8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.145


三角頭オヤジと頻尿オヤジのサン・アントニオ珍道中 その1



皆さん、ブエノスタルデス!サンチャゴです!今回は8ではありません。
私は、北米に行ったことがなかったのですが、このたび、縁あって、昔から好きだったテックスメックス音楽のフェスティバルへ行くべく、いきなり、テキサスへ行ってきたので、道中記など面白がっていただければ、と思います。
テックスメックスがなにか、知らなくても、テキサスは十分、すげえところですから、なにか参考になるかも・・・ね?
(左から)オノリオ・イマムラ、サンチャゴ・タムラ(8鉄)、小山亜紀
5月14日(第一日目)
大阪からやってきたオノリオ・イマムラ氏、埼玉からやってきた小山亜紀と私の地元近くの成田で合流。成田からダラス・フォートワース空港へ向かい、無事到着。あまりの広さに唖然とする。
乗り換えて、サン・アントニオへ。ここは、全米、第7位の大都市である・・・が、しかし、空港周辺はなーんにもなさそうに見える。日本と同じ気候帯に属している上に、テキサスの最南端に近い位置なので、ちょうど沖縄と同じような気候である。要するに、じっとり暑い。
まずは、レンタカー。すべての間違いはここからスタートした。
「4人乗り、4ドア、荷物がたくさん積める車」という注文で、すでに日産を手配しておいたのに、「そんなん知らん。これでええじゃろ?」みたいなノリのコロコロ太った白人女性がなぜか、アメリカン・マッスル・カーの代表みたいな「フォード・マスタング」5000CC、V8エンジン、コンバーチブルを勧めてくるので、これでいいや、みたいな感じで、いきなりフリーウエイへ。
 
運転手は私なのだが、初めての海外運転体験である。片側5車線のバカみたいに広い道路だが、慣れてないので、一気に5車線つっきったり、左右逆なのにうっかり左折で間違って正面衝突したりしそうになりながら、モーテル「レッド・ルーフ・イン」へ到着。ちなみに、テキサスはフリーウエイは制限速度が120キロ、普通道路が80キロである。歩行者がいない。完全車社会、で、歩いている人はほとんど見かけないし、歩道もない。バカみたいに加速がいいマッスル・カーがなぜ必要なのかがなんとなくわかる気がした。(日本では神かけて誓うが、必要ない!)
レッド・ルーフ・インはなかなか綺麗で現代的ないいモーテルで、スリラー映画「サイコ」に出てくる「ベイツモーテル」とはえらい違いだが、浴槽の栓がないとか、金庫が壊れているとか、直しにきたおっさんがいちいち、「おおおお!!のおおお!!うわおおお!!いええああ!!」とかうるさいとか、やけに慌ただしい切り出しである。クソ暑いし!!

宿泊先が、なんにもないアップタウンにあるモーテル、というあたりから、もうすでに普通の観光客ではあり得ない展開である。(普通は中心街であるダウンタウンの巨大高級ホテルに泊まって、ディズニーランドみたいなリバーウォークを歩き回るだけ。)
その後、アツコさんと合流。アツコさんは普通の日本人に見えるがそうではない。テックスメックス音楽ファンが知らないとモグリ、と言われる伝説的プロデューサ−兼デル・ブラボー・レコード・ショップ・オーナーのサロメ・グティエレス氏の義理の娘さんである。どんな伝説的なミュージシャンもここからデビューしている。話をすると「大阪のおばちゃんしゃべり」なのだが、何十年もサン・アントニオで暮らしており、グラミーを6回受賞、最近は、最高賞であるライフタイム・アチーブメントも受賞した世界的なスターであるフラーコ・ヒネメスはじめとしたテックスメックス・ミュージシャンがみーんな友達である。ちなみに蛇足だが、彼女はうちのかみさんと同じ歳だ。
そもそも、今回の旅行を企画し、私と小山(わたしのやっているバンド、ロス・ペリキートスの相方)を連れて行ってくれた張本人オノリオ・イマムラ氏は大阪のバンド「コンフントJ」を率いて、長年ここサン・アントニオでも活躍を続けている有名ミュージシャンである。
さて、アツコさんの運転で、マスタングは一路、地元の有名シアター、グアダルーペ・シアターへ。といっても、こじんまりした映画館だが。周囲も閑散としている。
世界中にアメリカのルーツ音楽(ジャズ、テックスメックス、ケイジャン、ザディコ、ブルース、ブルーグラス)を紹介した草分け、アーフリー・レコードのオーナー、クリス・ストラクウィッツ本人を招いて、アーフリー・レコード50周年記念の新作ドキュメンタリー映画上映会があったのだ。映画にフューチャーされているサン・アントニオの有名ミュージシャン、サンチャゴ・ヒネメス・JR(フラーコの弟)、健康上の問題で出席できなかったフラーコの代理で壇上にあがったフレッド・オヘダ(もっとも古くからのフラーコのボーカルの相方)などが出席。オノリオ氏がすでに友達なので、紹介してもらい、一緒に写真をとったりした。主催者のホアン・テハーダ氏にもお会い出来た。
(サンチャゴ・ヒメネス・JRと)
(フレッド・オヘダと)
それにしても、よく考えてみると、すごい。クリス・ストラクウィッツは、日本の「アメリカ音楽ファン」にとっても、最初にルーツ系音楽を紹介してくれた、いわば「恩人」である。ご本人が来ている、というだけでそれはすごいことである。もちろん、DVDも買った。サンチャゴ・ヒメネスJRとテキーラで乾杯もした。
あっという間に夜半過ぎ、帰るが、せっかくのコンバーチブルなので、オープンにしようとするも、やり方がわからず、4人がよってたかってまるで缶詰を開けようとしているチンパンジーみたいに大騒ぎしつつ、無事、オープンカーでモーテルへ。途中、スーパーでビールと水など買いに寄るが、テキサスのスーパーマーケットの巨大さはすごい。ついでに、おいてあるもののパックもでかい。水なんか35本パックとかである。

モーテルでオノリオ氏がアツコさんから受け取った修理上がりのバホ(バホ・キント。メキシコ系独特のバス・ギター。テックスメックスでは必須の楽器)を弾き出したので、わたしが自宅から持参したアコーディオンを弾き、交代交代でジャムセッションをしているうちに真夜中に。女性ふたりが呆れだしたので、寝る。
5月15日(第二日目)

朝、起きると雷鳴がとどろき、大雨。こちらでは結構珍しいことらしい。地元の人たちが行く、小さなダイナーで激安タコス(3ドル)を食べにマスタングを走らせるが、まるで水陸両用車である。テキサスは道がいい加減である。でこぼこで排水も悪いので、あちこちがプールのようになっている。タコスは激しくうまい。というより、これが本物だとすると、日本で供されるタコスはタコスじゃない。まるでキャベツサンドだ。
気がつくと、もう雨はあがっていて、からんと晴れている。続いて、世界的に有名なウエスタン・ウエア・ショップのシェルパーズへ。

オノリオ氏が、おかしなことを言う。
「ええのお、サンチャゴさんは。わし、カウボーイハットがかぶれへんの。」
「なんで??」
「横にするとかぶれる。前後がカッパカパやから。早野凡平かー、いうてね。わし、頭が三角でんねん。」
現地でも有名な人気ミュージシャン、ドン・オノリオ・イマムラは実は、三角頭カマキリ星人だったのだ!
ついで、アツコさんと合流。テックスメックス音楽では、知らぬ人のいない、ジェニーズ・レコード・ショップ(最古の老舗で、レコードを通じて最初にこの音楽を広めた功労者であるジェニーさんが経営。まだ現役!)へ。楽器を持参していったので、ここでいきなり演奏をしたりする。そこで偶然オノリオ氏の友人とばったり出くわす。といっても、日本でも有名な今は亡きテックスメックス・アコーディオンのスター、スティーブ・ジョーダン(エステバン・ホルダン)の弟さんで、オリジナル・ジョーダン・ブラザースのドラマー兼名歌手だったボニファシオ・ジョーダン氏。ごつい見かけと違い、素晴らしく人柄の温かいスマートな紳士であった。74歳とは思えないほど若い。後刻、スティーブの息子のバンドで客演するのだという。では、あとで、ということでレコード・ショップを後にする。
photo 9(左からサンチャゴ・タムラ、オノリオ・イマムラ、ボニファシオ・ジョーダン、ジェニーさん)
ダウンタウン方面に向かう。いわゆる中心街、外国人観光客は普通ここにしか来ない。しかし、ダウンタウンは狭い。ちょっとはずれると、がらんがらんである。そこで、有名メキシコ料理店でランチ。ちと高いがうまい。
このあたりまでは、普通の観光に近いのだが、次がいきなり、テキサス・ミュージシャンオンリーの世界へ。向かったのは、マシアス工房である。マシアス、というのは、「バホのストラディバリ」と言われている、世界最高の職人ジョージ・マシアス氏が完全手工芸品バホを製作する工房。ここのバホを2本(しかもビンテージ)を2本持っている三角頭オヤジが弦を買うために行ったのだが、わたしは悲喜こもごもである。行ったら絶対に欲しくなる→最低で33万円する→金がない ということになるからである。弦も1つ1つ手作りしているので、ここで弦が出来あがるまでの間、バホとアコーディオンを借りて、昨夜深夜のジャムの続きなどする。





来年は買いに来るぞ!と後ろ髪を引かれる思いで、工房を後にする。つぎは、三角星人の計らいで、今は亡き、テックスメックスコンフントの巨匠「バレリオ・ロンゴリアの墓参りへ。ロス・ペリキートスの持ち曲である、バレリオさんの歌を3人で演奏する。(帰国後、ネット(FB)にアップしたところ、13000ヒット!!いいね!が800もついた!)
それにしても、墓地が広い。代々木公園くらいあるのではないか。うっかりすると迷子になりそうである。


それにしても、どこに行っても「トイレどこ?」と尋ねる私。どこにいって小便がしたくなる。犬か、俺は。「頻尿オヤジやなー」とあきれる三角オヤジ。
でもって、とうとう、今回の弾丸ツアーの目的である「テハーノ・コンフント・フェスティバル・イン・サンアントニオ」の会場へ。ここから突然、ものすごい勢いで超ハードな展開になだれ込むのである。(続く)


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