8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.36
                                                                                                                                                                                                           
 50年代ロックンローラーのギターたち


 どうも。頑固8鉄です。
いつになくあっけなく始まります8鉄大コーナー、今回は、これまで、私、頑固8鉄がご紹介させていただいた、歴史的アーティスト達の中で、ギタリスト達が使用した、ギターという楽器そのもの、をとりあげてみたいと思います。
「なんでギター、なんだっ!」とイチャモンや詰め寄られても困ります。単に、私がギターに多少詳しいから、でありますんで。



 カール・パーキンズ
・ギブソン レス・ポール(ゴールド・トップ)
・ギブソン ES-5(スイッチマスター)

50年代ロッカー達の中で、圧倒的な使用率の高さを誇る、ギブソン製ギター。
その中で、パーキンズがSUNレコードの最初のレコーディング時(ブルー・スエード・シューズを含む)に使用していたのが、レス・ポール(ゴールド・トップ)。
現在の目で見ると、古典的なモデルですが、当時は、まだ、発売されて間もない、最新のエレクトリック・ギターだったところに、パーキンズの心意気、とか、好みをみることが出来る気がします。
なお、当時のレス・ポールは、今日の有名なピックアップ(ダブルコイル・ハムバッカー)でなく、まだ、P−90シングルコイルだった時代。レス・ポールに限らず、50年代ギブソン製エレキ特有のシングルコイルサウンドは、ロカビリー音楽のギター・サウンドを特徴付けていました。
もう1つのメインギターは、ES−5(スイッチマスター)で、こちらは、当時主流だった、フルアコ(ピックアップのついたピック・ギター)の中では、3ピックアップ(50年代モデルはP−90)仕様のモデル。
はじめからピックアップを搭載し、エレキとしてのみ使用することを前提に組み上げられた合板で出来たモデルであり、単板削りだしのアコースティックモデルにピックアップを載せたL−5CESやスーパー400CESといった最高級ラインとは異なる、ES(エレクトリック・スパニッシュ)シリーズのモデルですが、その中では最高位機種でありました。
パーキンズは、後年、他にもたくさんのギターを愛用しましたが、50年代といえば、この2本が代表格といっていいでしょう。
多くのエレキ・ギタリストが、ギター本体側のトーンをあまりいじらなかった当時、パーキンズは頻繁にトーンセッティングを変えて、音色をいじるのが好きだったのだそうです。そんなパーキンズにとって、ギブソンES−5は、うってつけだったのではないでしょうか。

 ビル・ヘイリー
・ギブソン L−7C
・ギブソン スーパー400CN

この人は、自分の唄の伴奏楽器としてギターを使用するリズム・ギタリストだったためか、歌手、であって、あまり「ギタリスト」という印象がありませんが、専属のリードギタリストがいなかった当初のコメッツのライブでは、自分でギターソロを弾きこなしていたと言われており、立派なギタリストでありました。
彼が使用していたのは、エレクトリックではなく、アコースティックのカーヴド・トップ(ピック・ギター)で、50年代当初のころの写真を見ると、それがギブソンのミドルクラスモデル、L−7C(Cはカッタウェイモデル)のブラック仕上げだったことがわかります。これに、デュアルモンド製のデタッチャブルPUをつけて、音量増幅することで、大音量の演奏だったと言われるコメッツのアンサンブルに食い込んでいました。レコーディングではなく、生音で録音された当時のライブ・フィルムなどを観ると、ヘイリー本人のリズム・ギターが相当、ガチャガチャと大きな音で鳴っており、バンド全体を引っ張っていくリズムの中心にいたことがわかります。
ロック・アラウンド・ザ・クロックの大ヒットで一躍世界的な有名人になってからは、ギブソンのスーパー400CN(Nはナチュラル・フィニッシュ)を使用していますが、これは、当時、最も高価だったアコースティック・ギターであり、とりわけ、カントリー&ウエスタンの歌手が成功するとたいてい持ちたがる、出世の証、みたいなギターでもあったからでしょう。



 エディー・コクラン
・グレッチ ナッシュヴィル・ウエスタン(6120)

50年代ロック、ロカビリー、というと、とりわけ有名なのが「グレッチ6120」です。
一般的なフルアコに比べると、少しボディの厚みが薄いのですが、シンラインモデルでもセミアコでもなく、内部にセンターブロックもない、完全なフルアコ・モデルです。
80年代のバンドであったストレイ・キャッツのブライアン・セッツアーが50年代のオールド・グレッチを愛用して、現在はロカビリーギターの代名詞のように有名になりましたが、50年代当時は、ギブソンに比べると、マイナーな存在のギターで、これを愛用していたヒットアーティストは、セッツアーのアイドル、エディー・コクラン、くらいかもしれません。
もっとも、別名チェット・アトキンズ・モデル、とも言われるとおり、アーティストシグネイチャーギターだったため、カントリー&ウエスタンのジャンルでは、アトキンズ人気に伴って有名だったギターではあります。
50年代らしいグレッチ・サウンド(特にチェット・アトキンズのサウンド)の最大の特徴は、明るい音色のデュアルモンド製ピックアップにあります。(57年頃まで)。58年以降のものは、グレッチオリジナルの、これまた有名な「フィルター・トロン・ピックアップ」なのですが、こちらの音色のほうは、アンプとのセッティングで、まさに「セッツアー・サウンド」を生むことが出来、レプリカがどちらも入手可能な現在、どちらを選ぶかでそのサウンドが大きく異なるので、そこは、お好み次第、といっていいでしょう。
ちなみに、コクラン本人は、フィルタートロン搭載モデルのフロントPUのみをP−90に交換したオリジナルなセッティングのものを使っていました。フィルタートロンはギブソンのハムバッカーなどに比べると出力が弱いピックアップだったため、PAシステムそのものが未発達だった当時は、こうする人が結構いたようです。いずれのセッティングであるにせよ、低音のブチブチいう感じとか、いわゆる「トワンギー」なサウンドを出すには、これしかない!という個性的なギターではあります。



 ロイ・オービソン
・ ギブソン ES-335

オービソンは、歌手としての名声が大きすぎて、ギタリストとしての側面がかすんでしまいますが、50年代のティーン・キングス当時は、かなり斬新なロカビリー・ギターを弾いてもいました。(ロック・ハウス、など)。
グレッチ、ギルド、ギブソン系のフルアコやセミアコが好きだったようですが、最も印象に残るのは、ギブソンのセミアコ、ES-335あたりではないでしょうか。
ちなみに50年代のサン録音には、ソロの弾き語り(たぶん、デモ録音)も残されています。当時のカントリー・ミュージシャンに憧れて音楽界入りした人の例にもれず、生涯ギターを愛した人でもありました。



 リンク・レイ
・ ダンエレクトロ ギターリン

ここに取り上げた中では、レス・ポールと並ぶ「アンサング・ヒーロー」であり、本業専門ギタリスト、リンク・レイ。
彼が愛用したギターも数々あれど、なんといっても有名なのが、ダンエレクトロ、でしょう。
ダンエレクトロは、ギブソンやグレッチといった「一流メーカー」とは異なり、50年代当時、少年漫画雑誌の裏表紙に出ている通信販売専用、みたいなノリのチープなギターを作っていたメーカーです。レイの使用モデルは、特別な仕様のものでもなんでもなく、ごく普通の通販用チーピー。ただし、その作りは、安さが売り、だけでなく、一般的なギターとは相当異なる個性的なものでした。とりわけ、ギターリン(マンドリンの音域も出る!ということから名付けられた)は、見た目のインパクトもすごいですが、実際にとんでもない音域を誇る風変わりなシロモノ。他のモデルでもそうですが、ダンエレクトロは、メゾナイト、という木材チップを固めたような正体不明の材で出来ており、ネックはボルトオン(当時はコストパフォーマンスの点からフェンダーが考案)、ピックアップケースは口紅のケースの不良在庫の再利用という、今考えると大変なエコ設計(?)。そのため、細かなところで、風変わりな音色を生む要素がたくさんあり、それが当時の稀代の奇人ギタリストだったレイの先進的な感性を刺激したのかもしれません。そして、結果的に、レイはこのダンエレクトロで、10年後に有名になる「ハードロック・ギターサウンド」を生み出すのです。
こうしたチープな楽器はどんどん消えていってしまうものですが、レイをヒーローにしていた後のハードロックギタリスト達(ジミー・ペイジなど)が後に使用したこともあり、また、実際に壊れにくい立派な品質を持っていたために、ダンエレクトロは今日では、ロックンロールギターの伝説的存在のひとつとして現在も現役で生産、愛用されています。



 ボ・ディドリー
・ グレッチ ボ・ディドリー

この中では、最も特殊なのがこの人。というのも、この人の一番有名なギターは、この人のオリジナルデザインで、しかも、ギブソン・レス・ポール・モデルのように、誰もが知っている一般的なモデルというわけでもないからです。
長方形をした、全く独特の「ボ・ディドリー・モデル」は、もともと、ディドリーがグレッチに作らせていた特注品でしたが、現在は、グレッチが制作販売する、れっきとした正規市販モデルになっています。(あまり他の人が弾いているのを見たことがありませんが。)
市販品は、機能的には、ごく一般的なソリッドボディエレキですが、ディドリー自身が使用したものは内蔵エフェクタなどを組み込むなどオリジナルなアイデア満載のものだったようです。



 バディ・ホリー
・ フェンダー ストラトキャスター

今日、エレキ、といえばストラト、というくらい一般的かつポピュラーなフェンダーの古典的名作、ストラトキャスター。実は、初めて、これを世界に広めるのに大きな役割を果たしたのがバディ・ホリーだと言われています。
というのも、ストラトを抱えてテレビに出演した最初の人気歌手がホリーだからです。
ギターそのものは、今更、改めて説明するまでもない有名モデルで、世界中どこの楽器店に行っても、必ず置いてある。ホンモノのフェンダーとは限らなくても、無数のコピーモデルが存在します。たいへんに軽く、持ちやすく、簡便で比較的安価で、アクの強い癖がなく、いいことづくめのフェンダー、ストラトキャスター。あえていえば、フェンダーのピックアップは非常に出力レベルが低いシングルコイルだという点に個性があり、ノイズが少なく、しかも、多様な音色を創り出すことが出来ます。ただし、その分、ギブソン系(P−90系)のような、いかにもロック、という、ぶっとい音の個性一発勝負には欠けるかもしれませんが、その当たりも、なんとなく、バディ・ホリーっぽい気がします。



 レス・ポール
・ ギブソン レス・ポール

レス・ポール。これが発明者であるギタリストの名前だと知っている方のほうが少ない、というのが現実、というくらい、有名なギターです。
詳しくは、わたくしのコラムの「レス・ポール」を読んで頂くとして、ちょっと補足しますと、レス・ポールは、市販されている種類よりたくさんのヴァージョンが存在するため、とてもフォローは仕切れませんが、最も初期のゴールドトップを中心とした「P−90(シングルコイル)搭載モデル」と59年からの「ハムバッカー(ダブルコイル)搭載モデル」では、音色が大幅に違います。
50年代音楽が好きな方は、P−90搭載モデルのほうがお勧めですので、参考までに。



 リック・ネルソン
・ ギブソン SJ−200

リック・ネルソンもリッケンバッカーをはじめ、様々なギターを愛用しましたが、よく見かける写真が、ギブソンSJ―200を抱えたもの。
これは、ギブソンアコースティックギターのうち、フラットトップの最高峰、と言われるゴージャスモデルで、50年代当時は特に、カントリー&ウエスタンのミュージシャンなら一度は手にしたいと憧れるギターでした。
同じモデルで仕上げがブラックの地味なものがSJ―100で、エヴァリー・ブラザースに愛用されたことから別名「エヴァリー・ブラザース・モデル」と言われるものも存在します。どちらも、パンチの効いたコードストロークサウンドに最大の特徴があり、古典的なカントリー・サウンドにも激しいロカビリー・サウンドにもぴったりなモデルで、エルヴィスも愛用しました。



 マール・トラヴィス
・ビグスビー トラヴィス・モデル
・ ギブソン スーパー400CES

ロックンロールの世界から一歩離れますが、マール・トラヴィスの使用した最も有名なギターは、たぶん、特注のトラヴィス・モデルで、ひとつは、アコースティック。これは、マーティンのボディにビグスビー製のネックをマウントしたものでした。もう、ひとつは今日、トレモロアームで有名なビグスビー社が制作した、トラヴィスがデザインしたエレキ。こちらのほうは、フェンダー・ブロードキャスター(テレキャスターの前身)のアイデアの基となり、ソリッドボディ・エレクトリック・ギターの元祖のひとつとなりました。(もうひとつは、レス・ポール。)
また、後年のトラヴィスがよく弾いていたのは、ギブソン・スーパー400CESで、市販品では、世界一高価なエレキ。さらに、それの特注トラヴィス・スペシャルですから、これはもう、エレクトリック・ギターの王様、と言っていいでしょう。まあ、トラヴィスという人本人が、ギタリストの王様、みたいな人なので、これくらいのものを持っていて当然といえば当然ですね。



 レオン・レッドボーン
・ギブソン CE-100

フォーク・ミュージックの世界に行くと、そこはまさにアコースティック・ギターの世界、なわけですが、レオン・レッドボーンが愛用するのは、ギブソンが50年代に出した、ある意味「珍品」と言っていい、CE-100。これは、構造的には、多くのブルーズマンに愛用された、戦前のL-00などの小柄なギブソン・アコースティック・ギターの流れを汲む、戦後のLGシリーズ(LG-2)のカッタウエイ・ヴァージョン。
もちろん、戦前アメリカ音楽の玉手箱といっていいレッドボーンのこと、たくさんの戦前ギターも使用していますが、ライブ、ツアーとなるとこれが手放せないようです。比較的、廉価で、ラフで軽く、しかも、どんな弾き方にも適応する、取り回しの良いギターなので、当然、という気もします。





 チャック・ベリー
・ ギブソン ES-355

さて、ロック史上、最も偉大なギタリストのひとり、と言われるベリーが愛用したのは、あまりにも有名な、ギブソンのES-355。ES-335のデラックス版、といわれる、セミアコの名作です。
この人も、デビュー当初は、ES-125、レス・ポールなど、様々なモデルを使っていましたが、やがて、このチェリーレッドのES-355がすっかりトレードマークになりました。
B・B・キングのルシール(ES-335)と並んで、リズム&ブルーズで使用されるギターの代名詞のようになったのも、ベリーの功績、というものでしょう。



 と、まあ、ここまで書いて思うことなのですが、超有名人、歴史的大人物、とはいえども、人の子。
ギターも、どんなにすごい技術の結晶、名品であっても、やはり、音楽のシンボルのひとつ。やはり、どんな大音楽家も、基本は「憧れのミュージシャンみたいになりたい。」一心でギターを手にし、そのギターが、また、その人の音楽的個性をも作っていったのだなあ、ということです。この点は、ギター、楽器全般に限りません。洋服もしかり。

 さぁーこの春もまた、50年代ファッションのギブソンとでもいうべき、THE KINGのアイテムで盛り上がりましょう!今回のシューズもまたまた名器ですぞ !

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