8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.88
                                                                                       
              
            ミッド・センチュリー・モダン

 みなさん、こんにちは。ツマヨウジをくわえ、サラリと2軒目ののれんをくぐる3年エッチ組みの担任、頑固8鉄です。
人生に教科書なんてもんはありません!! 一軒目で生ビール20杯! 既に泥酔状態のわたくしではありますが、ヘパリーゼでも飲んで、ここは体勢を整えないといけません。

さてさてTHE KINGでは、工房部をオープンし、トゥー・フェイスなどフィフティーズ好きにはたまらないハウス・デコレーション・アイテムをリリースしています。こうしたアイテムのデザインの源流となっているのは、1910年代からあるアール・デコ様式と、1930年代から現れたモダン・デザインとが混ざり合った1950年代特有の様式(ミッド・センチュリー・モダンといわれる)にあるんですよね。これっていったいどんなものだったのか、というのが今回のお話。

 
1950年代の、家具を中心としたインテリア及びインダストリアル・デザインは、第二次大戦中に飛躍的に進展を見せた成形合板技術を核として、それまでのモダン・デザインにない大量生産品を生み出したところに最大の特徴があります。
こうした、戦後モダン・デザイン家具のリーディング・カンパニーだったのは、アメリカのハーマン・ミラー社、ノル社の2社で、それぞれ、チャールズ・イームズ、ジョージ・ネルソン、エーロ・サーリネン、ハリー・ベルトイヤといった花形デザイナーを抱えていました。
デザイン史でみると、1930年代のドイツ・バウハウス(美術学校)が提唱していた建築デザインにおけるモダニズム運動(校長だったミース・ファン・デル・ローエと副校長だったル・コルビジュエ)の流れを汲むものです。実際、イームズ、ネルソン、サーリネンは、工業デザイナーである以前に、建築家でもありました。
特に、ハーマン・ミラーがリリースしたチャールズ・イームズのラウンジ・チェアやプライウッド・チェアは、当時のデザインの最先端をいく代表作のひとつ。

もともとはフィンランドのアルヴァ・アアルトの開発した成形合板技術を効果的に用いた革新的な工業製品だったと言われています。イームズは41年に、海軍に採用された人間の脚用のギブスを開発し、これが成形合板の大量生産品の発火点となっていますが、それを発展させる形で、曲線美あふれるモダン家具の大量生産化を成功に導きました。
イームズをハーマン・ミラー社に登用したのは、デザイン部長だったジョージ・ネルソンで、自身もデザイナーとして数々の傑作を残しています。特に、サン・クロックやボール・クロックといった壁掛け時計の数々は、有名。

イームズの親友であったノル社のエーロ・サーリネンは、イームズの恩師でもあるエリエル・サーリネン(フィンランドの建築家)の息子で、父と同じく建築家。曲線を多様した革新的な建築デザインのJFケネディ空港ターミナル・ビルの設計で有名ですが、ウームチェアに代表される家具のデザインでもよく知られています。こうしてみると、戦後アメリカのモダン・デザインの先駆者ふたりのデザイン思想のルーツがフィンランドにあることがわかります。


ノル社のもうひとりの雄が、ワイヤーを用いた斬新な(今日ではスタンダードな)ダイアモンド・チェアで有名なハリー・ベルトイヤで、建築家ではなく、彫刻家。もともとは、イームズとハーマン・ミラーで成形合板技術の家具への応用を研究していましたが、ノル社に移ってから家具デザイナーとして数々の名作を残しました。




また、モダン・デザイン発祥の地であるヨーロッパでは、アルヴァ・アアルト、ポール・ケアホルムといったデザイナーを中心に、スカンジナビアン(ダニッシュ)モダンが大きく花開いたのが、1950年代です。
現在の日本でも非常に人気があるスタイルですが、もともとは、木材資源が潤沢な北欧の工業化によって生み出されてきたもので、スタイル的には、北欧デザインはもともと機能主義的で無駄がないものが好まれていたことから、他国のモダン・デザイン化とは一線を画する独自の進化をとげてきたとも思われます。


さて、1950年代には、こうした、デザイン史の華々しい革新である「グッド・モダン・デザイン」が時代を代表する最先端だったのですが、一方で、モダン・デザインによってもたらされた更なる大量生産技術で、もっと古く1920年代から続く、アール・デコ様式に近い土産品的、大衆的な香りのする家具や装飾品がたくさん作られました。
もともとのアール・デコは、20世紀初頭の1910年代から1930年代にかけて現れたデザインの傾向で、主に建築デザインを指します。現在もっとも有名なデコ様式は、エンパイア・ステート・ビルディングでしょう。我が国でも、東京の駿河台にある山の上ホテルは36年にアメリカ人建築家が設計したデコ様式として現在もその風貌を保っています。
工業デザインの分野では、「口紅から機関車まで」で有名なレイモンド・ローウィが作り出した「ストリームライン・モダン」が代表的なデコ様式です。これは、1934年、ローウィはペンシルベニア鉄道の電気機関車を風洞実験結果をもとに、流線型にデザインし、これが以後、今日まで続く、自動車や飛行機などの空気力学をベースにした流線型デザインの先駆けとなったのです。この流線型は、乗り物だけでなく、さまざまな工業製品のデザインにも大きな影響を与えました、ローウィは日本では、たばこのピースのパッケージデザインでも知られています。



1930年代のモダン・デザイン期以降、デザインの専門家の間では、デコは前時代的で悪趣味な装飾、という認識が普通になっていました。しかし、1950年代に、小さなデパートやスーパーマーケット、通信販売などで売られた安物の家具、調度品は、明らかにアール・デコ様式が多くをしめています。こうした安手の工業製品には、デコ様式特有の、装飾的なおもしろさを残した独特の個性と魅力があり、まるで美術品のように博物館展示されたり、たいへんな高額アイテムである「グッド・デザインもの」と違って、比較的安価で取引されるノスタルジックなアイテムとして、愛好家に人気があります。



さてさて、THE KINGでは、工房部にて、なかなか出てこないヴィンテージ・アイテムに代わり、新品の、センスあふれる1950年代風デコレーション・アイテムをご用意しております。あまりなじみのないお客様も、これを機会にこうした世界に触れてみてはいかがでしょうか。もちろん、その前にファッションだけはキチンとせないけませんよ。それが人生を変えるのであります。生徒達にセイセイはどこで服を買っているのですか?? なんてよく尋ねられますけれど、アメ横あたり!!っとかテキトウな事言って、逃げてくるわたくし頑固8鉄でありました。スカイツリーのお膝元からひたむきに裏側から確かなファッションを提供するザ・キング。解放日にぜひ来て、現物を見に来られることもお薦めいたしまーす。すぐ近所の橋でスカイツリーをバックに記念撮影もよしですよー。わたくしのように生地ドロボウはしないように!




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