日本のプロ野球でトンデモナイ記録が生まれて大騒ぎになっておるな。千葉ロッテの佐々木投手が“あわや2試合連続完全試合”をやりよった。2試合合計17イニング無安打無四死球無失策って到底アリエナイ記録じゃ。しかも全51打者から33三振奪取ってケタハズレの内容じゃ。この記録のスゴサを打者記録に置き換えると、10打席連続本塁打みたいなもんじゃ。

記録マニアのわしは、これまでの一投手の「連続イニング無安打無四死球無失策記録」を調べてみたが、「日本プロ野球記録一覧」にはそんな記録項目は載っていない。過去に完全試合をやった投手も、次の登板では早々に安打を打たれていることもあってか、カテゴライズされるべき記録ではないってことじゃ。佐々木投手の大偉業を扱う記事も、「これまでの記録は～」という付記が見当たらない。そこでわしからちょっとエラソーに、佐々木投手以前の「連続イニング無安打無四死球無失策」記録をご紹介しておこう。ひょっとして数字としては間違っておるかもしれんが、オモシロエピソード付なんで知っておく分にはよろしかろう。

　アメリカ・メジャーリーグでは、通算511勝を挙げた伝説の大投手サイ・ヤングが1904年に作った24イニングが記録 日本では、1970年9月26日、阪神甲子園球場での阪神-中日戦における江夏投手が、2回2死後から延長13回までの“11イニング1/3（34打者）の間は”「無安打無四死球無失策」を続けておった。当然その間のスコアは0-0。結局延長14回先頭打者に決勝本塁打を浴びて江夏投手は敗戦投手に。江夏投手は降板してベンチへ戻ると極度の疲労からぶっ倒れてしまった。その模様を取材陣がすかさず写真撮影したところ、当時の村山監督が「アンタらそれでも人間か！うちのエースが命賭けで投げたのに何をするんや！！」と取材陣に殴りかかったという。（※四死球や失策有りの連続イニング無安打記録は、1972年高橋義正（東映）投手が作った16イニング2/3）
それから52年。佐々木投手は「2試合連続完全試合」を目前にして、井口監督から「球数が100球を越えた」「あそこまでが限界」との理由で降板指令。世間では「稀に見る逸材を潰さないための最善の配慮」という風潮・・・時代は本当に変わったんじゃなあと思う。

江夏投手は約3年後の1973年8月30日、同じ甲子園球で同じ中日を相手に、今度は延長11回無安打無得点試合を達成（2四球）。しかも自分でサヨナラ本塁打を放って3年前のリベンジを果たした。「野球は俺一人でも出来る」と言ったとか言ってないとか。呆れるばかりのスゲエ投手、スゲエ執念じゃ。一方佐々木投手は“将来のメジャーリーガー”として球団からもファンからも大事に大事に守られており、空前の大記録を逃した本人の談話も淡々。比べること自体がナンセンスじゃが、令和と昭和、どっちの時代が投手として幸せなのじゃろうか。