ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.26

 わしは今、久しぶりに心うきうき状態じゃ。 今月末から今年初の旅に出るんじゃよ。 どのナッソーにするか、フラップシューズはブナンなブラックでいくかブルースウェードか。 ホースシューリングはゴールドかシルバーか。はたまたホース入りか無しか。 もう準備に余念がなくて、誠に忙しい毎日なんじゃよ。 ほとんど修学旅行を間近に控えた小学生の気分じゃな。 いやあ〜旅が出来ん、酒が飲めんようになったらわしの人生はジ・エンドじゃ! 
 旅の準備で忘れてはならんのが、携えて行くべき愛聴の音楽じゃ。 今回は久しぶりの旅であり、いろんな意味で旅の原点を味わうつもりなので、その原点回帰の姿勢に相応しい、わしの好きなミュージシャンの原点ともいうべきブツを選んだ。 エルヴィスの「フロム・エルヴィス・イン・メンフィス」、ジョニー・キャッシュの「アット・サン・クエンティン」の2枚じゃ。 出立、いや出陣の前にこの2枚の名盤のスバラシサをかましておくので、更なる味わいを見つけるつもりで読み流してくれたまえ。


ロック史上最大の変革期を収拾した偉大なる2枚!
 
「フロム・エルヴィス・イン・メンフィス」「ジョニー・キャッシュ/アット・サン・クエンティン」を語ろう!
                             

 
“旅のお供に”と悩んだ末に選んだ「フロム・エルヴィス・イン・メンフィス」と「アット・サン・クエンティン」。 まったくの偶然だが、この2枚の作品には共通項がいっぱいあった! まず発表がともに1969年であること。 次に発表の前年に衝撃的なアクションがあったこと。 エルヴィスは“あの”「TVカムバック・ショウ」。 ジョニーはフォルサム・プリズンでの刑務所ライブじゃ。
 またこのアクションが巻き起こしたキョーレツな話題性により、後発となったこのアルバム2枚は熱心なファン以外には(特に日本においては)割と地味な存在に甘んじていることも共通しておる。 
どっちかというと、純粋なファンより、ヒョーロンカ君たちの間で評価が高かったようじゃ。
 更には近年になってロックの歴史や本人たちの音楽的ルーツを語る上では欠かせない存在として、ようやくクローズアップされ始めたことじゃな。 「アット・サン・クエンティン」は、つい先日DVD付きの豪華完全版が発売になったばかりじゃ。 


 そして最大の共通項とは、優れたヴォーカリストとしてのエルヴィス、ジョニーの懐の深さを堪能できる最適の内容であることじゃ!とわしは思うとる。  アルバム全編に、動と静、白と黒、清と濁、善玉と悪玉、そして伝統と流行。 あらゆる相反する魅力が交錯し、しかも曲によってはその両方を自由に行き来する驚異的なヴォーカルを聞くことが出来る。  (わしが洋楽カラオケでこれをやると、精神分裂ヤローとかなんとかのブーイングの嵐となる・・・ムナシイ・・・)  アルバム発表前の衝撃的なアクションによって、エルヴィスもジョニーも自分自身の魅力、ルーツをはっきりと認識して完全リフレッシュ! ロッカーとしての巨大な才能を大爆発させておるのじゃ。 「アット・サン〜」は前作同様の刑務所ライブだが、デキはこっちの方がスゴイ! 
 またその背景には、本人と本人をサポートする側にスゴイ危機感があったと思うぞ。  当時のロック界は、反体制思想とドラッグ文化が入り込んできたことによって雑多な様式が乱立することになり、奇抜な新人デビューの雨あられ状態となっておった。  既に実績のある者でも、従来のロックスタイルでは時代に相手にされない有様じゃったな。  だからエルヴィスもジョニーも、ロッカーの大御所として「これでどーだあああああ〜」という必殺の一撃をかます必要があったのじゃ!  それも彼らの十八番だったシングル盤ではなく、アルバムでやらねばならんかった。 当時のロックシーンはアルバム偏重時代でもあったのじゃ。  
 
「そ、そんなバカな! エルヴィスやジョニーが時代の動きに左右されるなんてことがある訳ないだろうがっ!」ってお怒りのファンもいらっしゃることじゃろう。 ましてやエルヴィスは「キング」だし、ジョニーは頑固一徹の孤高のイメージが強いからのお。
 でもこの偉大なる二人をして“変化”と“本気”を覚悟させたほど当時のロックシーンは歴史に残る大変革の時を迎えておったのじゃ。 大変革の時と戦うための挨拶代わりのジャブが「TVカムバックショウ」であり「刑務所ライブ」だったのじゃ。 ジャブにしちゃあ強烈過ぎたが、その後のキメの一撃が
「フロム・エルヴィス・イン・メンフィス」「アット・サン・クエンティン」じゃ。
 エルヴィスとジョニーは時代をものの見事にノックアウトしたのであ〜る。




 
さあて、偉大なるエルヴィス、ジョニーにノックアウトされたロックシーンはどうなったのか? 当時は日本ではほとんど話題にもならなかったことじゃが、「フロム・エルヴィス〜」「アット・サン〜」はロック界に新しい流れを作り出すことになるんじゃよ。 新しい流れとは、70年代に入って芽吹くことになる「スワンプ・ロック」じゃ。 
 「スワンプ」とは直訳すると「湿地、沼地」じゃが、アメリカ南部伝統の泥臭いサウンドを追求するスタイルのロックじゃ。 演奏形態も楽器主体からヴォーカル主体、ギターパートにはスライド奏法がフューチャーされ、マンドリンやバンジョー等の古き時代の弦楽器も頻繁に導入された。 これはやれサイケデリックだ、やれプログレッシブだ、と過剰なトリップ状態になっていたロックシーンをあっという間にロックの原点に立ち還らせることになったんじゃよ。
 「スワンプロック」というジャンル名そのものは死語となったが、ロックが混乱状態になると、その事態の収拾をはかり、原始的な部分でロックを新しい境地、正しいテンションへと誘導する不滅のスピリッツ、方法論がつまっておるのが「スワンプロック」という訳じゃ。 

 日本のロック参考書の類は口をそろえて、「スワンプロック」創生の功労者的作品はザ・バンドの「ミュージック・フロ
ム・ビッグピンク」という作品であると指摘しておる。 これは決して間違いではないんじゃが、もっと奥深いところでは「フロム・エルヴィス・イン・メンフィス」と「アット・サン・クエンティン」が「スワンプ・ロック」創生の主なんじゃ!とわしは今でも思うとる。
 ここんとこをよ〜く覚えておいてくれたまえ。
 ちなみに諸君、ロックファッションに行き詰ってお困りの時は、迷わずTHE-KINGのラインナップに戻ってくればええ!

 しかしまあ、才能に満ち溢れたお方というのはウラヤマシ〜のお。 原点に戻ると輝きを増して、以前よりも多くの喝采を浴びることになるからじゃ。 わしなんか酒という原点に返って飲みまくると、同じ“げんてん”でも「減点ジジイ」とか言われて非難を浴びるだけじゃ。 散々減点されまくって、もう人生の持ち点も無くなってしもうたわい! 残るは居直りのスピリッツだけじゃあ〜。 “死にそこない”の居直りはタチが悪いと言うが、どうか今後も変わらぬお付き合いのほどを!

※右写真上より スワンプ・ロックの名盤「レオン・ラッセル・ファーストアルバム」と「デラニー&ボニー/イン・コンサート・ウィズ・エリック・クラプトン」。一番下は「ザ・バンド/ミュージック・フロム・ビッグピンク」


七鉄の酔眼雑記

 
冒頭でも述べた通り、わしは今月末から旅に出る! 旅ってのは実にええ。 こんなオイボレでさえ五感が冴え渡り、風の香り、土の匂い、草木のざわめき、光の色など、普段は感じ損ねている自然の恵みの有り難さってのを体感できるからじゃ。 それはある時は遠い昔に感じた様でもあるし、まだ体験したことのない未知の感覚だったりする。 そして人様のさり気ない親切も身に染みるし、乙女の微笑みはより一層嬉しい!(ってこれは滅多にいただけるものではないが。)

 今回の旅は、かつて外地でもっとも長期逗留した某国であり、訪れるのも数年ぶりなので、今もそこで働いている旧友たちと再会することが何よりも楽しみじゃ。 中でもビール職人のS氏、元気かのお〜。 わしの酒好きが高じて現地のビール工場を見学させてもろうた時に知り合った、心優しい日本人技術指導者じゃ。
 当時の彼は、日本のビールの味に近い現地ビールを作るために日夜悪戦苦闘しておったなあ。 現地と日本との水質や空気成分がまったく違うから、並大抵の努力では日本の味に近づけられないと嘆いておった。 そのストレスからか、夜の宴会ではひたすらハジケテおったな〜(笑) よおし、久しぶりにS氏とつるんでご自慢の大シャウトを披露するか、って調子に乗りすぎてギックリ腰には注意せんとな!
 その他にも、慣れない外地で独立独歩でやっている優秀な友がたくさんおる。 みんな今ではさぞ偉くなったんじゃろうなあ〜。 わしもいい加減しっかりせんと・・・なんてことより、ムフフフ、日本の肴を持参すれば、こりゃ〜タダ酒が飲めるかもしれんぞお〜!ってわしもセコイのお〜♪ まあ、いっちょこのコーナーのためにいいネタを仕入れてくるので諸君待っとってくれ。

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