だか知っとるか? 黒人ボクサーではないぞ。 ジャズ界の巨人マイルス・デイビス殿じゃ。 「あれぇ〜The-Kingのホムペに何でジャズマンがいるんだあ〜? どーしてどーしてえ〜??」って、さてはThe-Kingのショートスリーブシャツ7連発のショックでアタマがパー太郎になったな! 第一弾以上のグレイトな威力に、思考回路がショートしてまうのも仕方がないのお〜。 まあ先を読みなはれ。
 38年前の1973年初夏、わしはマイルス・デイビスの東京公演に行ったんじゃ。 当時の一番の飲み友達がジャズ・ファンであり、彼から誘われた記憶があるな。 本当のお目当ては、もう一人コンサートに同行した美人の女友達じゃったか!?(この女性は有名ジャズ評論家の娘さんじゃった) 思い返せば、あの当時は何故だかジャズ・ファンと知り合う機会が多くてな。 ジャズ・ファンってのは大概は議論好きで文学好き。 ロック・ファンってのは酒好きで女好き!って、そんなことはどーでもええわい!
 んで、このコンサートでわしはジャズに対しても覚醒した!とは言い切れんが、忘れがたい体験をしたんじゃ。 時折観客に背を向けてトランペットをプレイするマイルスの後ろ姿に驚愕してしもうたんじゃよ。 マイルスは小柄なんじゃが、その背中の存在感、物量感が神々しいまでに圧倒的じゃった。 背中全体が楽器とでも言おうか、なんだか異次元でプレイするミュージシャンを観た感覚じゃったな。 人生で初めて体験した「静寂の嵐」ともいうべきライブ・パフォーマンスじゃった。
 
 それからわしは「昔の人は“男は背中で勝負せよ”と言ったもんじゃが・・・あれは本当だ」となって、ロッカーの背中、後姿に俄然注目するようになったんじゃ。 他人からすればクダラナイ事かもしれんが、音楽の聞き方、ミュージシャンの観方に新しいスタンスが芽生えたんじゃな。 それはさっそくジャケット選びにおいてもおおいに発揮されることになった!
 一年に何度かこのコーナーで「ロック・ジャケット・セレクション」をやらせてもろうておるが、今回は遠い夏の思い出に触発された「ロッカーの背中ジャケット」の中で秀逸なヤツをやってみたい。 いつもいつも憧れのロッカーを正面からしか観ておらんか? たまには後ろから見てみるのもええぞ。 表面的なビジュアルやサウンドからは感じることのできない、もうひとつの真実が分かってくるかもしれんぞ! 



ロッカーは背中で勝負せよ!
〜ロック・アルバム・ジャケット傑作バックショット集



★No.1★ The Legend of Johnny Cash

 グ、グレイト! これぞわしにとっての問答無用のナンバーワン「背中ジャケット」じゃ。 足元がチョイとポーズつけ過ぎじゃが、そのマイナスを差し引いても余りある男のシブミが滲み出ておるなあ〜。 The-Kingの新作ブラック&ブラックのフラップじゃったら問題ないがのお♪ まあ、あまりにもクールなバックショットなんで、わしは余計なことまで詮索したもんじゃよ。 「夜間撮影の方がもっと男の哀愁が出ていたんじゃないか? いやいや夜間だと、夜逃げしているようになるか?」「クソ暑い天気のようじゃが、なんでコート着ているんだろう」等など。 まあこんな勘ぐりの全ては、結局このショットの素晴らしさの前に水泡と化した!
 悲しい過去も辛い現実もすべて胸にしまい、ギター1本携えてひたすら歩むロック道! 超ロングのコートもええ味出しとる! ブルースの故郷ミシシッピの様な殺伐とした荒野を行く構図も文句なし!! ロッカーがルーツ・ミュージックであるブルースへと回帰しておるようじゃ。 こんなお背中を見せられたら、こりゃもう「いってらっしゃいませご主人様!」じゃのうて、黙って付いて行くしかないよのお〜♪ 


No.2 Elvis Inspirational

 2006年にイギリスで発売されたエルヴィスの編集盤じゃ。 エルヴィス独特の感情を込めた節回しが光る曲が集められた内容じゃが、これが日本の企画盤なら「オン・ステージ」の様なマスクの“どアップ”写真なんかを使うじゃろうなあ〜。 やはりイギリス人はええセンスしとる! 洋楽カラオケ行って、さっそく真似したくなるポーズじゃなあ。 え?腰に負担がかかってぎっくり腰をやりそうだから、アンタ止めときなってか! ほっとけ!!
 しっかしここに映るキングのお姿は、ホワイトスーツのせいなのか、「背中で勝負!」っつうより、はっきり言うとセクシー過ぎてマイってしまうなあ〜。 さすがはキング、正面だろうが背面だろうが、その魅力はパーフェクトじゃ。 もう足元に膝まづきたくなってまうがな〜。 バックショットとはいえ、斜め後ろからバツグンの角度で撮りよって、すばらすぅい〜。 LPレコード時代のジャケだったら、もっと迫力もあって文句なしのNo.1に推したじゃろうな。 


No.3 Vintage Winos/Keith Richards

 「年を取るってことは、オレにとっては贅沢なことなんだ」とは、80年代のキースの弁。 「う〜ん、さすがはロックンロール狂乱の時代、地獄のドラッグ中毒時代を生き抜いてきた男だけのことはある言葉じゃっ!」とわしも唸ったもんじゃが、1990年に発表されたこのアルバムのジャケにはまたまたシ・ビ・レ・マ・シ・タ。 こんなポーズが様になるロッカーなんて、キースしかおらん!キース命!!となりかかったんじゃが、肝心のアルバムの内容がつまらんソロ時代の寄せ集め・・・ってことで、No.3の位置に甘んじて頂くことにした!?
 まあ見たまえ。 上記のジョニー・キャッシャ以上のロングコートを。 中央のスリットも超ロングで迫力満点。 これがキース流の「事を成し遂げて静かに去る男の装い」ってことなんじゃろうか。 いきなり振り向かれたら怖そうじゃなあ〜。 とまあ、そう思わせるだけの説得力をもった後ろ姿じゃ。


No.4 Absolutley Live /Doors

 恐らくロック史上初の、見開きジャケット全面を使った「バックショット・ジャケ」じゃろう。 右端にカリスマ・シンガーのジム・モリスンがフューチャーされとるが、この部分は重ね焼きじゃ。 当初はステージシーンのバックショットのみがあしらわれる予定だったらしいが、それではインパクトに欠けるというレコード会社の判断によって、印刷直前の段階でご覧の通りのデザインに変更されたんじゃ。
 ドアーズ大好きのわしは、オリジナル・デザインを確認したくて、試しにバックショットのみをスキャニングして、ジャケサイズに適当にトリミングしてみたことがあったが、発表当時(1970年)隆盛を誇っていたロックシーンの中では極めて異端といえるデカダンス(世紀末主義)を感じさせる仕上がりになり、先鋭的なドアーズのセンスを再認識したもんじゃ。 ちなみにこのジャケット、現在ではまったく別モノに差し替えられておる。 原因は不明じゃが、ジム・モリスンの重ね焼があっても、バックショット自体がいい味を出しとるので、流行のCD紙ジャケ方式で是非復刻させてもらいたいもんじゃ。


No.5 Greatest Hits /The Band

 幾つか企画/発売されとるザ・バンドのベスト盤の中で、これは2000年度盤のジャケなんじゃが、まるで裏ジャケットのデザインじゃな。 三人掛のベンチに5人のメンバーが肩寄せ合って集い、目の前の清流と木立を眺めておるポーズが、バンドの結束力の強さを物語っておるなあ〜ナイスじゃ!
 ところでこのショットは、実は彼らのメジャー・デビュー間もない頃のものなんじゃ。 20歳代半ばにしてこの老成感というか、世間を達観しているような雰囲気は驚きじゃな。 それまでロニー・ホーキンスと一緒にカナダでドサ廻りをしたり、ボブ・ディランの初のエレクトリック・コンサートのバックを務めてヤジリ倒されたりと、散々苦労してメジャー・デビューにこぎつけたんで、それが背中に現われとるんじゃろうな。 昔のヤングは大人じゃった! 




 その他の印象的な作品といえば、上記のドアーズのライブ・バックショット法を踏襲した
「Neil Young Live Rust」「Fleetwood Mac Live」。 どちらも故意的にボカシを入れて写真のインパクトアップを計っておる。 なかなかセンスのいいアイディアじゃが、ボカシを入れたってことは、「まだ背中で勝負出来るレベルに達してないので・・・」っつう謙虚な姿勢の表れなんじゃろうか?
 またボブ・ディランの
「Dylan's Greatest Hits II」も最初は新鮮じゃった。 ってのも、ディランは自分の顔のアップをジャケに多用しており、発表される毎に「またかいな・・・」と思うとったからじゃ。 まあもうちょっとロングショットにして背中を見せてもらいたかったがな。
 更に番外編として、全盛時代のフリードウッド・マックの美人歌姫スティーヴィー・ニックスのソロ
「Trouble in Shangri-la」を挙げておこう。 天空から今まさに地上に舞い降りようとする天使のような構図が美し過ぎる! わしはロリではないんで、童顔のスティービー嬢には魅力を感じなかったクチじゃが、この後ろ姿のお美しさにはノックアウトされてもうた! ヘロインで財産を食い潰したという噂があるが、天使のようだったこの歌姫、今はどうされておるんじゃろうか。
 最後に恐らく世界一有名なバックショット・ジャケであるブルース・スプリングスティーンの
「Born in The USA」を。 これは背中というより“ケツ”ジャケ! 独創性があるようじゃが、わしは好きになれんな。 ジャケ用のポーズとファッションじゃろ、これ! 「ブルースともあろう男が、己の後ろ姿に小細工するなアホンダラ!」というわしのシャウトが聞こえたかどうかは知らんが、「Greatest Hits」ではややナチュラルにキメよった。  ブルース君、ゴウカクゥ〜♪

 こうやって一同に集めてみると、やっぱり人間の背中ってえのは、お顔と同等以上の「その人の履歴書」って気がするのお〜。 なかなか自分では確認出来んから意識することは滅多にないものの、常に人様には見えとるワケじゃから、怖いっつうか、やっぱりシャキっとしておかねばいかんのお。 その為にもThe-Kingアイテムはゼッタイ必要ですぞ、諸君! 胸を張ってビシッとキメておけば、後姿もキマっとるハズじゃ!  

 


七鉄の酔眼雑記 〜ロバート・ジョンソン生誕100周年記念アイテムとキース・リチャーズ本

 年初から数回に亘って「ロバート・ジョンソン生誕100周年寄稿」を連載させてもろうたが、ロバートの誕生日5月8日に合わせるように、この日本でも二つの「生誕100周年記念」アイテムが発表されよった。 まずは、生前に残された全29曲42テイク収録の「コンプリート・レコーディングス」のリマスター盤「コンプリート・レコーディングス〜センテニアル・コレクション 」。 それからブルース評論家として名高い日暮泰文氏のペンによるCD付き新研究本「RL-ロバート・ジョンソンを読む」。 CDと書籍の各1アイテムづつというのは物足りない様な気もするが、どちらもその内容が素晴らしい! 只今わしは小泉元首相の様に「感動したあ!!」状態なんで、冷静にご紹介できるまでしばしお待ちを! ちなみに、月刊誌「ブルース&ソウル」8月号においても、約30ページにわたる特集「あなたの知らないロバート・ジョンソン」が掲載されとる。 以上3点で費用は8000円強になったが、わしの場合は精神的費用対効果がその何十倍にもなりそうな予感がする。 昨夏は猛暑に挑みかかるようにジンを浴びるように食らったが、今夏はこりゃ〜バーボンじゃなあ〜♪

 バーボンといやあ、ロック界のミスター・バーボン、っつうか、ハードなバーボンがもっとも似合う男、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズ関連書籍が増えておるなあ。 「ライフ/キース・リチャーズ自伝」(単行本)「聖書 キース・リチャーズ 」(発言集/単行本) 「ロック・ギター・トリビュート/特集:キース・リチャーズの50年」(雑誌)「CROSSBEART 8月号/キース・リチャーズ自伝」(雑誌)なんかが続々と新刊されとる。 「ありゃ? ストーンズ来日するんかいな?」と勘違いしてしもうたが、何の事はない。 今年は「ローリング・ストーンズ結成50周年」なんだそうじゃ。 そこでこの日本ではストーンズでもミック・ジャガーでもなく、キースにスポットライトが当てられておるようじゃ。 その結果、わしの部屋では久しぶりにロバート・ジョンソンとキース・リチャーズのCDやら書籍やらがボトルの横でごっちゃになって散乱することになった! キースといえば、ロック界の重鎮、もうゴッドファーザーの域に達しておるが、それでもロバート・ジョンソンと並べると貫禄が下がって見えるのお〜。 「ロックとは?」「ブルースとは?」 久しぶりにそんなことを真面目に考察しながら毎晩酔っ払っておるわしじゃ。 幸せじゃあ〜♪ 前回書かせてもろうた「ウルトラおたく」もやっとるが、やっぱりハッピーナイトの〆はこっちじゃな!


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