ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.119


ロバート・ジョンソン生誕100周年に送る 「キング・オブ・デルタ・ブルース」の基礎知識 Volume 5
「和文ロバート・ジョンソン評伝」を“すべて”読みつくす! 

 2月9日/Vol.116以来のロバート・ジョンソン特集は、ロバートについて書き記された書籍、それもこの七鉄のおめがねにかなった名著!をセレクトしてしんぜよ〜♪とゴキゲン・モードでやりたいところなんじゃが、現実はキ・ビ・シ・イ。 日本語の物は数が極めて少ないんじゃよ。 ただでさえブルース関連の書籍(翻訳本)の数は腹が立つほど少なく、しかも一冊まるごとロバート・ジョンソンってのは、2冊の伝記だけなんじゃ。
 その生涯は27年で、残された楽曲はわずか29曲42テイク。 発表されとるアルバムがたったの3枚なら、写真も3枚。 そして伝記も2冊だけ。 とにかく偉人らしからぬ“ないないずくし”のロバート・ジョンソンじゃ。 そこでだ。 この際だから現在わしの手元にある「ロバート・ジョンソンが語られた書籍」をぜ〜んぶご紹介してしまおう! 
 もし現在諸君がロバート・ジョンソンについて“もっと知りたい”のであれば、願わくばこれからご紹介するブツを全部読破していただきたい。 たいした数量ではないんでご安心あれ。 エルヴィスのように星の数ほどある資料を網羅するのもファンとしての立派なあり方じゃが、僅かな資料を一気に制覇して自分なりのイメージを作り上げながら、末永くヒーローを追いかけるのもオツじゃ! いまだ僅かな数量にとどまっておる「ロバート・ジョンソン考察資料の歴史」に、将来新たな1ページを加えることが出来るのは、実は諸君なのかもしれんぞ! 日本全体が地震の被災地のための自粛を求められておる現在、ささやかな娯楽として書物と向かい合う格好の季節かもしれんな。 そしてロッカーであるならば、カフェや公園などで読書する時は、新作パステルカラー・パンツでささやかなオシャレをしておくことも忘れんようにな。 生涯ブルース旅芸人じゃったロバート・ジョンソンもまた、いかなる時も身なりにこだわった男だったのじゃ。



何はともあれこの2冊。 伝記/評伝はこれしか発表されておらん!

■「ロバート・ジョンスン〜伝説的ブルースマンの生涯/ピーター・ギュラルニック著」

 1989年に発表された世界初のロバート・ジョンソンの伝記。 しかしB5版でたったの150ページ(日本版)という分量は、発表を心待ちにしていたファンにとっては何とも期待外れのボリュームじゃった。 ファンはあらためてロバート・ジョンソンというブルースマンの情報の少なさを痛感したもんじゃ。 しかも150ページ中、ロバートに直接的に関連する内容はほぼ半分といってもいいじゃろう。 残り半分は時代背景とか、時代の音楽考察に割かれておる。 肩透かしを食った感はあったものの、わしは全文を暗記するほど読みふけったもんじゃった。
 本書の価値は最近になって痛感しとる。 本書で詳らかにされたロバート・ジョンソン情報の質と量は、その後20年が経過した現在でも大して変っておらんのじゃ。 つまり本書が我々が知り得ることのできる「ロバート・ジョンソンの全て」なのじゃ。 本書の執筆にあたり、著者の調査がいかに優れたものであったか、20年という時の流れがそれを証明しとるといえるじゃろう。
(右写真は原書のカバー→)


■「クロスロード伝説/トム・グレイヴス著」 
 
2008年に発表された2冊目の伝記じゃ。 日本語版出版に際してその帯には、RCサクセションの仲井戸麗一氏の「ヤバイ伝説!ヤバイ音楽!〜」というキャッチコピーがあった。 期待したよ、あんなコピー用意されちゃあ! でも驚くべき新発見はほとんど無くて、前伝記とは別の意味でガッカリしてしもうた。 チャボよ、あれはないぜ、あれは!
 本書の特色は、サブタイトル「THE LIFE AND AFTERLIFE BLUES LEGEND」の通り、半分がロバートの伝記。 そしてもう半分はここ20年あまりのアメリカにおける「ロバート・ジョンソン・ブーム」の顛末が紹介されておる。 3枚の写真の発見エピソード、全テイクが公表された「コンプリート・レコーディングス」が巻き起こした様々な現象、関係者が語った新しい証言、「ついにロバート・ジョンソンの映像発見か!?」と一時騒然となったフィルムの真偽など、アメリカのファンの果てしなき「ロバート愛」のドラマが熱くしたためられておる。

 「いくら調べまくっても、大したもんは何も出てこなかったんじゃな〜」ってのがわしの素直な感想じゃが、前述した「フィルム騒動」の記載はおもしろかったな。 なんでも1930年代のミシシッピの黒人たちの生活が撮影されたフィルムが1998年に発見され、その中にロバートとおぼしきストリート・ミュージシャンの演奏シーンが3秒半ほど映っていたという。(写真右→) 「これは世紀の大発見だ!」となって、ジミー・ペイジとロバート・プラントが即座に「100万ドルで買う!」と申しこんできたり、ローリング・ストーンズのメンバーから確認の電話があったり等、ビッグ・ロッカーまで巻き込んだ熱狂ぶりが微笑ましい! 「なんじゃい。 我々と同じミーハーではないか!」 (詳しい分析調査の結果、このミュージシャンはロバートではないという結論に落ち着いたらしい。)


歴史的名著の中に記された、読んでおきたいロバート評論の短編傑作 


■「ミステリー・トレイン/グリーク・マーカス著」

 アメリカン・ロック評論史上に名高い文献として、また「デッド・エルヴィス」を書いたG・マーカスの名著として諸君も知っておるであろう1冊じゃ。 翻訳本が出版されたのは確か1975〜6年であり、全300ページ強の中でロバートに関しての記述はわずか20ページほどじゃが、恐らく日本人が読むことの出来た初めての「ロバート・ジョンソン論」じゃろう。
 本書におけるロバートの記述は、「彼こそが、ブルースとロックの表現手法の絶対的な基礎を作り上げた、偉大なる最初のロックン・ローラー」といった、崇拝に近い論調で力説されておる。 そしてエルヴィスに関しては、「エルヴィスの最初の音楽は、ロバート(の音楽観)から完全に抜け出そうとする誇り高い試みだった」としておる!
 しかしさすがは名著と評されるだけあって、僅か20ページの中でロバートの音楽的背景、世界観、ロバート以前、以後のブルースとの関連性を端的にまとめ上げており、コムヅカシイ理論なんかもあるが、一気に読めるナイスな文章じゃ!(翻訳者・三井徹氏の優れた翻訳力か?) 右写真は、本書の中にあるロバートの似顔絵。 ロバートの友人たちの証言をもとに、シカゴ警察の似顔絵師が描いたらしい。
 
 

 
“ブルース本臭さ”のない、ロバート大特集号
■「ロック・ジェット Vol.33/2008年秋号」

 マニアックな切り口でアーティスティックなロッカーを特集していく同名ロック季刊誌が企画した「ロバート・ジョンソン特集号」。 ブルースやジャズの専門誌の多くは、「ロッカーなんぞに用はねえ!」的な上から目線がシャクにさわるが、その点ロック専門誌の企画だけあって、安心して手に取ることが出来るぞ。
 約100ページにも及ぶロバートに関する記述は圧巻で、日本人のミュージシャン、ライターたち総勢12名のロバート・フリークたちが、「ここぞっ!」とばかり熱きロバート論をさく裂させておる。
 全曲解説、ミシシッピ・デルタ・ブルースの魅力の紹介、宗教論的な分析など、その切り口は様々で読み応え十分。 ブルース専門ライターとは一味違う、ロック寄りの適度なミーハー気分もかまされて、コッテコテのブルース・フリークや研究者の文章がどうにも苦手な輩にはもってこいの一冊じゃ。



劇画ロバート・ジョンソン!
■「俺と悪魔のブルーズ 1〜4巻
             /平本アキラ著・画」

 これはスゴイ! 世界でも類をみない、日本人によるロバート・ジョンソン漫画じゃ。 作者平本氏は、恐らく手に入るロバートやブルースの関連書籍を読破して、さらに歌詞を吟味して、自分なりのロバート・ジョンソン像を発酵させて本書を描いたに違いない。 すごい執念、すごい創造力、すごいロバート愛! 
 純然たるロバートの伝記漫画ってわけではないが、「映画ロバート・ジョンソン」の脚本の原作になってもいい! 連載漫画という表現のキャパシティーを存分に活かして、悪魔に魂を売ったブルースマンの生涯を、時にはリアルに、時にはミステリアスに、まさに縦横無尽に描きまくる迫力は、ミシシッピのファンにも見せてやりたい! ちなみに、08年第4刊まで発表された時点で連載は休止されとるようじゃ。


女性のための?!ブルース・エッセイ(CD付)
■「ブルースマンの恋/山川健一著」

 元々女性誌に連載されていた、ブルースマンやその作品をストーリーの軸としたエッセイをまとめたCD付きの単行本。 
 ブルースマンたちの実際の色恋沙汰と、作品に影響を受けた現代の若者たちの恋愛風景を巧みに交差させながら、ロバート・ジョンソン、マディ・ウォーターズ、エルモア・ジェイムスら8人のブルースマンの魅力を伝えようとする異色の作品。 CDはBGMとして楽しめるように、登場する8人のブルースマンの代表作が1曲づつ収録されておる。 

 現在 
デルタ・ブルーズの真髄を読む!
■「ディープ・ブルース/ロバート・パーマー著」
 本書はブルースの源流とされるミシシッピ・デルタ・ブルースの解説に焦点を絞った460ページの力作じゃ。 カヴァー写真から明らかなように、ブルースの巨匠マディ・ウォーターズの生涯をひとつのガイドラインとしてデルタブースの歴史が語られていくのじゃ。 
 マディは世代的にはロバートの弟分に当たり、ロバートが生前には果たせなかった
デルタブルースのシティ・ミュージック化といった進化を担うわけじゃが、そこら辺のマディの功績を、時代の推移を多角的に参照しながら深く切り込んでいっておる。
 ロバートの記述は全編にわたって幾度となく登場
しており、ブルースの基礎だけではなく、ブルースの進化においても不可欠な存在であったことがよお分かる。


風光明媚な“ブルース地方”の研究書
■「ブルースに囚われて
               〜アメリカのルーツ音楽を探る

 日本人8名のブルース研究者が、「ブルースの魅力はなんぞや?」っちゅうトコを各人の文化的視点、民俗学的視点などから分析した一冊。 こりゃ〜ムズカシ過ぎるわな〜と最初はマブタがおもた〜くなったもんじゃ。 しかも横向き印字なんで学校の教科書みたいじゃ。
 しかし書き手8名は単なるブルース・センセーではなくて、「ブルースの底なし沼」にハマった純粋なリスナーでもあるんで、お酒やギター持参が許される「特別ブルース授業」みたいなスタンスでトライしてみてくれ。 
 興味深いのは、ロバートの記述において、理論の展開や新説の披露は影をひそめ、ファンの視点による楽曲の分析になることじゃ! どんな高等な頭脳の持ち主でも、ロバートの音楽の魔力を抗うことは出来んのじゃろう! 


史上最強!のブルース作品ガイド
■「ブルースCDガイドブック/小出斉著」

 ボリューム、解説の質、読みやすさ、ブルースの歴史早わかりの編集、 ここまでブルース初心者からマニアまでも唸らせるもんは現在のところ存在せんじゃろう。  約1800枚にも及ぶブルースのCDを、1枚たりとも手をぬかない渾身の解説で語り尽くし、しかもジャンル別、スタイル別に区分けされ、作品の製作年まで考慮された配列になっており、もうため息しか出ない超強力、史上最強のブルースCDガイドじゃ。 
 あくまでもCDガイドじゃから、ロバートの作品解説は純製オリジナルの2作品と「コンプリート・レコーディングス」の三か所のみじゃが、前後に関連性の高い別のブルースCDが配列されておるので、ブルース史の流れに沿ってロバートの作品解説を読むことが出来る。 ブルースファンならば、墓場にまで持っていきたい一冊じゃ。


 以上9タイトルの他では、「ブルース&ソウル・レコーズ Vol.56」の特集記事「ブルース界の3大ロバートに迫る!」、「ローリング・ストーン・レコードガイド」のレコード評、「コンプリート・レコーディングスの解説書(研究書)、日本語の激しい意訳が物議をかもした「ロバート・ジョンソン歌詞集」を追加でおススメしておこう。 これ以上はロバート・ジョンソンについて一定の文字量のある日本語文献はないと思うぞ。
 もし諸君が上記の書籍を読破しても、まだ物足りない!と思うたならば、それは既にロバート・ジョンソンにハマっている証拠なのじゃ。 「もっと知りたい!」という熱い欲求、要望は、アーティストとの距離を縮めることになるのじゃが、ロバート・ジョンソンの場合は資料の数が少ないので、のめり込めば込むほど、逆に実体との距離が開いていくような錯覚に陥ることもある。 今回ご紹介した文献とは、好きになるほどにロバート・ジョンソンが遠くに行ってしまうような絶望感を振り払うために、著者が懸命に書き綴ったロバート・ジョンソンへの「激愛ラブレター」とも言えるじゃろう。
 
 しっかし、1920、30年代まで時代を遡っての黒人社会の調査となると、ホント資料が無くて苦労するんじゃのお〜。 The-Kingブランドのモチーフは1950年代だからよかった!ってミョーに胸をなでおろしたりしとるわしじゃ。 でも50年代の資料だって、そんな簡単に入手できるワケではないぞ! ボスは生涯をかけて必死こいて50年代の息吹を復活させておるのじゃ。 そこんとこを今一度再認識して、これからもThe-Kingアイテムを愛顧してくれ〜い。 そして1950年代のロックン・ロール文化の根底には、1920〜30年代の黒人ブルース・カルチャーがあることも、どうぞお忘れなく! これにて七鉄の「ロバート・ジョンソン特集」は一旦終了とさせていただこう。 “ご静読”ありがとうじゃ!

●おまけ● 右写真のセピア版は、今も真偽の程が議論されとるロバート3枚目の写真(左側の人物)。 ジャケ写に使われた有名な写真と見比べてほしい。 パンツの美しいプレスと折り目、右足のポーズのセンス、妖しい眼光など、わしは同一人物だと見ておる!
  
 
なれ


七鉄の酔眼雑記 〜何が乾杯だバカモノッ!

 大地震の余波でわしの書斎がメチャクチャになったことは、新作紹介のコーナーで触れさせてもろうたが、その書斎の復旧、整理が終わったのは3日後の深夜じゃった。 ひとまず目の前の大整理を終え、ついでに大掃除までやったせいか久しぶりに心地よい疲労感、空腹感を覚えたもんじゃった! 大晦日の大掃除より気合が入ったもんのお。 さて、寝る前の腹ごしらえのために近所の24時間営業のスーパーに行ったんじゃが、そこで信じられない光景に出くわした! ミネラルウォーター、米類、麺類、パン類がまったく無い! 部屋の復旧に気を取られて、既に巷で始まっておった買占めの騒動にまったく気がつかんかったのじゃ。 いやあ〜酒類が買い占められていなくてよかった。 そんなことされたら深夜に大シャウトかまして大暴れしてしまうところじゃった! なんて冗談こいている場合じゃないぞ、これはっ。 ここは東京の下町で、東北の被災地ではないのに、なんでこんなことが起こっておるのじゃ。
 すぐに食べられるものなんて何もありゃせんので、仕方なく深夜営業のラーメン屋へ向かった。 わしは既に何だか得体の知れない気分になっておったよ。 しばらくは主食が口に入らないのか、といった不安感ではない。 もちろん、買占め現象に気がつかなった自分のトロさへの反省感なんかであるわけもない。 嘆くべきなのか、怒るべきなのか、笑い飛ばすべきなのか、どんな感情でもって対処したらいいのかワケガワカラン・・・。
 そしてラーメン屋において、雑多な感情が交錯するわしの思考のピントが合うハメ(?)になった。 店内
では30代ぐらいの会社員風の男女数人が、被災地の状況を報道しているTVを観ながら、「我々は無事でよかったよね〜」とか何とか言いながら、生ビールで何度も「かんぱ〜い!」しておったのじゃ。 ついにわしはキレかかった。 「キサマらっ、何が乾杯だ!」と拳に力が入って立ち上がりかけたその刹那、カウンター越しにラーメンを茹でておる店主と目が合った。 店主は悲しそうな瞳をたたえて顔を二、三度小さく振りよった。 「やめときな、ダンナ」って顔に書いてあったんじゃよ。

 先日、わしや諸君にとってはロッカーの大先輩であるユーヤ御大が、渋谷駅前でゲリラ募金を始め、「買占めなんてとんでもない!」「この時期にナイターなんて巨人はバカだ!」「みんなが被災者を救うことができる」と叫んでくれた。 ユーヤ御大のこのアクションで、わしはようやく救われた気分になったもんじゃ。 いや、無事だった者が「救われた」なんて言っとる時ではないのじゃ。 節電、節食、募金、ボランティアなどなど個人の事情によって出来る種類やその程度は様々じゃが、どんな小さなアクションでも、それが確実に被災者の救済に繋がることを忘れずに、しばらくは慎ましやかに生活していこうではないか、諸君。


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