8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.41
                                                                                                                                                                                                      
 ディープな楽器マニアの世界


 そろそろ夏も本番。そんなさなか、ステージ本番も近くても、予習を何もしないでテストに臨む出来の悪い中学生みたいな生活しか送ることが出来ないノータリンな中年、頑固8鉄です。

 さてさて、お盆も近くなると、いろいろすることもあり、心も清らかに、先祖供養しなくてはならないし、「家内安全」、「人生平穏」と思うのが当たり前。
しかし、いつの間にか神社仏閣に行ってもなぜか、欲深く「万馬券大当たり」なんてことをつらつら思いながら行ったりする方もいて、それはちょっと違うんじゃないのか?と思わざるを得ないのですが、中には突拍子もないくらいマニアックに、「ギブソンL-5の戦前モデルがもし100万で手に入ったらなあ……」なんてことばかりボンヤリ考えていて、いつが盆暮れなのかもさっぱりわからなくなってしまったようなバチあたりものが今回のテーマです。

 最近はすっかりネット社会ですが、こうなると一番喜び庭駆け回るのが、裏庭のポチではなくて、「マニア」「オタク」のたぐいと相場が決まっています。
音楽でいえば、リスナーは録音物、プレイヤーは楽器が、一般的。

「マニアじゃねええ! 俺は世界一のヘベメタロッカアアじゃあああ! ギャウイイインン!」と叫んだってやっぱり稲妻シール付きのエレキがなきゃサマになんないってなもんですが、音楽やってる人には、やっぱり楽器は大切です。
「ヘルニアが痛む」とか「今日は暑い」とか言って、もはや楽器屋へ足を運ぶ気力もなくしつつあるわたくしのような半端者と違い、「音を生み出す道具」としての楽器をしつこいぐらい追求しまくってウン十年という強者もいるのが世の中。

 お茶の水近辺の楽器店に行ったりすると、そうした人々をよく見かけます。かなりのパーセンテージで「どっかで見た顔」だったりするので、もうたまりませんが、目が怖いので話しかけたりしたことはありません。
どの楽器でもそうですが、大体「専門分野」というのがあるようで、「ギター、マーチン関連」とか「サックス、セルマー関連」とか、あまりに詳しすぎて、もはや「学者」「研究員」といった感じの人達もいらっしゃいます。
そういった方々に、「一体そんなに詳しくなってどうするんだ?」なんて合理主義的な質問してみても、たいてい「好きだから」というミもフタもない答えが返ってくるのが常。

 かくいう僕自身、昔カミさんをもらったとき、親戚だの旧友だのから「こいつはいい奴なんだがああ、なんでもマニアックで、何を言っているかわかんねえだ」なんてことを式場でくそみそに言われた前科あり。
ついでに思い出したんですが、独身時代に、あるギターマニアな友人連れで合コンした時に「ギブソンとの対比におけるエピフォン(どちらもアメリカのギターメーカー)の歴史的変遷についての議論(仮説)」をうっかりしてしまったものですから、サアー大変! 折角泣いて都合つけてもらった女の子たちがみんな「わたしい、帰るわね〜。」と顔をひきつらせているのに気がつきもしないという前科もあり。

まあ、これも、本職でもないくせして、ところかまわずマニアな正体をむき出しにしてしまった報いですが、さすがにそのあたりは、歳を取ると、髪の毛とともに薄くなるのか、
「ま、いっか。弾ければなんでも。」とか「ま、いっか。ビール飲めればそれだけで・・」とか・・・・えー、そんなことはどうでもいいんですが、マニアックといったら、ネット!ネット見れば「楽器マニアの巣窟探索」なんて簡単だろうとあちこち首をつっこんでいると、やっぱりネットはディープです。

あるわあるわ、どんな楽器でも、楽器と名のつくところ、楽器屋さん、商業サイト以外、プレイヤーだのコレクターだのの方々が運営しているサイトは、素人には敷居の高いマニアックサイト多し。上には上がいるもので、僕なんかは足元にも及ばない方々が大活躍しています。 特にすごいのが掲示板です。

 「やっぱぁ、コールマン・ホーキンスの音は、○×△というオットーリンクのマウスピースでないと云々……」「マーチンの戦前のD-28のインレイが××製でなんたらかたら……」「アコースティックギターのサステインはメイプル材がどうしたこうした」とか、同士にとってはものすごく役に立つ専門知識が満載、反面、部外者にはまったく意味不明のやりとりが並んでいます。
でも、さすがマニアもヒトの子、ドシロートにも手取り足取り教えてくれるところが多いので、これを活用しない手はない。おかげで豆知識をうまくひろいあげて、希望の音が出せるようになり、随分楽器がウマくなったような経験もあります。

まあ、こうした人々の中でも、好きで追っかけているうちにひとつふたつじゃ飽き足らなくなり、次々といろんなサウンドを出せるものを集めだしちゃったヒトたちを「コレクター」と呼びますが、楽器は値段が高いので、「わしゃあ、不労所得だけで年収2000万じゃあ!」というような特権階級以外、「楽器コレクター」という方は、あまりいません。
まあ、本当にセレブになったりすると、「外車のクラシックカーコレクション」があったり、ヨーロッパの貴族になったりすると「世界の名絵画ホンモノコレクション」があったりするそうですが、我々がなろうと思ってなれるもんではないので、楽器集める人、っていうのは相当金持ちな方ではないかと推測する次第。

まあ、しかし、普通に生活している「チョイリッチ」くらいの方であれば、「マーチンのDサイズギターなら、全機種持っているぞ」とか「ウチのサックスは完全にレスター・ヤングと同じセッティングじゃけんねえ」というような具合のヒトが多いのではないかと推測します。

 楽器というのは音楽のための「道具」ですが、マニアックに追求するのはそれなりの知識や経験が裏打ちされていることが多く、「音痴なんだけど楽器はマニア」というヒトは見たことがありません。むしろ、こうした人々はやたらとウマいヒトが多い。
「うまくなるほどいれこんでいるからマニア」なのか「マニアだからうまくなるのか」よくわかりませんが、マニアはそれだけプロフェッショナルだということは確かで、よく考えてみなくても、知名度のある職業ミュージシャンは、いってみれば、マニアが多いんですね。

 一方で、「チャーリー・パーカーはヒトから借りたサックスばかり吹いていた」とか、「ブラインド・ブレイクは通販用の激安ギターですごいサウンドを出していた」とかミュージシャンにかかわる様々な伝説があり、これらはたいてい「弘法筆を選ばず」のパターンだと思うんですが、マニアは「パーカーが借りていたサックスはキングだ」とか「ブレイクが弾いていたような、戦前の激安ステラギターを40万円でゲットする」とかいう方向に行きますからたいしたもんです。
でも、確かにここまで思い入れ強いとさすがにしつこくやるので、やっぱりウマくなる。

こうした人々は、端から見てると、キング製サックスでなくても、ステラギターでなくても存分にウマいんですが、やっぱり他人に理解されなくても自分がとことん満足いくようにするというのがマニアの本命なんでしょうね。

 いずれにせよ、好きな音楽があって、それを自分でやってみたいと、そして少しでも近づきたいと思えばどうしてもそれにふさわしい楽器を追求したくなるのが人情。「やりたい音楽にふさわしい楽器を手に入れる」ことはとても大切なポイントのような気がします。
そして、一銭にもならなくてもそれをやるというのがマニアのマニアたるゆえんなのではないか。はっきりいって、「そんなことにいつまでも夢中になっている方々」というのは、大変に幸せで、ラッキーな人生を送っておられる方々なのではないか、などとつらつらと思う8鉄でした。

 さて、THE KINGでは楽器はご用意できませんが、楽器だけではなくて、ファッションも完璧に!と願う方にはうってつけのアイテムを多数ご用意してみなさまのご注文をお待ちしております。今後ともよろしく!





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