8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.66
                                                                                                           
     カール・パーキンズ&フレンズ
〜ロカビリー・セッション・1985



 みなさん、ごはんですよ!じゃない、こんばんは!
最近、爆発的に太り気味なので、ビールを飲んでやせることに凝っている8鉄です。

 はてさて、わたくしの出っ腹の話は置いておいて、ここにひとつの貴重な映像記録があります。しかも、それだけではなくて、もう、とんでもなく、ゴキゲンなロックビデオなので、ぜひぜひ皆様に御紹介いたしましょう!

1985年、イギリスのBBCテレビの特別番組、「ブルー・スウェード・シューズ」は、最も初期のロッカー、オリジネイターのひとりである、カール・パーキンズのライブの様子を楽しむには、おそらく最高のもので、現在でも、インポートでDVDが手に入ります。(リージョンコードはアメリカ向けとなっていますが、実際は日本のDVDプレイヤーでも再生できるようです。)
また、見るだけであれば、ここにあるYOU TUBEへのリンクをご活用ください。

 さてさて、どこでどうやって入手したのか、もうすっかり相当量の髪の毛とともに、記憶の彼方なのですが、85年当時、わたくし、すぐにこれをVHSのビデオテープで入手しまして、かなりひどい画質ではありましたが、相当繰り返し繰り返し再生して狂喜乱舞に号泣を繰り返し繰り返し繰り返しておりました。(しつけー)。

そもそも、このテレビ特番のちょい前まで、パーキンズは、「知る人ぞ知る、伝説の男」であって、一般的には、とっくの昔に過去の人だったのです。

はてさて、カールなんとか、って誰だっけ?昔、一時、いたような、いなかたような・・。
なんだこの、「ライオンキング」に出てきそうな、ヅラのジジイは?

そんな声が聞こえてきそうな状況のなか、このセッションは行われたのです。



 現在は、YOU TUBEのおかげで、著作権切れになった50年代当時の映像もかなりの高画質で簡単に観ることができるようになりました。
カール・パーキンズも、「パーキンズ・ブラザース」だった、若かりし50年代当時の数少ない映像がおそらく最高にかっこいい、とわたくしも思います。(特に、テレビ番組「ランチ・パーティ」出演時の、ブルー・スウェード・シューズとマッチボックス)。50年代当時の録音で愛用した、ギブソンゴールドトップのP90搭載モデルの音もレコード通りのイメージで聴くことが出来る貴重な映像です。



 しかし、現時点で、ここまでまとまって主要なヒット曲を網羅したライブ映像を観ることができるのは、おそらく、この1985年の「ブルー・スウェード・シューズ」50分のテレビショーのみだと思います。パーキンズは、このときは、50代の大ベテランですげえ貫禄だし、しかも、ここにそろったゲストは、すべて汚いおっさんばか・・・・いや、違うな、すべて「パーキンズ信者」、「パーキンズ・チルドレン」(小沢、じゃないよ)、といっていいミュージシャンばかり、しかも、全員がスーパー・スター・クラスという豪華ぶり。

 ざっと名前だけ挙げただけでも、リンゴ・スター(ドラムズ)、エリック・クラプトン(ギター)、ジョージ・ハリスン(ギター)、ロザンヌ・キャッシュ(ヴォーカル)、リー・ロッカー(ストレイ・キャッツのスラップ・ベース)、スリム・ジム・ファントム(ストレイ・キャッツのドラムズ)、笑福亭鶴瓶(おしゃべり。いや、嘘です)。サポートには、デイブ・エドモンズ(ギター)とパーキンズの息子たち(ベース&ギター)。

 スタジオ収録前の様子や雰囲気を伝えつつ、なにげなく始まるオープニングがいい。
タラタラしてんなー、パーキンズの親父はよ〜、ヅラとれねえかなー、とか頭悪いこと思っているといきなり、マイクテストか?
「ワン・フォア・ザ・マニー・・・、トゥ・フォア・ザ・ショウ〜・・」
おや?いきなり有名なブルー・スウェード・シューズの出だし?
もしかして、全曲、ブルー・スウェード・シューズだったらどうしよう・・(なわけない。)とか頭悪いこと思う間もなく、
「スリー・フォア・ザ・レディ・ナウ・ゴウ・キャット・ゴウ・・・」
「ウエーーーーーーール!!!オール・マイ・フレンズ・ア・バッピン・ザ・ブルーズ・・・」と吠えまくるパーキンズ親父!
というわけで、オープニングは、「バッピン・ザ・ブルーズがバリバリのイケイケで始まるニクイ展開に!
ロック・ギターに一大革命を起こした、バネのように強靭な鋭利なギターソロも、バリバリに健在!!
「医者なんかいらねえだっ!ジュークボックスでロックききゃあビョーキなんか直っちまうっぺよっ!」というシンプルなメッセージが、元気ハツラツ、ファイト1発な大傑作ですね!


 それにしても、50年代のロカビリーは、なんでみんな「ウエール!」で始まんだべか?」って、本人があとでMCで言う場面もあり。(全員大爆笑)。

 すぐさま、すさまじい勢いを維持したまま、テンポがバッピン〜の倍速くらいある「プット・ユア・キャット・クロースィズ・オン(猫に服着せろ?ってどんな意味か未だにわからん。察しはつくけど)に突入。



 そして、曲が終わり、メンバー紹介をするのだけど、なぜかドラマーがどっかいっちゃっていない!行方不明だ!という展開に勝手になっている!
「ドラマーがいない!ドラムがなくちゃ、ロックでけへんやん(なぜ関西弁)?」という、クッサイ演出の後、リンゴ・スターがニタニタ笑いながら、おなじみのやる気なさげな、でたらめな感じで出てくる、と、パーキンズが「リンゴだ!おおおおお!リンゴ・スターだぜ!みんな!わーお!これでロックできるぜ、べいべえ、イエー!」みたいな、これまた大げさな振り付け!
しかし、この後、リンゴが、ずうとるび、もとへ、ビートルズ時代、カヴァーでリードヴォーカルをとったパーキンズの隠れた名曲「ハニー・ドント」へなだれ込むと、もう客席は熱狂のるつぼに突入!!もうむちゃくちゃでんがな!!



 やー、すごいな。やっぱり、パーキンズは絶倫ソウルフルアメリカン親父の鏡なのでありました。
そして、次なるゲストは、エリック・クラプトン。
これまた、ただの通りすがりのおっさんみたいに、ぶらっとスタジオに入ってくるあたりも、にくい演出。



 ちょいクラプトンが緊張気味に始まった、「マッチボックス」
ルートとフラットセヴンスを繰り返すおなじみのギターリフから始まっただけで、ワクワクする、パーキンズ最大の名作のひとつです。
 ここでは、やはりビートルズでもカヴァーしたこともあって、リンゴも唄い、オリジナルのパーキンズ、リンゴ・スター、そして、クラプトンがリードボーカルを回すという、レコードではあり得ない、すさまじく豪華な展開になっていきます。
相手をたてるのが、メチャうまいパーキンズは、「俺はダメだ、おまえさんがやんなよ!」と、どんどんリードギター部分をクラプトンにゆずるので、どんどん引きまくり、乗りまくってうれしそうなクラプトン。案外、ノセられやすいおっさんなんだなー、って素顔が見えたりもする。すさまじい盛り上がりようで、マッチボックスも幕を閉じます。



 緊張もすっかりほぐれた感じのクラプトンとパーキンズによる、「ミーン・ウーマン・ブルーズ」は、サン・レコードの同期、ジェリー・リー・ルイスの作で、ルイス本人のほかにも、やはり、サン同期のロイ・オービソンが60年代に再度ヒットさせた曲。なごやかなムードで楽しげに演奏を終えた後、クラプトンとリンゴ・スターは一時退席し、再び、パーキンズのみのステージへ。



 ここでは、一変してゆったりと、デビュー当初のカントリーソング「ターン・アラウンド」で、元来が一流のカントリー・ミュージシャンであることを再認識させる素晴らしい唄を聴かせてくれます。そして、カントリーつながりで、次のゲストをご招待。



 60年代、アルコール中毒に陥っていたパーキンズを応援、復帰を手助けしてきたサンレコードの同期であるジョニー・キャッシュの娘はん、ロザンヌ・キャッシュとデュオで、「ゴーイング・トゥ・ジャクスン」。カール・パーキンズは、彼女が子供時代、おとうさんのジョニー・キャッシュに、娘への子守唄として「ダディ・サングス・ベース」を作曲していることを考えると、ここはちょっと涙涙の再会場面なのですね。




そして、ギターに徹して、ロザンヌを前面にたてた「ホワット・カインド・オブ・ガール」で、現代的なカントリーロックサウンドでも見事な腕前を披露します。



それにしても、カントリー曲でのパーキンズは優しくふかーい低音の魅力。いぶし銀のような魅力全開で、声域と曲の解釈力の幅の広さ、深さにびっくりします。

 そして、次のゲストは、いよいよ、敬愛するパーキンズをBBCテレビに出演させた特番仕掛け人張本人のジョージ・ハリセン、もとへハリスン。
 おそらく、世界で最も有名な、パーキンズの信奉者、後継者であります。
 そして、今度はビートルズでハリスンがボーカルをとってカヴァーしたことで有名な「エブリバディ・トライン・トゥ・ビー・マイ・ベイビー(みんないい娘)」
わたくしは悪い子!
 パーキンズはあくまでバッキングに徹し、ハリスンの唄とギター(まんまパーキンズの丸コピー!)を全面的にフューチャー。
 曲が終わり、「ジョージ・ハリスン!!」と紹介するパーキンズを「カール・パーキンズ・エブリバディ!」と紹介しかえすハリスンは、「俺がここにいるのは、全部彼のおかげだよ。」といいたげで、本当にうれしそうです。





次は、かつてのパーキンズ・ブラザースでハーモニーを聴かせた「ユア・トゥルー・ラブ」をハリスンと、ギターででずっぱりのデイブ・エドモンズと3人でハモります。



 そして、ちょっとここで一休みという案配に、椅子に腰掛けるハリスンとパーキンズ。
ハリスンが、「あなたのギターは、どうやって、今のスタイルになったのですか?」と質問、「じつは、昔、レス・ポールって男がいてね・・」ってあたりから、ちょっとしたやりとりがあり、そのレス・ポールでギターインストとしても有名な、1919年の古典曲「ザ・ワールド・イズ・ウエイティング・フォー・ザ・サンライズ(「世界は日の出を待っている」)
 パーキンズがソロで弾くと、なにげなく遊んでいるかのようでありながら、そのタイミング、見事なトーンコントロールなど、どこも完璧。ハリスンの目が点、という感じが楽しいギター教室コーナー。それにしても、滅多に観ることができない、完全なパーキンズのギターソロの見事なことといったらありません。
本当の実力というのは、こういうところを観ないとわからないものです。最後に、ヤター!って感じでガハハハハハハハ!!!と、のけぞって豪快に笑うところがこのおとうさんのいいところですね!(ヅラがとれないかヒヤヒヤしますが・・・)




 続いて、ゲスト全員そろって、元祖ロックアーティストによる「ロックンロール教室」のはじまりはじまり。
 「ザッツ・オール・ライト」、「ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー」、「ナイト・トレイン・トゥ・メンフィス」、それに、教室といえば、やはり、「贈る言葉」(嘘)。



 さらに、ハリスンが大好きな「グラッド・オール・オーヴァー」(渋い趣味!)を始め、「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」と続きます。
 全員が愉快で豪快なパーキンズ先生とともに、「生きててよかった!」くらいうれしそうに楽器を弾き歌う姿はある意味、感動的。

 

そしていよいよ、ゲスト全員を巻き込んだまま、ショウは、最後のパートに入り、クライマックスに。
非常に初期のパーキンズ作品である「ゴーン・ゴーン・ゴーン」に続き、いよいよ、パーキンズの歴史的世界ヒット「ブルー・スウェード・シューズ」





 演奏を終えても、拍手は鳴りやまず、ジョージ・ハリスンの合図のもと、再び全員で「ブルー・スウェード・シューズ」をセッションして大団円を迎えるのでした。



 番組が終わった後、パーキンズは、感極まって涙を流し、「俺は、何十年も、ブルー・スウェード・シューズ」ばかりやってきたけど、こんなに楽しかったのは初めてだ。」と全員と抱きしめ合いました。(この部分も、しっかりカメラはとらえていました。)

 ここにきていたゲストたちは、全員、キング・オブ・ロックンロールはエルヴィス!というのはもちろんのこと、その裏側には、知る人ぞ知る、もうひとりのキングがいた・・ということをよーく知っているのです。その知られざるキングを迎えたゲストたちとパーキンズが過ごした至福の50分をとらえた見事なステージ。
ロック音楽の歴史上、最も重要なのに、最も無名だったミュージシャン、カール・パーキンズの本質をとらえた素晴らしい瞬間だったと思います。願わくばわたくしもTHE−KINGのナッソージャケットを羽織って会場に居たかったのであります。

すでに、この偉大な人物が12年も前に亡くなった故人だということがいまだに信じられない、そういう人がたくさんおられますが、それこそが、この人の真の力を示すなによりの証拠ではないでしょうか。




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