ROCK
FIREBALL COLUMN by NANATETSU Vol.125

 リポビタンの空き瓶ゴロン! ノッケからワケワカラン展開で恐縮じゃが、チョイとわしの昔話に付き合って頂きたい。 かれこれ20年ほど前じゃ。 わしが会員制のロック雑誌の編集をやっておった時のことなんじゃが、予定していた某ビッグロッカーのインタビューがドタキャンを喰らい、掲載予定の紙面4ページがポッカリ空いてしもうた。 締切直前の大ハプニングに、もう目の前真っ暗! 編集者たる者、不測の事態に備えた「予備原稿」を用意しておるものじゃが、当時超過密スケジュールのわしにはそんなゆとりなどなかったんじゃ。
 常日頃から部下に「普段は何をしてようとケッコウ。 じゃが締切だけは死んでも守れ!」を徹底させておった手前、「すんませ〜ん、今回ばかりは・・・」ってわけにはゼッタイにいかん。 社長からは「今更どうすんだアホンダラッ!」とドヤされるし、結局ヤケ酒ならぬヤケリポビタン(アルギンZだったか?)かっくらいながら、「バーローざけんな! 何がロックスターだふざけやがって!!」と怒りにまかせて思いついた急造企画を二晩徹夜で書き上げて窮地を脱したんじゃ。 途中、飯を食ったら眠くなるんで、代わりにリポ1ダースは飲んだんと違うか? 
 ところが世の中ってえのは意外なもので、この「苦し紛れの企画」が大好評。 アンケートハガキを集計したら、「もっともおもしろかった記事」のトップだったんじゃ。 「ひょうたんから駒」っつうか、開いた口が塞がらないとはこの事じゃったな。 その企画とは、
「ビッグ・ロッカーのマイナー・アルバム」。 「売れなかった作品にだって、実はこんな聞きドコロがありますよ」的な特集じゃが、これが思わぬ反響を呼んだんじゃ。 アンケートハガキのご意見欄の方には「僕ならアレ、私ならコレ」みたいな私見までぎょうさん書かれてあったもんじゃ。

 ところで先日The-Kingオフィスにおいて、新作のお買い物をした際、懐かしいそのロック雑誌を発見! ボスのブツを大切にする心、ブツの保管意識の高さは知っておったが、まさか約20年も前のわしの拙書まで持っていて下さったとは! わしゃ〜感激で涙ポロポロってのは大袈裟じゃが、「締切直前の超ウルトラ・ドタバタ劇」が思い出されてきてジワ〜ンとしたわな!
 新作のショートスリーブ・シャツで、半袖を着こなすという新境地へ踏み出すにあたり、締め切り前の不眠不休もなんのその!ってな20余年前の驚くべきパワーを取り戻したいこともあり、その時の思い出話っつうか、ライターとしての「ガンコ七鉄」の原点ともいうべき、懐かしの「七鉄・怒りの原稿」について語らせていただくぞ! どうか、最後までお付き合いのほどを!!




幻の「七鉄怒りの鉄拳!」。1992年度ボツ原稿大幅改訂ダイジェスト版
〜「ロック・アルバムガイド」には気を付けろ!


まずはだな、

「ビッグ・ロッカーのマイナー・アルバム」

という企画じゃが、まさかヤケリポビタンの滋養強壮効果ではあるまいが、アイディアが閃いて、そのまんまの勢いで書き上げた時は

「どこが駄作だバカヤロウ! これは立派な名作だ!!」

って過激なタイトルだったんじゃ。 巷で発売されとる「ロック・アルバムガイドブック」では不当に低い評価を受けておる作品に光を当てて、わかっとらんライターさんたち(実名は伏せたが)にわしがイチャモンをつけまくる!という超個人的な視点によるものじゃった。 このまま使っちゃった方がもっと反響があったかもしれんなあ〜。
 当時出版されていた「ロック・アルバムガイド」の類の大半が、通り一遍な内容であり、ロックの本質を無視した様な、まるでポップスガイド的な視点で書かれてあったんじゃ。 インターネットも無い時代じゃ。 一人のロッカー、一枚のアルバムに対して様々な意見、評論に触れたり、交換したり出来る機会は少なかった。 だから音楽専門ライターさんたちの意見は貴重であり、日本の若きロッカーたちにとっては唯一の水先案内人じゃった。 そんな重要な立場にいる者たちの書くアルバムレビューが、あまりにも無知で無責任に思えたのじゃ。
 月刊誌の新作レビューなら、「じっくり聞く時間が無かったのじゃろう」とか「実は先行シングル盤しか届けられなかったんじゃろう」などと擁護、譲歩してやれるものの、単行本のレビューならば、準備期間はそれ相当にあるから言い訳はできんぞ、バカモノ!ってなもんじゃ
 しかしながらこの「バカヤロウ企画」、最後の文字チェックの段階で部下から予想外のヨコヤリっつうか、「注意」が入ってな。 要するに「あまりにもカゲキすぎる!」と。 もう時間がなかったし、まして議論したり書き直しするエネルギーなんざは残ってなかったんで、修正、手直しを部下に任せることにより、「ビッグ・ロッカーのマイナー・アルバム」としてお色直しをしてから締切を切り抜けたってワケじゃ。
 


 ではそろそろ、当時のわしの「ロック・アルバムガイド」に対する「むかつきの種」であり、駄作や凡作とキメつけられていたパターンってのをご紹介しよう。

@シングルヒット未収録アルバム

 音楽市場の中心がシングル盤だった50〜60年代じゃあるまいし、ヒットシングルの有無によってアルバムの評価を決めるとは何事じゃ! こういう評価を下すヤツってえのは、バンドのライブを体験したことがないんじゃろう、と思うとった。 大体ヒットシングルが収録されたアルバムってのは、全体にポップ調に仕上げてあってバンドの本質から外れたものが多いというのが当時のわしの持論だったのじゃ。
(左写真 「ゴナ・ボール/ストレイ・キャッツ」「トンズ・オブ・ソブス/フリー」)


A話題作に挟まれたアルバム
 
 例えば、サントラ盤、ライブ盤、強力な新メンバーが参加した作品等、いわゆる話題性の高い2枚のアルバムに挟まれた作品ってのも、えてして評価が低かったもんじゃ。 話題先行型作品の次は、楽曲や演奏の精度、成熟度が上がるのが優れたバンドってもんじゃよ! だからこそ、その次の作品において新たなる話題を作れるってえもんじゃよ。
 レコード会社がレコード以外の話題を作ってやんなきゃレコードが売れない、どっかの国のパー子ちゃんタレントと同じレベルで見るなっ!ってことじゃ。
(右写真 「ジョン・ウェズリー・ハーディング/ボブ・ディラン」「エモーショナル・レスキュー/ローリング・ストーンズ」)
 

B一番人気のメンバー不在アルバム

 これも話題性が低いということで不当な評価を受けるアルバムの典型じゃ。 あのなあ〜、例えば仲間内でもっとも人気があるヤツ、もっとも仕事が出来るヤツなんかが居なくなったら、残されたメンバーの結束がより強くなって、新しい成果を生むことって一般社会でも少なくはなかろう。 それをまるでAKB48の選挙じゃあるまし
(実は わしはあの日武道館にいた! ワケねーじゃろう!!)、メンツの知名度だけでサウンドを評価するってことはあってはならんことじゃ。
 それに新メンバーが参加した場合は、前任者の抜けた大穴を埋めるべく新しい風をバンドに吹き込み、新しい可能性が芽生える場合も少なくない。 それをしっかり感じ取ってやらにゃー! 大体、大物メンバーが脱退するってことは、そのバンドが過渡期を迎えておるか、もしくは下降線を辿っておることなのじゃ。 いつまでも旧スタイルに固執した視点は、バンドに対して失礼ってもんじゃい! 
(左写真「カム・テイスト・ザ・バンド/ディープ・パープル」 「ブラザーズ&シスターズ/オールマン・ブラザース・バンド」


C名作の次のアルバム

 これは「名作制作後の疲れ」とか「才能を出し切った後の出がらし」とかの先入観で、あっさりと切捨てられておったもんじゃ。 よくあった書かれ方が「焦点がボケて散漫」というヤツ。 まったくロッカーをスポーツ選手と間違っておるんじゃないか?と言いたかったもんじゃ。 シングルヒット満載の「ファイトォ〜いっぱぁ〜つ!」アルバムじゃないとテメーラ聞けんのかと! 疲れが出ていてどこが悪い! 散漫であってどこが悪い!! そんなけだるさによって光輝く楽曲があることも
ロックの魅力なんじゃよ!
(右写真 「アイランド/ザ・バンド」「ロング・ラン/イーグルス」) 


D別ジャンルへのアプローチ作

 人気バンドには、ビジュアルにもサウンドにも固定されたイメージがあり、それが新しいアプローチによって覆されると騒がれてしまうものじゃ。 しかし「こんなの嫌だ」と騒ぐのはファンだけでよろしい。 専門のライターさんまでがファンを煽るように騒ぐのは止めてもらいたかった!
 大体、サウンドの新しいアプローチというのは、そん時初めてやったワケではなくて、過去のアルバムで既に試験的にトライしておる場合が多いのじゃ。 それである程度のレベルに達したから大々的に発表するのじゃ。プロというものはそういうものじゃ。 それを聞き漏らしておるから「聞き慣れない→失敗作」って決め付けてしまうんじゃな。
(左写真 「レッド・ツェッペリン3」「四重人格/ザ・フー」)


 こうしてパターンを上げてみるとだな、名盤セレクトの判断基準とともに、セレクトした者の言い訳、逃げ口実も聞こえてきたもんじゃ。 「ファンと同じ目線で選んでみました」と。 冗談じゃないぞコラァ! 場合によっては、ファンが気が付かない事を指摘してお伝えするのが専門家さんではないのかのお? それに、作品を作り上げている者、我々をロックさせてくれる者に対する基本的な敬意の念がないから、こんな愚行をやらかすんじゃよ!
 等など、まあこんなコトをよりカゲキに、どスレートに書きまくったから、入稿直前で修正せざるをえなかったんじゃな。 修正前の原稿は今でももっとるぞ! いつか披露してみたいところじゃが、時代は移り変わり、「名盤セレクト」の視点も昇華、多様化してきておるから、もうええわな。 あの時の怒りは、七鉄の胸の奥深くにとどめ置くことにした!
 願わくば、「ロックの歴史的名盤」を古いガイドブックから探す場合、上記の5項目を指針にしてくれたら嬉しいぞ。 あーいう視点は絶対に当てにならんから忘れんようにな!
 ちなみに、わしにドタキャンを喰らわせたビッグ・ロッカーってのは、ロ●ー・●●ドじゃよ! そん時はお忍びの来日でな。 ロ●ー・●●ドの日本の知人がわしの知人でもあり、そのルートでインタビューと飲み会が実現するはずじゃった。 相手がデカ過ぎて、本人に怒りをぶつけるワケにもいかんかったなあ。 あれから約20年、あの怒りが爆発したのも初夏の頃じゃった・・・ロ●ー・●●ドから貸しを返してもらう機会はいまだにないが、もうええわい。 今回諸君に一部を暴露出来たし、何と言っても新作ショートスリーブ・シャツ6連発で気分爽快! キレイサッパリ水に流すとしよう!   

 


七鉄の酔眼雑記 〜この夏は「ウルトラおたく」で!

 先月のとある日、ネットレンタルしておるDVDが全然届いておらんことに気が付いた。 そこで登録しておいた「借りたい物リスト」をチェックすると、登録枚数がゼロで、逆に一ヶ月12枚のレンタル可能枚数が30枚にもなっておった! いきなり観たい作品を30種類もピックアップするのも面倒くさいんで、これはシリーズものを一気にレンタルするチャンスと踏んだ。
 さあ何のシリーズにするか。 咄嗟に閃いたのは「空想特撮シリーズ」。 早い話が「ウルトラマン・シリーズ」じゃよ。 1966年にスタートした「第一次ウルトラ怪獣シリーズ」ともいうべき、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」のDVDを一気に登録して観まくることにしたんじゃ!
 「おいおい、いい歳こいてウルトラマンかい!?」と笑うなかれ。 随分前にThe-Kingのボスが「仮面ライダー」を取り上げて、少年時代のヒーローは永遠だ!と言っておったではないか! という言い訳は、実は今回は関係ないのじゃ。 ウルトラマン、ウルトラセブンはわしの少年時代の絶対的なヒーローというワケではなくてだな。 正直なところは、一度はカラー映像で観たいと思っておっただけなんじゃ。 実は1976年まで我が家にはカラーテレビが無くてな。 多分1972〜3年頃までには一般家庭にはカラーテレビが普及していたと思うが、我が家は貧乏だったのではなくて、母上がTV放送にまったく興味がなく、父上は海外赴任中&姉貴殿は上京中ということで滅多に家に帰って来なかったから、古いモノクロテレビを買い換える必要もなかったのじゃ。 わしもテレビよりも、とにかくロックじゃったからな! だからわしは大人になってから、かつてモノクロテレビで観るしかなかったカラー番組を、本来のカラー映像で観直したいっつう願望が結構強いのじゃよ。

 レンタルしてみて初めて知ったが、「ウルトラQ」だけは全作品モノクロじゃった! まあこんなズッコケはええとして、薄暮の刻より浴衣羽織って団扇を揺らしながら半世紀も前の特撮映像なんか観ておるとだな、マジで当時にタイムスリップした気分になるのお。 しかしまあ、ロンゲのロック・オヤジが夜な夜なホロ酔い気分で、「へぇ〜あの怪獣さんはこんな色しとったんか!」「ほほぉ、ウルトラマンにもいろんな顔があるんじゃのお〜」なんてやっとる図はちょっとシュールというか・・・キモイかもしれんなあ。 しかも世の中は地デジだ、ブルーレイ・ディスクだと、映像の急速な向上が実現されとるのに、わしはカラー映像っつうだけで喜んでおるわけで、この世の中とのすさまじいギャップに苦笑してしまうわな〜。
 しかし毎晩毎晩観ているうちに、“色つき”なんてことはどーでもよくなってきた。 人間のドス黒い邪念や飽くなき欲望によって産まれ落ちた怪獣たち、人間社会の上辺だけの信頼関係さえ崩壊させれば地球は侵略可能と考える異星人たち。 人間と怪獣/異星人との狭間で悩みながら闘うウルトラマン、ウルトラセブン。 おいおい、これって本当に子供向けの番組だったんか?と、まるで戦争文学のような脚本にあらためて圧倒されてしまったわい。 下手なヒューマン番組やSF小説よりもはるかに濃密な内容ではないか! この夏は、ちいとばかり「空想特撮オタク」をしてみることにした!


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